第4話 アウトレットモール
「おっはよ~!」
「おはようございます。今日は、よろしくお願いします」
今日は3月下旬の平日。
有給休暇が余っているということで、使わないと人事から怒られる。
そこで、有給休暇を取った。もちろん、美月も。
美月の親友の高橋ミキの休日に合わせた。
高橋ミキの彼氏の海斗君は大学入学まで休み。
今日は4人で、アウトレットモールに出かけることにしているのだ。
表向きの理由は、海斗君の入学祝いを探すためである。
また、健司と美月には別の目的もあった。
結婚することを、2人に伝えることである。
ただし、健司にはさらに別の思惑があったのだ。
それは、結婚式をしない予定であることを高橋ミキに伝える。
そして、親友に対しては美月は隠している本心を言うのではないかと期待しているのだ。
健司の運転する車は、高速道路を走っている。
「それにしても、健司さんってアウトレットモールに行くタイプに見えないよなぁ」
ミキが、後部座席から言う。
「そういえば、一緒に行ったことないですよね」
美月も言う。
「へ~。じゃあ、行ったことないんじゃないの?」
「いや、言ったことはあるよ。以前には結構行った」
健司は、こともなげに言った。
「そうなんだ、以前行ったのは何年前だよ?」
「そうだなぁ・・以前行ったのは・・」
健司は思い出すように考えて・・言った。
「10年くらい前かな」
「「「・・・・」」」
10年前。
美月とミキはまだ中学生。海斗君にいたっては小学生である。
軽くジェネレーションギャップを感じて、みんな黙ってしまった。
「さぁ、着いたぞ」
広々とした駐車場に車を停める。今日は平日なのでガラガラだ。
「じゃあ、まずは・・・どこから行きましょうか?」
「あ~~、あそこにまず入りたい!」
駐車場からすぐのところにあるのは・・クレープ屋であった。
「あ、いいわねミキちゃん!行きましょう!」
女性二人が先に行ってしまったので、健司と海斗はやれやれと後をついていく。
その後、4人はいろいろな店を回った。
海斗君の入学祝には、ブランド物のジャケットを購入。
カジュアル過ぎないため、ある程度のフォーマルな場でも使えるだろう。
それ以外にも、女性陣の服を見て回る。
と言っても、美月の服はミキが選ぶものを購入していくのだが。
やがて、お昼時。
昼食をモール内の洋食レストランで取ることにした。
「それでね、ミキちゃんに報告があるの」
料理を待っている間。美月から切り出した。
健司が後を引き継いで話した
「俺たち、結婚することにしたんだ」
ミキが、ポカンとしていった。
「え?本当?・・本当なの??」
「そ、本当」
「え~~~~!!」
大声で驚く、ミキ。
無理もない。健司と美月が出会った場にもいたのだ。
「おめでとうございます。すごいですね」
海斗君が祝福してくれた。
「お二人が出会ってどれくらいなんですか?」
「それが・・初めて会ったのは去年の夏くらいだね」
「え・・・?」
海斗君も驚いた。
何しろ、ミキと海斗が出会って半年とちょっと。でも、結婚なんてまだ考えてもいないのだ。
「それは・・驚きました」
これが大人の恋愛なんだろうか?と、海斗は盛大に誤解した。
「それでそれで?結婚式はいつやるの?」
美月にミキが嬉しそうに聞いてきた。
「結婚式のお化粧、私にやらせてよ!」
やる気満々である。
「あのね、結婚式やらないつもりなの」
美月が言うと、ミキは口をとがらせて文句を言った。
「え~~!なんでよ!」
「ミキちゃんも知ってる通り、呼ぶ友達なんていないし」
「今どき身内や親しい友達だけでやる結婚式もあるってば!!」
「それに、ウェディングドレスとか興味ないし。めんどくさそうだし」
「あぁ・・」
ミキも納得してしまった。どうやら、本当にウェディングドレスに興味がなかったらしい。
健司が、やっぱり結婚式は無しでいいかなと思ったときだった。
「それは残念。美月は健司さんのタキシード見たくない?」
とミキがニヤッとしながら言ったのだ。
「え・・・?」
なぜか、それに反応する美月。
「そ、タキシード」
「タキシード・・・」
美月が健司を見ながら、ぽーっとつぶやく。
「カメ・・」
「うわ~~!!、いろンな意味でアウトだから口にしないの!」
ミキが美月の言葉を慌てて遮った。
健司はそれを聞いて固まった。
健司もさすがに知っている、そのキャラクター。
長年女の子たちに人気の少女漫画・アニメだ。
まさか・・!?
「最近は、写真だけってのもあるらしいし、考えてみたら?」
ミキが美月に、にやにやと言う。
「写真?・・・」
ミキが健司を見ながら言う。
「アリかも・・」
ミキの言葉により、急転直下。
美月が結婚式に興味を持ち始めた。
さすがは親友。美月のツボを心得ている。
”しかし・・自分のウェディングドレスではなくタキシードに反応するとは・・”
健司は、背中を嫌な汗が伝って落ちるのを感じていた。
”まさか、俺がコスプレさせられるんじゃないだろうな・・?”
そうなったら、ミキを恨んでやる。
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