第7話 支度は万全

「サクセス様、こちらでございます。」



 翌朝、宿での朝食を終えると、セイメイが馬車の前まで俺達を案内する。今日は、移動するのに必要な物資を購入した後に旅立つ予定であったのだが、それは必要が無くなってしまった。なぜならば、俺達が農村地帯を散策している間に、セイメイは一人でそれらの物資やここにある立派な馬車を購入していたからである。俺から何か指示を出したわけでもないのに、必要な事は全て済まされていたのだ。



「これは……立派な馬車だな。しかも2台も!?」



 そう、目の前にある馬車は1台ではない。なんと2台も用意されていたのだ。確かに人数が増えているため1台より2台あった方が便利ではあるが……。



「私の勝手な判断で二台購入したことをお詫びします。ですが、今後の旅の事を考えれば、予備……という意味も含めて二台あった方が効率が良いと判断しました。ちなみに必要な物資は既に積み終えております。」



 いやいや、優秀すぎるだろセイメイ。まじでやる事がないな。これじゃ冒険というかVIP旅行じゃないか。



「いや、セイメイがそう判断したなら俺からは何もないよ。それで乗り分けはどうする?」


「それでしたら、前を走る馬車にはイモコ殿とカリー殿がよろしいかと。町を出れば魔獣が多く潜んでおります故、二人が前を進んでいただければより安心かと拝察します。当然、後ろの馬車の御者は私が務めさせていただく所存です。サクセス様とシロマ様……そしてゲロゲロ様は馬車の中でゆっくりしてくださいませ。」


「お……おう。なんかもう色々完璧で言葉がでねぇよ。ん? そう言えば今、魔獣っていわなかった?」


「はい。こちらの大陸では魔物の事を魔獣と表現することが多いのです。基本的には魔物と同じなので魔物とも呼びますが、違いがあるとすれば魔獣とは本来普通の動物であったといった点でございます。ウロボロスの影響で普通の動物が体内に魔素を吸収するようになり、変異したのが魔獣でございます。」



 やべぇ、余計な事を聞いちまった。全く理解できない……が、なにやらシロマは納得しているようだ。うん、じゃあ俺はとりあえず気にしなくてもいいか。



「な、なるほどな。うん、わかった。んで、目的の小江戸皮肥えって国までは、ここからどのくらいで着くんだ?」


「そうですね。順調に進んで行けば10日もあれば国境までは辿り着くかと思われます。そこから国主のいる皮肥え城までは4日といったところでしょうか。しかし依頼から想像するに、小江戸に近づくにつれて多くの魔獣と遭遇するかと思います故、それ以上に日数がかかる可能性もございます。」



 そういや、小江戸では多くの魔獣の出現でピンチとか? 確かにそれなら、その道中も優雅な旅とはいかないだろうなぁ。気を引き締める必要があるな。



「魔獣が更に強くなっているんだっけか? どの程度強いかはわからないが、いい実践訓練にはなりそうだな。」


「そうでござる。是非、その際には某に討伐させていただきたいでござる。」


「それは構わないけど、俺も戦うぞ? 俺も今までみたいに能力任せの戦いではなく、連携とかも考えて戦いたいからな。」


「わかったでござる。ですが……師匠に訓練が必要とは思えな……いえ、なんでもないでござる。」



 イモコは何か言いたそうにしているが、勘違いしては困る。俺はまだまだ強くならなきゃいけないんだ。ステータスもそうだが、経験的にな。



 こうして俺達は次の目的地である小江戸皮肥えに向かって出発するのであった。


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