第39話 中央委員会


「では、各自、放課後の専門委員会に出席してください。」

「メガネくんは、私と一緒に、中央委員会行こう!」


それで、委員会決めは、お開きとなった。



学級委員、この立場は、学級長と副に分かれはするが、やること、目立つ度合いでいったら、どちらも同じである。

何かをクラス単位で決めることがあれば、前に出て、皆の意見をまとめる。

先生からの頼み事率もぐんと上がる。


そして、何より、中央委員会だ。



保健委員や、図書委員などの各専門委員会は、生徒会という大きなくくりの中にある。

そして、生徒会のくくりの中にはもう一つ、中央委員(学級委員)がある。



中央委員には、生徒会長など、生徒会役員が出席する会議に出席する義務がある。

つまり、生徒のトップ集団と机を並べるのだ。


うまく、まとまらないが、つまり、ヤバイ。

とにかく、ヤバい。





各クラスの学級委員が集まるので、結構な人数にはなる。

この学校は、Aからcの3クラス。3学年が集まるから、学級委員だけでも、18人。

それプラス、生徒会役員。

ざっと、20人くらいだ。




それらが、集まり、年間行事予定を見直したり、より良い学生生活を送るために、話し合いをしていく。



また、生徒会のメンバーに気に入られれば、来年は、生徒会長っていうのも夢じゃない。

だから、内申点を密かに狙う奴らの餌さ場になっている。





.............。

大丈夫だ。

その、食欲旺盛な奴らの影に隠れて、委員会は乗り越えよう。




あの人のせいで、一度引き受けた仕事は、放り出せない。という、何とも、良心的な性格に育ってしまう。



はぁ。







俺は、また、ため息をついて、仕田原理子の後を歩く。

中央委員会に出席するためだ。




「もう、諦めようよ。

いいじゃん。生徒会長と仲良くなれたりするんだよ!」

青い髪をゆらゆらさせながら、こちらを振り向く。




「.............。」

そう言う人に、近付くだけで、俺の生命力は失われるのだが?


こういうことなら、もっと、無難な委員会に先に入れば良かった。


またしても、後悔先に立たず。





「そんなに、下ばかり向いているから、自信が無くなるんだよ。」

ほら、上、上、まっすぐ顔上げて。



仕田原理子が、俺の顎を普通にさわる。



「っつ.............。」


「さては、女子に触られ慣れてないな?」

おりゃ、おりゃ。

彼女は、俺の顔に触れまくる。



彼女の襟元から、甘い香りが漂う。



「や、やめろよ。」


俺は、彼女から、一歩下がる。


「おー、やっと、私と話す気になってくれた?」

ニヤニヤと、笑う。


「別に、お前と話す必要は無い。」


「ふーん。じゃ、メガネくん、私のこと、好き?」


「は?出会って、間もないのに、そんなこと分かるわけ無いだろ。」

突然、何を言い出すんだ。



「じゃ、嫌い?」


「好きでも、嫌いでもない。」




「じゃ、メガネくんは、好きな人いる?」


一瞬、美優や桜の顔が浮かんだが、あくまでも、あいつらは、妹だ。

「いない。」





「そっか。でも、私は、好きな人、いるよ。」



「え?」

「あ、その顔。いったい、私が、誰を好きなのか、気になっちゃった顔でしょ。」


「ざーんねん。教えませーん。」


「別に、聞いてないし。」





「メガネくん、話しかけたら、以外と喋るね。

コミュ障なのかな?と思ったけど、


話を終わらそうと思っているのなら、さっきみたいに、無視するか、短めに、返事をすれば良かったのに、以外と、長めに話す。

好きでも嫌いでもないって、要するに、普通ってことでしょ?

こう言った方が、言葉数も少なくてすむよね。」



実は、もっと、濃いめのキャラだったりして。





試されていたのか?



彼女は、会話を通して、俺の性格を見抜こうとしたようだ。




このまま、2人で、歩いているとボロが出そうで怖い。

いっそ、トイレにでも寄るふりして、先に、中央委員会室に行ってしまおうか。




「あ、今、逃げようと思ったでしょ。残念でした。私と一緒に行こう。」


彼女は、そう言って、俺の手を引っ張るのであった。

「あ、ちょ。」




当然、彼女の行動は、廊下で目立っている。




ああ、俺は、透明人間になりたい。

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