第52話 お嬢様聖水②

「どうしたんだよ? さっさとグビッと飲めよ。味は保証しないけどな。飲んだことねぇし。」



 俺がお嬢様聖水を両手で握り締めて固まっていると、カリーが催促してきた。



「の、飲むぞ!? いいんだな? ほ、ほ、本当に飲むからな!!」


「いや、早く飲めよ。何をそんなに緊張してんだよ。毒なんか入れてねぇから。」



 どうやらカリーは勘違いしているみたいだ。


 毒?

 そんなもんあっても気になるか!

 だって……お嬢様の聖水だぞ!!



 パキッ!



 俺は瓶の蓋を回して開けると、それを一気に喉に流し込む!



 ゴキュゴキュッ!



「プファーーー! うまい! シュワっとして、それでいて柑橘系の味だ。後味も爽やか!」



 お嬢様聖水を喉に流し込むと、思わずその旨さに一気飲みしてしまった。



 あぁぁぁ!!

 しまった! 

 もっと味わって飲めばよかった!!



「お? そうか? うまいなら、今度俺も飲んでみるかな。」



 カリーも俺の喜んでいる姿を見て興味が湧いたようだ。


 だが、断る!

 これはオラのもんだべ!

 


「カリーさん、それでは私にもいただけますか?」



 いつのまにか、シロマは闘技場の修繕を終えていた。

 俺が変な性癖に目覚めようとしている間に、シロマは……。

 すまないシロマ!



 君にならいくらでもあげちゃう!! 


「おっと、そうだった。サクセスじゃなくて、シロマちゃんに渡すつもりだったっけか。ほい、旨いらしいから味わって飲むといいぞ。」



 そう言って、カリーはシロマにも一本渡す。

 


 はっ!


 そういえばシロマはお嬢様だったよな。

 お嬢様がお嬢様聖水を飲むって……。



 これは、もしかして、かなりヤバイんじゃないか?

 ん? なんだこれ?

 体がポカポカして、興奮してきたぞ!?



 ふ、副作用か?

 それともこのシチュエーションが俺の脳を震わせているのか!?



 俺が悶々とそんな事を考えていると、シロマはお嬢様聖水をゆっくり飲み始める。



 柔らかそうなシロマの唇に瓶の先が……。

 あぁ……もうだめ。

 特訓とかどうでもよくなってくる……。



 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。




「ご馳走様でした。とても美味しかったです。あっ!」


「ど、どうしたシロマ!?」


「これ凄いです! 体がポカポカしてきたと思ったら、頭がスッと軽くなりました。凄い即効性です。」



 急にシロマが変な声を出すから、びっくりしたぜ。

 お嬢様×お嬢様で変な副作用があるのかと。



「か、カリー。それさ、1ダースでいくらしたんだ? もっと買った方がよくないか!?」



「確かにこれだけ効果あるなら予備はいくらあってもいいな。だけど、売ってたのはそれで全部だぜ。ちなみに1ダースで2万ゴールドだ。」



 2、2万ゴールド!?

 たっか!!

 そりゃあ、高級品だわな。



「そうか……。でも、もし再入荷されたら、買おう。高いけど、それだけの価値がある!」


「そうだな。んじゃ明日にでも商会ギルド長に言っておくわ。んで、シロマちゃん。ワープはできそうか?」


「はい、問題ありません。ワープといっても、外の空間とつなぐだけですので、私が作った入口に入るだけです。」



 なるほど、転移って感じではないらしい。

 よくわからんが、凄い。



「じゃあ、頼むシロマ。できるだけ、広いところに繋げてくれ。」



「わかりました。では、開きますね。【ゲート】」



 シロマが謎の呪文を唱えると、リングの真ん中に真っ黒な空間が現れた。

 どうやら、そこに入ればいいようだ。



「ゲロゲロ、そのサイズじゃ無理っぽいから、一回元に戻ってくれ。」



 ゲロ(わかった。)



 ゲロゲロは一瞬で古龍狼の姿から元のファンシーな姿に戻ると、一目散にゲートに飛び込んだ。



 ゲロオ!(ぼくがいっちばん!!)



「ちょ!! おい、待てって。」



 俺も直ぐにゲロゲロを追ってゲートの中に入る。



「え? なにこれ? すげぇ。」



 ゲートに入った瞬間、俺は浜辺に出ていた。


 てっきり変な空間を歩いたりするのかと思ったが、どうやら違うみたいだ。

 物理的な距離をゼロにして移動する魔法。



 シロマ、半端ねぇな。



 そして俺の後に、みんなが次々とゲートから出てくる。



「良かったです。成功です。」


「これ、ちょっと凄すぎじゃないか? あ。遠くに灯りが見えるけど、もしかしてあれは……。」


「はい。ルーズベルトの町ですね。距離によって使う精神力が違うので、どこまでも簡単に行けるわけではありませんが、この位の距離なら問題なさそうです。」



 俺達が移動したのは、ルーズベルトから20キロ程離れた浜辺。

 シロマはこれくらいの距離と言っていたが、とんでもない距離だ。



「ん? イモコも来たのか? 先に帰って休んでてよかったのに。」



 ゲートから最後に出てきたのはイモコだった。

 さっきよりは大分回復してそうだったが、歩くのも辛そうである。

 無理しなくていいのに。



「そういうわけには行かないでござるよ。師匠の戦いを見れるチャンスを見逃すくらいなら、腹を斬った方がマシでござる!」



 腹を斬るって、言いすぎだろ。

 まぁいいか、見たいなら見せてやろうじゃないか。



 ここは、見渡す限り砂と海しかないから、ここなら全力でゲロゲロとも戦えそうだ。



「よし、んじゃそろそろやるか、ゲロゲロ。」



 ゲロ!!(いつでも大丈夫!)



 ゲロゲロはいつの間にか、古龍狼の姿に戻っている。

 やる気満々のようだ。



「いくぜ!!!」




 こうして、遂に俺とゲロゲロの全力のバトルが始まるのであった。








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