最終話 祭り
「おお~い! みんなぁぁ~! 戻ったぞぉぉぉ!」
俺はゲロゲロの背中に乗りながら、覇王丸の上空まで戻って来た。
色々とピンチもあったが、こうやって無事に帰ってこれた事が素直に嬉しい。
「お! サクセス!」
早速カリーが俺の声に気付いて、叫んだ。
「ただいま、みんな。なんとか災禍の渦潮倒してきたぜ!」
甲板の上に降り立つと、そこには仲間達はもちろん、セイメイや乗組員の多くが集まっていた。
「んで、サクセス。詳しく聞かせろや、お前なんかミスったろ?」
ギクッ!
「な、なんの事かなぁ~? と、特に問題は無かったぜ。ほら、どこも怪我してないし……。」
「サクセスさん……。ちゃんと、私の目を見て言ってください。また無理したんですよね?」
俺がカリーの質問に若干焦りながら答えていると、シロマが俺の目をじ~っと見つめながら近づいて来た。
「い、いや。なんつうか、あれだ。ちょっと色々想定外があったというか……。なんというか……。まさか、災禍の渦潮があんな奴だとは思わなくてさ。でも大丈夫、みんなの訓練のお蔭で俺は勝てた。それでいいじゃないか。」
「まぁ、サクセスが無事なら俺は構わないが……シロマちゃんは大分心配していたぞ。あんま、女を心配させんなよ。」
「あ、ははは……。すみません。」
カリーの言葉を受けて、俺は素直に謝った。
「わかりました。今回は許します。ですが! 二度目はありませんよ。次は、必ず私も近くにいますからね。」
「……はい。」
「まぁ、とりあえず無事に災難も乗り越えた事だし、ぱぁっといこうぜ。なぁ、イモコ。おい、どうしたイモコ?」
カリーがイモコの肩に腕を回して話しかけると、イモコは下を向いて涙を流していた。
「え? ちょ、イモコ。お前どうしたんだよ? どっか痛いのか?」
俺もそれを見て、心配して駆け寄る。
「ち、違うでござるよ……。災禍の渦潮は……人が決して抗う事ができない天災にござる。それを……それを倒す事ができる英雄が、今、正にここにいる事に、某は感激しているでござる! 師匠なら……師匠達なら! きっと、厄災【ウロボロス】を滅ぼしてくれるでござる! 某は、今、確信したでござるよ!」
イモコは、鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて叫んだ。
ちょっと、誰か顔拭く物を渡してあげてほしい。
「ちょ、落ち着けイモコ。大体、ウロボロスが復活するのに、まだ3年もあるじゃないか。先の話にはなっちまうが、ウロボロスは俺達が必ず倒す。いや、倒すために全ての事を尽くす。だから、心配すんな。」
「し、ししょーーーー!」
「ちょっ!! 馬鹿、鼻水が……おい! 俺の服で鼻水を拭くんじゃねぇ!!」
イモコはそのまま俺に抱き着くと、その顔をぐしゃぐしゃとこすり付けた。
俺の白い服に、イモコ液が付着する。
マジでやめてほしい。
「まぁまぁ、サクセスさん。今は許してあげましょう。服なら私が洗濯しますから。」
お? なんか新婚さんっぽい会話だな。
悪くないぞ。
しかし、そこにセイメイが割って入る。
「いいえ、シロマ殿。ここは、サクセス様の従者である、私セイメイがそのお役目を果たします。シロマ殿の手を煩わすわけにはいきません。ささ、サクセス様。一緒にあちらに行って服を脱ぎましょう。」
なんか顔が赤くなって興奮しているように見えるのは、気のせいだろうか。
うん、気のせいに違いない。
だがコイツの前では、絶対服を脱がないぞ!
「そうですか。ですが、サクセスさんに従者は必要ありませんので、洗濯は結構です。」
「これはこれは異な事をおっしゃる。私は、サクセス様に直接請われて従者をしております。シロマ殿こそ、関係ないと思われますが?」
バチバチバチバチっ!!
シロマとセイメイの間で火花が飛び散っている。
「待った待った! 二人ともよせって。それにセイメイは、俺の従者じゃないぞ?」
「そ、そんな!? お願いします! 従者でいさせて下さい!」
俺の言葉に焦るセイメイ。
凄い必死だ。
「ダメだ。セイメイ……お前は従者じゃない。お前は……もう俺の仲間だよ。」
「さ、サクセスさまぁぁぁ!!」
その言葉に感極まったセイメイは、イモコに続いて、またしても俺に抱き着く。
というか、イモコ……いつまで抱き着いてんだよ。
そろそろ離れろや。
「ゲロオオ(サクセス! 約束!!)」
そこで突然、ゲロゲロが鳴きだした。
そういえば、約束だったな。
マグロカーニバルの!
「おぉ! そうだった! イモコ! おい! イモコ、お前いい加減にしろ!」
「っは! 某は……一体!? なんでございますか師匠?」
「なんでございますか? じゃねぇよ。お前いつまで……って、もういいや。ところで、船にまだマグロってあるかな?」
「あるでござるよ? 食べたいでござるか?」
「あぁ、俺も食べたいけど、ゲロゲロが……な。約束したんだ。終わったらマグロ祭りするって。」
「そうでござったか!? しかし、そうなると少しばかり足りぬでござるな……。」
ポン。
そこで突然、カリーが俺の肩を叩いて言った。
「サクセス、俺に任せておけ。俺がでかいの釣ってやる。」
ドヤ顔のカリー。
しかし、そう簡単にはいかないだろ?
よし、釣ろう! で、釣れるわけがない。
という事で、俺は提案した。
「おっし! じゃあ、みんなでこれから釣り大会しようぜ! 先に大物のマグロを釣った奴は……俺と一緒にゲロゲロに乗って空中散歩だ! 空は気持ちいいぞ!」
俺がそう言うと、大歓声が上がる!
「ま、まつりだぁぁぁぁ!」
「ひゃっほーい! 俺、一度乗って見たかったんだよなぁ!」
「俺が一番デカいの釣るぜ?」
「ぼくちん、シロマ様と乗りたい……。」
「サクセス様と……空で二人きり……はぁはぁ……。」
うん、歓声に混じって変な言葉が聞こえるな。
とりあえず、今シロマと口にした奴、出てこいやぁ!!
「さすがサクセスさんです。でも、負けませんよ!」
そう言って、なぜかシロマもやる気を出している。
本当にシロマは、どこにやる気スイッチがあるのかわからない。
「面白れぇ事考えたな、サクセス。よっしゃ、俺が全員のド肝を抜いてやるぜ。」
「俺も負けないぜ、カリー。一番の大物を釣るのは俺だ!!」
こうして俺達は、無事、災禍の渦潮を倒した後、釣り大会をして盛り上がる。
そして、夜には盛大なパーティを開くのであった。
ちなみに、一番大物のマグロを釣り上げたのは、奴だった……。
カリーではない。
なんと……ゲロゲロだった!!
ゲロゲロは海に飛び込むと、周りの釣り場を荒らしまわり、挙句の果てには海に潜って、でっかいマグロを咥えて戻ってきやがった。
恐るべし、古龍狼……。
でもな、これは釣り大会であって、海に入って咥えてくるのは反則だぜ?
と思いつつも、あまりに喜んだ顔をしているゲロゲロを見て、俺は許可してしまう。
なにはともあれ、こうして長かった航海も無事終わる。
喧嘩をしたり、学校みたいな生活をしてみたり、新しい遊びを覚えたり、この一ヵ月は本当に濃厚な日々だった。
そして、遂に俺達は辿り着く。
災厄の魔物【ウロボロス】の眠る地、【サムスピジャポン】へと!!
第三部 オーブを求めて 完
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