第115話 第二ラウンド 前編
「待たせたな、みんな!」
さっそく俺達はライトプリズンに戻ると待機メンバーに声をかける。
こちらも問題なかったようで、誰も欠けたりはしていない。
よかった。
サスケは裏切っていないようだ。
「凄かったでごじゃるよ。流石はサクセス殿でごじゃる。」
「そのとおりでございます。サクセス様がいれば世界は安泰でしょう。」
サスケとセイメイが俺の事を褒め称えると、なぜかその後ろにいるロゼが涙を流していた。
「……本当に良かったです。これでおじいちゃんも……」
「ん? どうしたロゼ?」
「な、なんでもありません。ただ、嬉しくて……その……ごめんなさい。本当に何でもないんです。」
ロゼはそう言いながら、無理に作ったような笑顔を浮かべる。
一体どうしたというのだろうか?
まぁ、ロゼのフォローはカリーに任せればいいだろう。
「……まだですじゃ。まだ終わっていないのじゃ。」
すると突然卑弥呼が真剣な顔をして俺に近づいてくる。
「どういうことだ? 卑弥呼」
「あれは……ウロボロスは倒す事はできぬのじゃ。」
「え? いや、完全に消滅したじゃないか? お前も見てただろ、卑弥呼。」
「その通りですじゃ。ハッキリとこの目で見ていたですじゃ。じゃが……ウロボロスは死んではおらぬ。ほれ、見てみよ。」
卑弥呼に言われた俺は、もう一度火山があった場所に目を向けてみると、その場所に黒い何かが集まっているのが見える。
「……嘘……だろ? まさか、あれは……」
「そうですじゃ。ウロボロスですじゃ。先ほどの攻撃で散った邪神体がまた集まっておるのですじゃ。」
「邪神体?」
「うむ。邪神の体を消滅させるには、神の力が必要。大野将軍ならその力の一部を使う事はできるのじゃが、あれら全てを消滅させる力はないのじゃ。」
「某の神気ならいけるというのであれば、やるでござる!」
卑弥呼の話を聞いたイモコは気合の入った声を上げる。
「ダメじゃ。そなたの神気では全く歯が立たぬ。無駄死にするだけじゃ。」
「構わないでござる! 某の力で奴を倒せるなら……」
卑弥呼の制止を聞かずにウロボロスの下へ行こうとするイモコ。
だがそんな事を俺が許すはずはない。
「やめろ、イモコ! 言ったはずだよな? 死ぬつもりの奴に戦わせる気はないって。」
「し、しかし……」
いつもなら俺の言う事にすぐに従うイモコだが、今回だけは違った。
このままなら俺が止めようとしても行くだろうな。
すると、そこにカリーが割って入る。
「二人とも落ち着け。そしてイモコはちょっとそこに座れ。んで卑弥呼さんよ、あんた何か考えがあるんだろ? 何もなしに今ここでそんな事を口にするとは思えないからな。」
カリーはそう言うと、卑弥呼に視線を移す。
「その通りですじゃ。話はまだ終わっておらぬ。大野将軍も言われた通り座るのじゃ。」
「わかったでござる。」
再度卑弥呼に言われたイモコは、少しだけ落ち着いたようで言われた通り地面に座った。
イモコが座った事で、俺達も一度話し合うために各々が座って卑弥呼の話に耳を向ける。
「サクセス殿のお蔭でウロボロスが復活するまで時間はまだあるですじゃ。その間に色々と話しておきたいのじゃ。」
その言葉にカリーが噛みつく。
「時間ねぇ……。あんたよぉ、最初からわかってたんだろ? サクセスでも倒せないって。じゃあ何であの時止めなかったんだ? この時間を稼ぐためか?」
話し始めようとする卑弥呼に対して、先にカリーが追及した。
普段とは違って、カリーが卑弥呼を見る目つきはまるで敵に対するような目である。
こんなカリーは珍しい。
「そなたが怒るのはごもっともじゃ。その通りですじゃ。わかっておった、倒せない事は……。しかしながら、実際にウロボロスを目にするのはワシも初めてじゃて、倒せる事を期待していたのも事実ですじゃ。そして最悪そなたが言うとおり、時間稼ぎにはなると……申し訳なかったですじゃ。この通りですじゃ。」
卑弥呼はそう話すと、俺達に向けて土下座をして謝罪する。
俺としては謝られる理由はよくわからないが、まぁそんな気にする事ないんじゃね?
なんでカリーはあんなにカリカリしてんだろ?
あ、今の別にギャグじゃないよ?
「……ふぅ。わかった。まぁいい、続けてくれ。」
卑弥呼の謝罪を受けてカリーは少しだけ落ち着きを取り戻し、目つきも普通に戻る。
「感謝するですじゃ。それでは話すのじゃ……まず今ワシ達にできる事は一つしかないですじゃ。」
「お、あるんだ。なら話は早いな。」
「少し黙ってろサクセス。時間がないんだ、卑弥呼に話を続けさせろ」
むっ! なんか今のはちょっとむかつくな。
まじで今日の……ていうか、合流してからカリーの様子が変だ。
まぁ、ここは大人な俺がグッと抑えて……。
「カリーさん。今の言い方は酷いです。なんでそんなに怒っているのですか? 私達が皆さんとはぐれたからですか?」
俺がイラっとした感情を抑え込んでいると、なんとシロマがカリーに突っかかってしまった。
個人的には凄く嬉しいけど……。
「シロマちゃん! カリーを責めないで!」
すると今度はロゼが……
「責めていません。聞いているだけです。何かあったならちゃんと話してください。私達は……仲間です」
ロゼに言われてもシロマは言葉を止めない。
その目には強い意思があり、カリーを見つめている。
「いや……そうだな。今のは俺が悪かった。すまないサクセス。ちょっと戦いに疲れて気が立ってるのかもしれねぇ。何でもないから気にすんな。場を乱して悪かった。」
素直に謝るカリーを見て、俺の苛立ちもスッと消える。
まぁ別にそこまで怒ってはいないけどな、シロマが代わりに言ってくれたし。
しかしそれを見たロゼが目に涙を溜めて立ち上がった。
「カリーは悪くない! 悪くないもん!!」
まじで何があったんだ?
やっぱり様子がおかしいぞ。
まさかシルクに何かあったんじゃ?
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