POUSSIÉRE DE LUNE

北山双

第1話 審判

そうだ、彼に会いに行こう。

処刑は明日と聞き僕は牢獄へ急いだ。


彼は牢の片隅で静かに祈っていた。

「来てくれたのか。でも大丈夫かい?」

「平気さ。町の連中も本当は信じちゃいないんだ。牧師の君が、魔術を使ったなんて…

ただ不当な裁判と尋問が怖いんだ」

それも無理はないね、と、彼は五指が潰れて只の肉塊と化した手を見つめた。

そして、かつて町の人々にも語ったであろう聖書の一説を低声で言った。誰に言うともなく。


―なんぢら人をさばくな、審かれざらん爲なり。

己がさばく審判しんぱんにて己もさばかれ、

己がはかる量りにて己も量らるべし。―


翌日、罪人の足元に火がつけられ、大きく燃え上がると群衆は歓声をあげた。

と、同時に大風が巻き起こった。


僕は途方に暮れるしかなかった。

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