第72話 刺激的な出会い

ーーその姿は……正に荒野に咲く一凛の薔薇の花。



 顔を上げた俺の瞳に映るその女性。年齢は10代後半位だろうか。すらっとした手足に、引き締まったウェスト。そして黒髪サラサラのロングヘアーに切れ長のまつげ。そう、その姿は今朝俺が見惚れてしまった、女装したセイメイの姿によく似ていた。


 しかしセイメイがここにいるはずもなく、また、その女性の瞳の色はセイメイとは違って杏色だ。


 つまるところ、女装したセイメイに似た別人。だがそんな事はこの際どうでもいい。とにかく目の前に、最上級の美女が現れたのだ。それならばやる事は一つしかないだろう。



 そう思い走って駆け付けようとする俺だが、その女性と目が合った瞬間、走るのをやめた。



 その女性は俺の事をじーっと見つめるも、今まで見てきた娼婦達と違って誘い文句を言ってこない。それどころか、儚げな瞳でただ俺を見つめるだけだ。


 俺にはその姿が逆に眩しく見える。そして冷静になる。



ーーもしかしたら既にここは娼館街ではなく、ただの住宅街かも。



 そう考えると、その女性に俺が「やらせてくれ」などと声を掛けるわけにはいかない。


 その為悩んだ俺であるが、それでも一歩また一歩とゆっくりとその女性に近づいていく。まるで強い引力によって引き寄せられるように、考えとは別に足が勝手に動いてしまうのだ。


 そして遂に目の前まで来てしまった俺は、口を開く。



「オ、オラ、サクセスというだべ。も、もしよかったらオラと……」



 緊張のあまり、訛り言葉で声をかけてしまう俺。それに対して、その女性は人差し指を立てると、その指をそっと俺の口に当てた。


 しぃーっという形になったその指は、それ以上俺に言葉を出させない。


 なんでいきなり、そんな事をされたのか?


 もしかしたら、娼婦と勘違いしていると思ってそれ以上言わせなかったのか?


 だがその後すぐにその女性は俺の手を取ると、目の前の民家の中へ黙って引き込む。



「ちょ、待ってけろ! え? え?」



 俺は困惑しつつも、そのまま民家の中へ誘われると、その女性は優しく扉を閉めてカチッと鍵をかけた。



「お、オラ……こういうの初めてだっぺ。」



 俺は緊張状態の中、なんとかそれだけを口にすると、その女性は可憐な笑みを浮かべて



ーー唇を重ねてきた。



(ぬぉぉぉ! し、舌が絡まるぅぅ。え、え、エクスタシーーー!)



 熟練のテクニックに文字通り絡めとられた俺は、その場で腰を抜かしそうになる。


 そして少しネバっぽい唾液の糸を引きながら、その唇を女性が離すと



「……リードしてあげる。まずはこっちにきて。」



 と言って俺の手を引いて奥に向かった。



 俺はその美しい声を聞き、更に興奮する。


 息子は既に臨戦態勢だ。


 そしてそのまま浴室まで連れて来られると、服を一枚づつ脱がされていった。


 女性に服を脱がされるとか、正直母親以外にされた事はない。


 しかも脱がせ方というか、その手つきがめちゃくちゃイヤらしい。


 だが悲しいかな……俺は経験がなさ過ぎて完全にされるがままの状態だ。



 すると、いつの間にかその女性も服を全部脱いでいる……にも関わらず、俺は何故か申し訳ない気持ちが勝って、その裸体を直視することができない。


 遂にお互いマッパになったところで、固まっている俺の背中を彼女がそっと押して浴室に入った。


 どうすればいいのかわからない俺は、とりあえずそのまま浴室に置かれた椅子に座ると、その女性はお湯をかけてくれて体を洗い始めた。




 ※  ※  ※




「あ、あ、ちょ、そこは……あふーー!」



 イヤらしい手つきで俺の体の隅々を丁寧に洗うその女性。


 あまりのテクニックに、それだけで俺は乳液を発射しそうになるが、何とか堪えた。



「……逞しい身体。凄い素敵だわ。あなた、お名前はサクセスさんでよかったかしら?」



 俺は快感に身を委ねていると、突然、その女性に名前を聞かれる。


 そう言えば、出会った時に俺は名前を名乗ったが、彼女の名前を俺は知らない。


 彼女は、俺の初めてを捧げる女性だ。


 一生忘れないだろうから、名前くらいは知っておきたい。



(あぁ、神様。素敵な初めてをありがとう。)



 そう神に感謝の祈りを捧げつつ、俺は彼女の言葉に答える



「あ、あってるべ。オラ、サクセスだべよ。お、おじょうさんは?」


「うふふ。私の名前は……姫子よ。」


「姫……子さん。いい名前だっぺ。」


「うふふ、ありがとう。今日はたっぷりサービスしちゃうわね。」



(なんてエエ子なんやぁぁ。最高だ。まじで最高だ。もしかして、童貞の呪い消えたんじゃね?)



 正直ここまで順調なら、いくら強烈な嫉妬の呪いであろうとも大丈夫なはず。


 そう思った俺は、意を決して姫子の体を見る為振り返ろうとするが……いつの間にか姫子の体にはバスタオルが巻かれており、ヌードを見る事ができなかった。



「もう。サクセスさんのエッチ。焦らなくていいのよ。でも、そんなに見たい?」


「み、みたいっす!」


「うふふ。まだだぁめ。それじゃあ、一回サクセスさんは浴室から上がって布団の前で待ってて。私も直ぐに行くから。」



 そう言って、焦らされた上に放置プレイを強いられた俺だが、俺は素直に布団の上で正座をしながら待ち続ける。


 さっきから、興奮し過ぎて何が何だかわからない。


 だが、一つだけわかる事がある。


 これから自分が未知の世界に旅立つという事だ。


 そして心臓から脈打つ鼓動を感じながらも、その時は遂に訪れる。



「お、ま、た、せ。」



 そういいながら現れた姫子は……全裸であった。



 それを見た瞬間、俺の中で理性が崩壊する。


 なんと俺は姫子に飛び掛かると、そのまま荒々しく布団の上へ押し倒した。


 童貞の俺には、この後どうすればいいかわからない。



「キャっ! 乱暴さん。いたずらっ子はメッだぞ。」



 その言葉を聞いた瞬間、俺は脳内でなんかの糸が切れる音が聞こえた。


 そう、理性という糸が完全に切れた音だ。


 何も考えられなくなった俺は、とりあえずパイオツに顔面をダイブさせようとするが……



ーーその時、ボフッというその場に似合わない音が聞こえた。


 

 その音は余りに一瞬であったし、更に言えば、それが何であろうともはやどうでもいい。


 今の俺の頭の中は、女体を貪る事しかなかった。


 そして勢いそのままにして、胸に顔面ダイブを決めた俺だが、そこで違和感に気付く。


 俺がダイブしたのは張りのある大きなプリン。


 その感触は如何ほどかと期待していたのだが、ダイブしてみると、ふにゃっとしていた。


 予想と違う感触に、少しだけ理性が戻ってきた俺は、顔を離してそのパイオツを確認すると



……なんと、萎れて垂れた物体が目に映る。



(ん? あれ? 思ったより……え? なんぞこれ!?)



 俺が不思議に思っていると、俺の下……そう、姫子が少しシャガレタ嬌声をあげた。



「あーれー。れれれ……。ふぅ。歳のせいかのう……もう術が解けてしもうたわい。」



 どう考えても、さっきまでの姫子とは違うその声色。



 俺は恐る恐る目線を上にあげると……



ーーババァがいた。

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