第50話 新入生レクリエーション3日目 危機②
「さくらーーーーーー!!!」
俺は、川に投げ出される桜の体を、自分の体の遠心力に任せるかのように、放り投げた。
バッシャン!!!
水しぶきが飛ぶ。
冷たい。
でも、ああ。
良かった。
振り向くと、地面にペタンと尻餅をつい驚いていた。
井勢谷桜は無事だった。
「糸谷くん!!」
「メガネくん!!!」
「糸谷さん!!」
彼女たちが、川に落ちて水浸しの俺にかけよってくる。
慌ててる顔、こんな時に不謹慎か?と思うが、可愛かった。
「糸谷くん。
ごめん、助けてくれたんだよね。
ごめん、本当にありがとう。」
井勢谷桜は、ごめんとありがとうをごちゃ混ぜにしながらペコペコしている。
「くしゅ。」
「うわー。結構、派手に濡れちゃったね。」
「別に、これくらい平気だ。
もうすぐ、ゲームも終わる。さっさと、宿に戻るよ。」
「でも、そこまで行くのに、風邪引くからー。」
ふわり。
俺の冷えきった体に、何かがかぶさる。
「これ、汗ついてるかもしれないけど、羽織ってて。濡れたのは、脱いだ方がいい。」
仕田原理子は、自分のジャージの上着を脱ぐと、俺にかけた。
彼女の匂いがする。
顔の近くで広がる、甘い柔軟剤の香りだ。
「わ、私も!」
「私も御貸ししますわ。」
井勢谷桜も伊世早美優も、仕田原理子にならって、上着を貸してくれた。
「でも、.............。3人が寒いじゃないか。」
俺は、三重になった服に顔をうずめながら、言った。
「大丈夫。
女子は、男子より、貯えられてるんだぞ!!」
たぶん、女子の方が、脂肪を蓄えやすいと言う話だろう。
でも、3人とも、細身だ。
まだ、半袖は寒い。
「気持ちだけでいい。サンキューな。」
俺は、そう言いながら、彼女たちに上着を返した。
あの後、ちょうど戻ってきた青山智明たちによって、井勢谷桜は、足を引っかけられたということが分かり、近くにいた他クラスの男子を問い詰めたところ、自白した。
やはり、c組が優勝しそうで、ムカついたから。という、何とも、傍迷惑な理由からだった。
そんなことで、妹たちを巻き込まないでもらいたい。
井勢谷桜の足をひっっかけた他のクラスの奴らは、先生にこっぴどくしかられていた。
しかし、学園祭のクラス費をかけた、新入生レクリエーションは、俺達、c組の総合優勝で、幕を閉じたのだった。
俺的には、色々あったレクリエーションだったが、最後に、彼女の香りエキスを分けてもらえたからよしとしよう。
そして、俺達は、何とも言えない面持ちで、帰路につくのであった。
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