第四章 サムスピジャポン編

第1話 セイメイ加入

「師匠!! 見えてきたでござる。あれが我が祖国サムスピジャポンにござるよ。」


「おっ!? どれどれ……おぉ! 立派な港じゃないか。」



 目の前に見えてきたのは、ルーズベルトより一回り大きな漁港。

 港の周りには沢山の船が停船しており、近づくにつれて、すれ違う船の数も多くなってきた。


「ここは漁業の盛んな国、チバラギでござるよ。ここに船を停めたら、歩いて北西方向に向かい、小江戸皮肥えの国を通り、そして卑弥呼様が統治する邪魔大国でござる。」


「ふむふむ、確かに女神の導が指している方向もそっちであってるな。もしかしたら、オーブは卑弥呼が持っているのかもしれないな。」


「し、師匠! いけないでござる! サムスピジャポンで卑弥呼様の事を呼び捨てにされたら、大変な事になるでござるよ。トラブルを避けるためにも、気を付けて欲しいでござる。」



 焦った様子で注意するイモコ。

 どうやらこの国で卑弥呼の存在は、俺が思うよりも大きな存在らしい。

 確かに、卑弥呼と呼ぶだけで、いちいち牢獄に入れられたらたまらないな。



「ところでイモコ。サムスピジャポンに、魔石を現金と交換する場所はあったりするのか?」



 今度は、俺とイモコの会話を隣で聞いていたカリーが質問する。



「あるでござる。我が祖国に冒険者ギルドはないでござるが、代わりに【波呂ワーク】と呼ばれる職業支援組織があるでござる。」


「ハロワーク?」


「そうでござる。冒険者ギルドと同じように、各国に必ず置かれている組織でござるよ。転職斡旋してくれて、更には職場を勧めてくれるでござる。クエストと違うのは、期間が設けられているところでござるな。」


「なるほどな。やっぱり俺達のいた大陸とは色々と違うんだな。それで、イモコ達は港に着いたらどうするんだ? 全員で俺達と一緒にいくのか?」


「その必要はないでござる。某が行けば十分でござるよ。今回の仕事は、某が卑弥呼様に報告すれば完遂でござる。他の船員達は、某の報告終了後に報酬を受け取り、解散でござる。」


「そうかぁ。じゃあみんなとは、港でお別れだな。」


「そうでござるな。しかし、部下達はこの国の精鋭でござる。少なくとも、ウロボロスとの大戦がある時には、また会えると思うでござる。」



 少しだけ寂しいな。

 一ヵ月間も一緒に生活してきた仲間達だ。


 最初こそ、あまり話はしなかったが、後半は色んな奴と話したり、酒を飲んだり、遊んだりしてきた。

 どいつも気の良い奴ばかり。

 みんなのお蔭で、俺はとても楽しく毎日を送れた。



「ちょっとお待ちください!!」


 

 そこに突然、セイメイが割り込んでくる。



「ん? どうしたセイメイ。セイメイにも沢山世話になったな。港に着いたら当分会えなくなるかもしれないけど、元気でいろよ。」



 俺はこの船に乗ってから、イモコと同じくらいセイメイには世話になった。

 最後くらいは、しっかりとお礼をしなくちゃな。



 俺はそう思い、近づいて来るセイメイに頭を下げる。



「ですから、お待ちくださいサクセス様!! 私も一緒に連れていってもらえませんか? 以前、私の事を仲間とおっしゃってくださいましたよね?? どうかお願いします!」



 えぇ……。

 いや、でもな。

 断る理由もないけど……。



※ セイメイを仲間にくわえますか?


  はい  いいえ  ▶ちょっと待って



「今、俺のパーティは、イモコを入れて丁度4人なんだよな。経験値から考えると、セイメイを入れる枠がないんだ。」


「そのような事は気になりませぬ! 私はただ、サクセス様の御傍で仕えせていただければそれでよろしいのです。だめでしょうか? どうか、このセイメイ。一生のお願いでございます。」



 う~ん。

 とは言ってもな。

 どうしたもんか。



「ここまで言ってるんだ、俺は構わないと思うぜサクセス。」



 カリーは、仲間に加える事に賛成のようだ。

 その言葉を聞いて、セイメイはチラッチラッとイモコに目配せしている。

 


「そ、某も、特に異論はないでござる。セイメイは博識であるが故、道案内として雇うのも有かと思うで……ござるよ。」



 なんか歯切れが悪いな。

 弱みでも握られているのか?

 まぁ、二人がそう言うなら、俺も特には……。


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