第37話 緊急事態!

※サクセスの話に戻ります。


「あちらの方が神官長にございます。」


 巫女のような恰好をした綺麗なおねぇちゃんは、マーダ神殿の広場にいる頭の禿げた小柄の爺さんを指して、俺に伝える。

 俺達は女神への祈りを済ませた後、本来の目的であるオーブを渡すために、神官長を探していた。

 とりあえず、関係者に直接聞くのが早いと思い、近くにいた比較的若くて可愛い女性に声をかけて見ると、あっけなく神官長は見つかるのであった。


 なんでその女性が関係者とわかったかって?

 ふっ。

 勘だよ! 巫女服着てるんだ、きっと関係者に違いない!

 べ、別に、ちょっと可愛いから声をかけたわけじゃないんだからね!!


「流石サクセス様です。素晴らしいご慧眼をお持ちで。」


 そう言うイーゼの顔は若干訝しめな目を向けている。

 だが、俺は目をそらさないぞ。

 そらしたら負けだ!!


「まぁとりあえず、すぐ見つかったんだ。さっさとオーブを渡しにいこうか。」


 俺は、変なツッコミを入れられる前に、そそくさと、そのハゲ爺こと神官長のところに向かう。


「すいません、神官長様で間違いないでしょうか?」


「ん? そうであるが? 何用ですかな?」


「私は冒険者のサクセスと申します。アバロン王より依頼され、オーブをお届けに来ました。その他にも、もう一つオーブがあるため、それも含めてお渡ししたいと思います。」


「おぉ! それはまことでございますか。これは遠いところからわざわざ、痛み入ります。丁度いいところにきてくれた、これからオーブの間の点検に向かうところでしたので。それではまずは、そのオーブを見せていただけますか?」


 俺は、レッドオーブとイエローオーブを袋から取り出した。


「おぉ!! これはまごうことなきオーブじゃ。すばらしい。これでオーブが4つになりましたぞ。女神様も喜ばれると思います。それではオーブの間に、そのオーブを納めにいきましょうぞ。」


 女神様がねぇ……。

 あんま喜ばしたくないのはなぜだろうか……。

 まぁいいか。


 神官長は俺から渡されたオーブを手に取ると、すたすたと歩いて行く。

 俺達はそれに続いて歩いて行った。

 そして、女神像の間の先の扉を開けると中に入っていったため、俺もとりあえず中に入る。


 オーブの間と呼ばれる場所に入ると、そこには6つの台座が置かれており、そこには既に緑色と青色のオーブが置かれた台座があった。

 そして、何も置かれていない台座が4つ。

 神官長はその内二つに、俺が渡したレッドオーブとイエローオーブを置いた。


「これで後2つでございますな。オーブが全て集まれば、伝説の竜が現れ、この世界に光をもたらしてくれるでしょう。その光と勇者の光が交じわる時、世界に平和が戻ると言われております。」


 うん、知ってる。

 願いを一つ叶えてくれるんだよね?

 呼び出す呪文とかあるのかな……。


「前にもそんなような事を聞きました。それでは、これから俺達は、残りのオーブを探しに旅にでます。またオーブを見つけたら届けにきますよ。」


「おお! それは素晴らしい! それではお預かりしたオーブは我々が責任をもって保管いたします故、また見つかりましたらお持ちください。」


「はい、それでは失礼しま……。」



 ドーーン!



「な、なにごとじゃ!?」


 遠くから何かが爆発したような音が聞こえてくる。


「サクセス様。町の外からのようですね。確認しますか?」


「あぁ、なんか嫌な予感がするな……。」


 モンスター達は殲滅したはずだ。

 このタイミングでこの音は、嫌な予感しかしない。

 なんでだろう……胸騒ぎが止まらない。


「森の方かもしれませんね、急ぎましょうサクセスさん。」


「あぁ、急ごう。何もなければそれでいいし、とりあえず何が起こっているか確認だな。」


 早速俺達は、急いでマーダ神殿を出ると、町の出入口まで駆けていった。

 すると、空から何かが飛んでくるのが見える。


「ん? ……人?」


「きゃあぁぁぁぁ!!」



 ドン!



 いきなり俺達の前に人が三人空から落ちてきた。


「え? マネアさん達? あれ……ビビアンは?」


 現れたのは、マネア、ミーニャ、ブライアンだった。

 そこにビビアンはいない。

 すると、ミーニャがいきなり俺に突撃してくる。


「サクセス君!! ビビアンが危ないの! 直ぐに、向かって!!」


 鬼気迫る勢いで叫ぶ。


「え? な、なにがあったんですか?」


「説明は後よ! それよりも早く森に行って! 凶悪な龍の魔王が現れたの!! 今ビビアンが抑えているわ! お願い! あいつはビビアン一人じゃ無理よ! お願いだから……早く!」


 龍の魔王だと!?

 ビビアンが危ない?

 やばいな!


「わかった、みんな聞いたか!? 急いで救援に向かうぞ!」


「わかりましたわ。いつでも行けますわ。」

「アタイもオッケーよ! 腕が鳴るわね!」

「早く行きましょう。」

 ゲロロオ(頑張る!)


 みんなはいつでもいけるようだ。

 よし、早速急いで……


「いない! いないわ! シャナクさんがいないわ!!」


 すると、マネアが急に取り乱す。


「え? 本当だわ! まさか……ビビアンと一緒に……」

「すまないでござる……気付かなかったでござるよ……。」


 ん?

 シャナク??

 ビビアンの他にも誰かいたのか?


「ミーニャ! ブライアンさんと一緒に神殿に応援を呼びに行って! それとサクセスさん! 私も連れて行って下さい!」


「何いってんのよ! 私も行くわよ! という事で、ブライアンさんは神官長に早くこの事を伝えて下さるかしら?」


「わかったでござるよ! 直ぐに行って参るでござる!」


 ブライアンは急いでマーダ神殿に走っていった。

 どうやら、マネアとミーニャは俺達に同行するようだ。


「俺達は構わない。じゃあ二人は俺達の馬車に乗ってくれ。」


 直ぐに俺達はミーニャとマネアを連れて、ビビアンが戦っている森に向かうことにする。


「みんな聞いてくれ! 俺はゲロゲロに乗って先に向かう。イーゼ達は馬車に乗ってきてくれ。」


 俺はそう言うとゲロゲロに【能力解放】を使った。


 キングフロッグウルフに成長するゲロゲロ。


「行くぞ! ゲロゲロ!」


 ゲロオオン!(わかった!!)


「できるだけわたくしたちも急ぎます。サクセス様、どうか無理をなさらないでください。」


「あぁ、わかってる。みんなを頼むぞ! イーゼ。」


「サクセス君! お願い! ビビアンを……ビビアンを守って!」

「サクセス様、どうか一緒にいる賢者様もお守りください!」


「ん? ビビアンと一緒にいるのは賢者なのか? わかった、俺に任せろ! 必ず二人とも救って見せる!」


 こうして俺はゲロゲロに乗って、ビビアン達が戦っている森へと向かうのであった。

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