第50話 イモコ帰還!
サクセス視点に戻る
イモコが消えてから三日が経った。
あの後、俺達はイモコを待つまでの間、周辺の探索や今後の予定を細かく話し合い、遂に今日……イモコを置いて先に進む事に決めた。
「心配すんなよ、サクセス。なるようになるだけだし、イモコならすぐに追いついてくるさ。」
朝食の後、浮かない顔をしている俺に、カリーが声をかけてくる。
「わかっちゃいるんだけどな。信じてはいるけど、それでも何か俺にできることはないかって思っちまうんだよ。」
「まぁな。気持ちはわかるぜ。でも、これはイモコの問題だ。試練ってのは、直接誰かが助けられるようなもんじゃねぇし。」
その話を聞いて、ふと思い出した。
カリーもまた、天空職になる為に試練を受けていた事に。
「そういえば、カリーはどんな試練だったんだ?」
俺の質問にカリーは少し答えづらそうな顔をする。
何か嫌な思い出でもあるのかもしれない。
「……そうだな。自分との闘い……だったな。俺は試練で自分の弱い所を散々と思い知った。その上で乗り越えられたのは、当時の仲間達のお蔭かもしれないな……」
少し顔を俯かせながら語るカリー。
あまり詳しく聞かない方が良さそうだ。
「……そうか。ちなみにどのくらい続いたんだ、試練は?」
それでも俺は、一番気になる期間についてだけは確認する。
「俺の場合は5年くらいだったか。」
「5年!? 嘘だろ!? そんなに長いのかよ!」
その言葉に俺は驚く。
5年というのは余りに長い。
俺の予想では長くて一週間程度だと思ってた。
その衝撃の事実に俺は固まっていると、カリーの続く言葉を聞き安心する。
「あぁ、でもこっちと時間軸が違ったから、あの時は実質1ヵ月しか過ぎてなかったな。」
ほっ……。
びびったわ。
でも、それでも大分時間はかかりそうだな。
俺がそんな事を考えていると、今度はシロマが驚いた声を上げた。
「5年が1ヵ月ですか!? そうですか……つまり試練の場所によって大分変っているのですね……そうするとリーチュン達も……。」
シロマは何かを考えているが、何に驚いたのかはわからない。多分俺とは違う理由のはず。
そういえばシロマはどのくらいだったって言ってたっけ?
俺がそれを確認しようとしたところで、再度カリーが口を開いた。
「まぁ、そう言う事だからイモコはそんな早くは戻れない可能性が高い。とはいえ、天空職とは違うだろうから、俺達と同じとは限らないけどな。」
あ……確かに。
ここは大陸が違って職業も違ったから、同じとは限らないか。
「なるほどね。だからカリーは3日待つことにしたのか。それで戻らないなら、自分と同じようにもっと長くなると。」
「まぁそう言う事だな。だからとにかく俺達は信じて待つしかねぇ。大丈夫だ、あいつの根性があれば乗り切れるに違いねぇよ。」
カリーは確信しているかのように言う。
それを聞いて、俺も少しだけだが安心した。
「わかった。でも、出発は昼過ぎにしてもいいかな? 俺は出発まで鳥居でイモコを待ちたいと思う。」
「構わないぜ。それなら俺達は出発の準備やら食べ物でも探しておくわ。この辺りでとれる果実はうまいからな。」
「ありがとう。じゃあ俺はちょっと様子を見てくる。」
俺はそう言うと、少し離れたところにあるイザナミの祠に一人で向かう。
そして赤い鳥居の近くに行くと、そこに置いてある大きめの岩に腰を掛けた。
「後数時間で出発か……。もっと色々イモコと訓練してあげれたら良かったな。」
俺は一人、そこで呟く。
すると突然、赤い鳥居が光だした。
「えっ!?」
そして鳥居から光が消えると、その前に一人の男が現れる。
「イモコ!?」
俺は突然目の前にイモコが現れた事に驚くと、その声に気付いたイモコが振り返った。
「師匠!? 待っていてくれたでござるか!?」
その言葉を聞いて、俺は思わずイモコに抱き着いた。
「あぁ。よかった! 本当に良かった! 無事だったんだな!」
俺はイモコの無事な姿を見て、心からホッとする。
試練の結果はもちろん大事だが、それよりもイモコが生きていてくれたことが嬉しい。
しかしふとイモコを見ると、何故か浮かない顔をしていた。
「心配させてしまい、申し訳ないでござる。」
その言葉を聞いて、もしかしたらイモコは試練に失敗したのかもしれないと思うも、一応確認だけする。
もし失敗していてもまたやり直せばいいし、元気づけてやりたい。
「いや、お前が無事ならそれでいい。それで、試練はどうだったんだ?」
「はっ! 無事、転職できたでござるよ!」
転職できたんかーーい!
「そうか……やったなイモコ! 流石俺の一番弟子だ! よく頑張ったな、イモコ!」
どうやら俺の心配は外れたようで、無事転職できたようだ。
さっきの顔は単に心配かけて申し訳なかったというところだったみたい。
しかし流石イモコだ。
俺は絶対無事戻ってくるって信じてたぜ。
俺はイモコの報告に更に喜ぶと、イモコをみんなのところまで案内した。
「おーーい!! みんなぁ! イモコが戻ったぞーー!!」
俺は大声でみんなにイモコの帰還を伝えると、まだ全員近くにいたのか、全員が俺達のところに駆け寄ってくる。
「おぉ! イモコ無事だったか!」
「待ってましたよ、イモコさん。」
「流石は大野大将軍でがす。」
「イモコさん、無事そうでよかったです。」
全員がイモコの無事を喜ぶと、当のイモコは照れくさそうにしていた。
「皆さんに迷惑と心配をかけて申し訳なかったでござる。ただいま、戻ったでござるよ。」
イモコがそう言うと、セイメイが近づいてきた。
「それで、どうだったのですか? イモコ殿。」
「なんとか無事試練を越え、転職できたでござる。」
その声に、みんなが「おぉ!」っと声を上げた。
「そうですか。それは良かったです。後2時間後に出発する予定ですが、イモコ殿の体調は大丈夫ですか?」
「心配無用でござるよ、セイメイ。某の体力はスサノオ様のお蔭で全快しているでござる。」
「っ!? スサノオ様に会ったでがすか!?」
イモコの言葉にシルクが驚きの声を上げた。
「会ったでござる。試練の主はスサノオ様でござるよ。」
「そうでがんすか……。本当に存在していたでがんすね。」
「そんな事よりも、イモコ。まだ時間あるから聞かせてくれよ。試練の話を。」
俺はシルクの言葉を遮ってイモコに聞いた。
だって、やっぱ気になるじゃん。
「わかったでござる。では、某の新しい力についても話させてもらうでござるよ。」
イモコはそう言うと、そこから壮絶な試練の内容についてから話し始めた。
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