第19話 ついに結婚

「あ、ここは修正していただけますでしょうか?訂正印で大丈夫ですよ」

「あ・・すみません」


 区役所の戸籍係。

 二人で婚姻届けを提出しに来たのだ。


「・・・はい、大丈夫です。おめでとうございます」


 区役所の担当の方は、笑顔で言ってくれた。

 とはいえ、あっさりと受理・・


 感慨深いかと言うと・・・あっけなかった。


「ところで、婚姻届け受理証明書はどうなさいますか?」

「え・・・?婚姻届け受理証明書?」


 美月と顔を見合わせる。

 初めて聞く書類だ。


「はい、会社によっては結婚したことの証明で提出を求められることもあるとか、住民票の手続きを早くしたい時などに必要になる書類ですよ」


 そのことは全く考えていなかった。

 そういう証明書があるのか・・・


 会社から要求されたときのために、二人分もらっておくことにしよう。


「ええと・・念のため2通もらえますか?」


「ちなみに、通常の書類の形式と、記念用の賞状タイプとありますがどうなさいますか?」


「えぇ?賞状タイプ?」

「はい、1週間ほどかかりますが。郵送で送らせていただきます。」


 ええい・・・一応もらっておくか・・


「じゃあ、せっかくなので・・書類形式を2通と賞状タイプを1ついただけますか?」

「はい、かしこまりました」




 ちなみに、婚姻届け受理証明書は結局は使用することはなかった。

 また、1週間後に送られてきた立派な賞状のような証明書も、その時に見たきりでしまい込むことになる。

 そして・・処分するかどうかで十数年後に悩むことになった。




 役所では、あまりにあっけなかった。

 ついに結婚した!! という感慨はなかなかわいてこない。



 その夜。

 せっかくだからと予約した高級なレストラン。

 夜景が綺麗である。


 席について、注文した後。

 ワインをソムリエに注いでもらった後、美月に言った。


「美月。結婚してくれてありがとう。幸せにするよ」

「健司さん。ありがとう・・」


 その言葉を口にしたとき、健司は”ついに結婚したんだなあ・・”という実感が出てきた。

 結婚したうれしさもある。

 自分も結婚できたんだ・・という感慨もある。

 ああ・・結婚しちゃったんだ・・というのもある。


 いろいろな感情が入り混じる。

 そして、なぜか恥ずかしく思う気持ち。

 ちょっと顔を赤らめて美月を見る。美月はにっこりと微笑んで健司を見つめてくれている。




 窓の外に満月が美しく輝いていて二人を照らしていた。



 

 早乙女健司と早乙女美月(旧姓 瀬戸美月)。

 ついに入籍したのであった。

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