第27話 隠しアジト

「どうやら、あそこがガンダッダ一味の根城みたいでござるな。いかがしますか、師匠?」



 俺達の目の前には、水面上にわずかだけ姿を現している岩礁見える。

 ノロが乗り込んだ船は、その岩に横づけすると、そこに停船した。

 しかし、俺にはどう目を凝らしても、そこには小さな岩場と船があるようにしか見えない。



 根城と言われてもなぁ……。



「あぁ……すまん。俺には全く見えないんだが……なんとなく船だけは見える。イモコには、洞窟でも見えてるのか?」



「いえ、違うでござる。あの岩礁は見えている部分は小さいでござるが、あれは岩というよりも、海中にある大きな山の一角でござるよ。見るでござる、船から次々に人が降りていくでござる。」



 うーん。

 見えん!!

 海底火山とか、なんか本で見た気もするが、そんな感じか?



「すまない、俺にはやっぱり見えないから、もう少し詳しく教えてくれ。」



「そうでござるか。簡単に説明すると、海底にある大きな山に穴ができて、なんらかのアイテムを使って、中に水が入らないようにされていると思うでござる。つまり、あそこが海山洞窟の入り口になってるでござる。ガンダッダはきっとその中にいるでござるな。」



 なるほどな。

 なんとなく、あそこに入れるというのは分かった。

 そうなると……。



「なぁ、イモコ。その洞窟があるとしてだ、出口はあそこだけだと思うか?」



「そうでござるなぁ。多分……いえ、ないでござるな。出口はあそこだけだと思うでござる。」



「ふむ。じゃあ、もしも洞窟内で取り逃がした奴がいたら、あの入口を抑えておけばいいわけだ。なら、二組に分かれるか。」



 とりあえず俺は中に入るとしてだ……。



 本当は、俺とカリーとゲロゲロで入るのがベストだろう。

 しかし、隙を見て逃げる奴がいるかもしれない。

 その時、正直イモコ達だけでは心配だ。



 どうするか……

 カリーを残すか、ゲロゲロを残すか……。

 それとも俺だけで入るか……



 俺がしばらく悩んでいると、隣に立っているカリーが声を掛けてきた。



「なぁ、サクセス。相手は魔物じゃねぇ、人だ。なら、俺が一緒に行く。捕縛するにしても、ゲロゲロだと難しいだろ?」



 確かにその通りだ。

 しかしなぁ………。



「師匠、某を連れて行ってはくれませぬか?」



 うーん、イモコか……。

 いや、ダメだ。

 船を指揮する者がいなくなるのは、困る。



 俺は二人の申し出を受けつつ、遂に決断した。



「すまない、イモコ。今回は船で待機しててくれ。次は必ず連れて行く。それと俺と同じ位強い、俺の家族のゲロゲロを残す。万が一、強いモンスターが現れたり、ガンダッダが逃げても、ゲロゲロがいればまず負けないだろう。つまり、洞窟の中に入るのは俺とカリーだけだ。いいか?」



「そうでござるか……残念ですが仕方ないでござるね。それよりも、この魔物が師匠と同じ位強いですと? 全くそうは見えないでござるが、師匠が嘘をつくとは思えないでござるな。」



「あぁ、嘘じゃない。だがゲロゲロを魔物と呼ぶのはやめてくれ。そう言われると、なぜか殺意を覚えるんだ。」



「わ、わかったでござる!」



 俺がそう言うと、イモコは身震いをし始めた。

 おっと、殺意が漏れてしまったようだ。

 ゲロゲロが一度死んでから、どうにもゲロゲロの事になると、冷静でいられないんだよなぁ。



「わかってくれればいいよ。悪いな、怖がらせるつもりはないんだ。」



「そ、そんな。謝らないで欲しいでござる。失言したのは某でござる。わかりました、それではここで、ゲロゲロ殿と一緒に待つでござるよ。」



 よし、決まったな。

 じゃあ、とりあえず乗り込むか。

 ボッサン達が早く来てくれると助かるんだが、まだ当分来ないだろう。

 だが、問題ない。



 ここに来る前にボッサンからもらったアイテム(魔法の縄)があれば、何人でも捕縛することができるからな。

 とにかく、一人残らず駆逐……いや、捕縛してやるぞ。

 待ってろよ! ガンダッダ!!




【隠しアジト】




「いやぁ、参った参った。すまない、ガンダッダの旦那。どうやらバレちまってよ、全員つれて逃げてきたぜ。」



「おう、ノロか。まぁそれはいい。で、あれは手に入ったのか?」



「あぁ、ここにあるぜ、旦那。でも、なんでこんなものが必要なんだ?」



 そう言うと、ノロは懐から、透き通るように美しい水色の小さな宝石をガンダッダに渡す。



「おう、これだこれ。くっくっく、これがあれば……俺は……。」



 それを受け取ったガンダッダは邪悪な笑みを浮かべてながら、小さく笑う。



「確かにそれは綺麗な宝石だが、そこまで価値があるとは思えないんだが。それは何なんだ?」



「これか? これはな……。俺がずっと探していた物だ。俺は力が欲しい。誰よりも強い力がな。これは俺にその力を与えてくれるレアアイテム【邪神の涙】だ。まぁ、このままだと、ただの宝石にしか見えないがな、これには特殊な仕掛けがあってな。ある事をすると、本当の姿を現すのさ。」



「そ、そんな凄い物だったのか!?」



「あぁ、俺は本当に運がいい。まさか襲った船の中に、これの所在が書かれたリストがあるとはな。しかも、あの町にあるなんて、最高に運がいいぜ。俺は、あの日から……ずっとこれを探していたんだ……。」



 その宝石を、うっとりした目で見つめながら話す、ガンダッダ。



「それで、ある事ってのは何なんだ? もったいぶらず、教えてくれよ。」



「あぁ、お前は今回、かなり頑張ってくれたからな。いいだろう、お前には見せてやろう。ククク……。」



 そういうと、ガンダッダは後ろに置いてあった大きな斧を手に持った。



「ん? なんでそんな物を?」



 それを不思議そうに眺めるノロ隊長。



「あぁ、それはな……こうするんだよ!!! がっはっはっは!!」



 ズバッ!!

 ビチャ……



「これだよ! これだ!! そうだ、冥途の土産に教えてやる。これはな、人の血を吸収することで真の姿を現す、呪われたアイテムなんだ。って聞こえていないか。即死だったな。まぁいい、これで俺は……がっはっはっは!!」



 洞窟の中で響き渡るガンダッダの笑い声。

 その前には、一人の男が無残にも、体が半分に割れて倒れているのであった……。

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