おまけ 伊世早美優の秘密②

ゴールデンウィークが始まる一週間前。



昼休み。



「美優~!」

青い髪をゆさゆさとさせながら仕田原さんが抱きついてくる。





「ふふ。いつもお元気ですね。」


「いやー、今日、桜、休みでしょ?」

ドラマの撮影とかで...。



「そうですね。」

「で、メガネ君も休みでしょ?

もー、いじる人がいなくて、元気有り余ってる~!」

メガネ君、この前、風邪引いて一週間も休んでたのに、今度は家の用事で休みとか、4月からついて無いよね~。





そんな事を話ながら、私達は食堂へ向かう。





「そーいえば!

メガネ君の誕生日、いつか知ってる?

5月7日何だって!」


いきなり、そんな話題になった。

一体、どこから聞いたのだろう。






5月7日と言えば、鳩谷さんも誕生日がその辺りだった気がする。






「ゴールデンウィーク中にメガネ君の誕生日会しない?」

サプライズでさ!




「いいかもしれません。」

人の誕生日をお祝いする。

高校生っぽいです。




糸谷くんは何故か分からないけれど、仕田原さんのお気に入りです。

よく、彼女がちょっかいを出しては、嫌がる彼を見て、笑っています。





この前のレクリエーションで仲良くなったのでしょうか。

井勢谷さんも、糸谷くんに、だ、抱きついていましたし...。

彼に惹かれる何かがあるのかも知れません。




ただ、私は少し、彼が苦手です。

距離を感じてしまいます。




青山くんたちと彼が話しているのを見ても、どこか一歩引いたような...、気がつけばどこかに行ってしまうような...そんな感じがします。




でも、高校生、初めて仲良くしてもらっているメンバーです。

好き嫌いは良くありません。

私も、糸谷くんを受け入れなくてはならないのです。





仲良く、仲良くですね。




仕田原さんは、昼食を取りながら、彼のサプライズの話で盛り上がります。





「青山くんとか、佐々木くんとか声をかけたいね!」



「はい!」


「で!

各自、プレゼントを用意するってどうかな?」







夜、私は考えます。

男の人のプレゼントは何が良いのでしょうか。





昔からお世話になっている、使用人の老川さんに聞いてみましたが、年配と言うこともあり、あまり参考になりませんでした。






うーん。





私は、ペラペラとノートをめくりながら悩む。







あ!

明日は、土曜日。

鳩谷さんがこのお屋敷におられる日。

聞いてみたらいいじゃない。





私は、鳩谷さんリストを見つめ、つい微笑みを浮かべてしまった。







次の日。

私は、お父様の書斎へ向かった。

鳩谷さんは、平日はお父様の会社の社長室の方で勤務しているらしく、土日だけ、私達のお屋敷に来てくださる。






コンコンコン

「はい。」


鳩谷さんの声がした。

どこかいつもより、声が低めで、なげやりに感じた。





もしかして、お邪魔だったかもしれない。

急を要することでも無いのだから、後に...。

いえ、鳩谷さんはいつもお忙しいのです。

いつでも、お邪魔虫に変わりはありません。



色んな私が好き勝手に喋ってくれる。



私は、中を窺いながら、そっと扉を開けた。






そこには、飲み終わったティーカップを片付ける彼の姿があった。





私に気づくと振り返り、驚いた顔をした。




「お嬢様?いかがなさいましたか?」

お父様は外出されているらしい。

彼1人だ。




今日は、燕尾服ではなく、スーツ姿。

つい、見とれてしまい、言葉を発するのを忘れてしまった。





「お嬢様?」




「えっと、あの...。

クラスメイトの誕生日プレゼントを用意したいのですが...、何が良いのか分からなくて...。」

出来れば、鳩谷さんとデートのついでにプレゼントを選びに行きたい...。






本当は、こう言いたかった。

だが、私にそんな度胸は無く...。





「さ、参考に、鳩谷さんの意見を伺いに...。」





昨日の威勢はどこに隠れてしまったのだろう。

私は、悲しくなりながら、単発の話題を鳩谷さんに振った。






ただ、やはり、鳩谷さんだ。

私のやりたい事に気がついてくれた。






「では、私と買い物へ行きませんか?」






ふふ。

私は、心踊りながら階段を下りる。







雪ちゃん!

ねねしまやりました!

ついに鳩谷さんとデートです。

まぁ、表向きは糸谷くんのプレゼント選びですが...。




何を着ていきましょう...。







私は部屋に戻るとすぐ、リストに並ぶ一文にチェックを入れた。



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