第58話 夢か?!現実か?!②

窓から見える景色は、人工灯。

外はすっかり暗くなっていた。




「はぁ。夢か。マジ、嫌な夢を見た ...。」

「あっそう。夢ですんで良かったじゃない。私なんか、現実で、嫌な役目を押し付けられているのだけど?」



俺に冷酷な視線を投げてくる、鳴神美琴がいた。



「そうだ。お前、何でここに居るんだ?」

俺は、彼女の気持ちをスルーして尋ねた。




「誰かが、高熱でぶっ倒れたからに決まってるでしょ。」

もっと、睨んでくる。



そうなの?



はぁ。

彼女は、大きなため息をつきながら、読みかけの本を閉じた。






「あなたねー!あんなに熱があるなら、モデルの仕事なんて、普通、休むのよ!」


いや、だって...。

せっかく、可愛い妹と、スキンシップを計れる、貴重な時間なんだぞ?





「しかも、風邪引いた原因が、レク中、川に落ちたせい?

カッコ悪いにも程があるわ。」



でも、兄として、妹を守るって響きが良いじゃん?




「はぁ。そのどや顔、呆れる。キモい。シスコンバカ。」


彼女のディスりは鳴り止まない。





「あと、将来的に、モデル業から足を洗うつもりなら、ドタキャンして、皆からの信頼を下げれば良かったのよ。

それなのに、無駄に格好つけて、倒れるまで仕事?

何それ。

頑張り屋って、好感度バク上がりじゃない。



しかも、矢々葉絃千の緊急連絡先として、事務所に私の電話番号登録したのは誰?

お陰で、せっかくのオフが台無し。

大体、分かってるの?

正体を隠したいからって、言われて、私達がどれだけ裏で手を回しているか。」




はい...。すみません。



「最近の行動。モデルといい、テレビといい...。

あなたが自分の素性を本当に隠したいと思っているのか、疑いたいわ。」




仕方無いだろ。

頼まれて、断るってのは、俺の生き方に反するし...。




「生き方に反する?

じゃぁ、今すぐ、自分の事を、世界中に公表でもしてきなさいよ。

もう、命を狙われても、助けないから。」



えー。それは困る。




「だから、あの時、黙って、あの場を離れていれば良かったのよ。

変に格好つけるから...。」





「おーい。

飲み物、買ってきたぞ?」


そんな彼女の説教の最中、扉が開き、優が入ってきた。




「お?大将。」

ほい。

と、スポーツドリンクを渡してくれた。


「サンキュー。」

「こうして、3日、あなたの看病をした私には、何のお礼も無いのに、ただのコンビニの飲み物には、お礼が言えるのね。」




「...。あ、ありがとうございます。

こんな俺に手厚いサポート。大変、恐縮です。」






ご立腹だ。

俺は、慌てて、ベッドから下り、床に正座で、新しく下げる。





「キモい。」

な、なんだよー。

感謝を示せって、言っただろ~!






「ぶははは。

大将、マジでおもろい。」



優は、腹を抱えて笑っている。

人の気も知らないで...。





「そーいえば、桜たちは?スタッフさんとか...。あれからどうなったんだ?俺、病院行った感じ?」



俺は、早く話題を換えようと、ふと疑問に思った事を口にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る