第20話 生死をかけた戦いの後……

 ゲスい事を考えながら走っていた俺は、途中で重要な事を思い出す。


「あっ! 馬鹿か俺は! 仲間達がピンチかもしれないじゃないか!」


 思いがけずビビアンと再会した事から、すっかり頭が違う事にいっていた。

 俺はデスバトラーを追う為に、あの凶悪なドラゴン達を仲間に任せている。

 デスバトラーに逃げられた今、俺は急いで戻らなければならない。


 何してんだ俺は!


 さっきまでの自分に怒りを覚えた。

 そして、胸の動悸が激しくなる。

 激しい不安が俺を襲うのだった。


「くそ! みんな無事でいてくれ!」


 そこから俺は全速力で走る。

 体力と素早さのステータスが化け物じみていた俺は、全力でも二時間は走れた。


 すると数分走ったところで、見慣れた馬車が走っているのが見えてくる。

 

「あれは……俺たちの馬車だ! みんな、無事か!」


 俺が叫びながら馬車に近づくと、御者をしていたリーチュンとシロマが気づいた。


「あ! サクセス! アタイらは大丈夫だよ!」


 俺は仲間達と合流した。


「みんな怪我はないか!? あいつは……あの黒いドラゴンはどうなった!?」


「サクセスさん、落ち着いて下さい。みなさん無事です。リーチュンも死にかけはしましたが、見ての通りピンピンしています。」


「そうなの! アタイ、ドジ踏んじゃってさぁ。ちょっと死にかけちゃったわ! あはは……。」


 死にかけたと言っている割に、リーチュンは元気だった。

 見た感じ、特に目立った外傷は見えない。

 だが、死にそうになったと聞いて、普通でいられるわけがない。


「本当に大丈夫なのか? どこかおかしなところはないか!?


 一歩間違えていたら、もう二度とリーチュンに会えなくなるところだったかもしれない。

 そう考えると、足が震えてくる。


 やはり、離れるべきではなかったか……。


「そんな顔をしないでください、サクセス様。大丈夫ですよ、誰もいなくなったりしませんわ。それにわたくしは約束を必ず守る女ですわよ。」


「そうよ! サクセスは心配し過ぎ! 見てよ、こんなにピンピンしてるんだから!」


 リーチュンはその場でバク転をしたり、飛び跳ねたりしてる。

 確かに元気そうだ。


 少し安心すると足の震えが止まる。


 そして……


 ちらりと見えた、黒い輝きを見て逆に元気が出てきた。


「リーチュン! はしたないですよ。下着が見えてます。」


「いいじゃん、減るもんじゃないし。アタイ、サクセスなら見られてもいいわよ。」


「そういう問題じゃありません!」


 言っても聞いてくれないリーチュンに、シロマの頬は膨らむ。

 そして俺のあそこも膨らむ……。


 すると今度はゲロゲロがゆっくりと俺に近づいてきた。


 ゲロォ(ごめんね)


「ん? どうしたゲロゲロ。元気ないじゃないか? どこか怪我でもしたか?」


 ゲロロォ……。(僕のせいでリーチュンが傷ついた。)


「ん? どういう事だ? そうだ! あの黒いドラゴンはどうなったんだ!?」


「ゲロゲロちゃんが倒してくれました。まるでサクセスさんのような技を使って。私達が今生きているのは、ゲロゲロちゃんのお陰です。」


 ん?

 どういう事なんだ?

 ゲロゲロが新しい技を覚えて、あいつを倒したと?

 それは凄い事だし、後で見せてもらいたいが……。


 ならなんで、こんなにゲロゲロは落ち込んでいるんだ?


 俺は状況をのみこめない。

 だが、とりあえずゲロゲロを撫でる事にした。


「よくやったな、ゲロゲロ! お前のお陰でみんな無事だった。俺は見てないけど、お前を誇りに思うよ。」


 ゲロォ! ゲロゲーロ!(サクセス! うわーん!)


 ゲロゲロは俺に飛びついてくる。

 涙こそ流れてはいないが、それは泣いているように見えた。


「よしよし、いい子だ。泣かなくていいぞ。怖かったな、辛かったな。でももう大丈夫だぞ。」


 子供をあやすように、優しく撫でる。


 ゲロ……ゲローン……(サクセス……サクセスぅぅ~)


 ゲロゲロは俺の腕の中で泣き続けた。


「ゲロちゃんには、悪い事しちゃったわね。あれはアタイのドジだから気にしないでいいのに。」


「そうですわ、あなたがまた勝手に突っ走るから、あんな凶悪なブレスを食らったのですわ!」


「しょうがないじゃん! イーゼの魔法を信じてたんだもん。」


「わたくしのせいにするつもりですか! 誰があなたを助けたと思っているのですか!」


 何故かイーゼとリーチュンが喧嘩し始める。


 だが、なんとなくだがわかってきた。

 つまり、ゲロゲロがあのドラゴンを倒しきれなくてリーチュンが助けたところ、ブレスを浴びて死にそうになった。

 そして、それをイーゼが助けたという訳か。


 ん? 

 なんでシロマじゃないんだ?


「まぁまぁ二人とも、喧嘩はやめてくれ。とりあえずみんなが無事で良かった。敵を倒せた事よりも、俺はお前達が生きていてくれた事が嬉しい。みんなありがとう。」


「サクセス!!」

 

 俺の言葉に、リーチュンが抱きついてきた。

 相変わらず、直情型だ。


 おやおや?

 また倒された方がいいかな?

 この間は、俺のターンの前に終わってしまったからな。


 そんな事を考えていると、イーゼが更に怒った。


「ちょっと、話は終わってませんわ! サクセス様から離れなさい!」


「イーだ! やだよ。早いもの勝ちだもんねぇ~!」


 子供のような返しをするリーチュン。

 俺としても、このふくよかな感触はもう少し味わいたい。


「わかりましたわ。貴方がそういう態度を取るなら、わたくしにも考えがあります。」


 急にイーゼのトーンが下がる。

 それは、まるで嵐の前の静けさのようだ。


 ドキドキ……。

 やばい、何を言い出すんだ。

 これ以上喧嘩はやめてくれ!

 というかシロマ、そろそろ止めてくれよ!


 イーゼは真剣な目でリーチュンを睨んだ。


「何よ!」


 そしてリーチュンも睨み返す。


 正に一触即発だ。

 女性の激しい争いに、俺はハラハラして何も言えない。


 正直、怖かった。


 だが……イーゼは、俺の予想とは反して、まさかの行動にでる!


 ダダダっ! ドーン!


「あぁ、サクセス様。わたくしも死にそうになって、怖かったですわーー! うえーーん!」


 なんと俺に勢いよく突撃して押し倒すと、俺の息子に顔をスリスリさせながら、嘘泣きを始めた。


 その謎の行動にみんなは呆然とした。

 普通に考えれば、


 もう貴方を助けないですわ! 


とかいって大喧嘩が始まる雰囲気だった。

 しかし、イーゼは俺の予想を大きく上回る。


 どうやら、リーチュンにやり返すのではなく、リーチュン以上の事を俺にしよう決めたのだった……。


 恐るべしイーゼ……。


 そして、ここぞとばかりに責め立ててくる。

 やめてくれ、昨日から俺は辛いんだ!


 スリスリスリスリ……。


 あっ! 

 ちょっ!

 そこをそんなに刺激しないで!!


「イーゼさんも、リーチュンもいい加減にして下さい! なんなんですか二人とも!」


 遂にシロマがキレた。


 俺もその声に、俺の一部が縮み上がる。

 凄い迫力だった。

 そりゃ、まぁいきなりこんなの見せつけられたら、怒るわな。


「ずるいです! みなさんだけ!」


 へ?


 なんと今度はシロマが俺の頭を抱き抱えてきた。

 小さくも柔らかい何かが俺を包む。


 やめてくれーー!

 これ以上は……。

 ダメだっぺよ!

 もう、許してけんろぉ。


「あー、みんなズルい! アタイも!」

 

 ゲロォ!(僕も!)


 リーチュンもゲロゲロまでも俺に抱きついてきた。

 俺の右手はリーチュンのメロンに包まれる。

 仲間全員からもみくちゃにされ、陵辱され続ける俺。

 もはや、限界だった。

 何が? って、ナニがだ。


 そして俺は、屈辱を味わう事になるのだった。

 今までのバチが当たったのかもしれない。


 もう……無理……。








 激しい脱力感と、幸福感が俺を包みこんだ。

 そして、そのままグッタリする俺。

 

 あまりの恥ずかしさと疲れからなのか……

 それとも快楽からなのか……

 俺はそのまま意識を手放すのだった……。



「え? ちょ、サクセス!? どうしたの!?」

 いきなり倒れた俺を心配するリーチュン。


 ゲロぉ!(サクセスしっかりして!)

 俺を純粋に心配するゲロゲロ。


「皆さん離れてください! 毒の臭いがします!」

 敵から攻撃を受けたと勘違いして、臨戦態勢に入るシロマ。


 そして……


「うふふ……いい匂いですわぁ……。」

 色めかしい目をしながら、舌舐めずりするイーゼ……。


 なんにせよ、全員無事で本当に良かった。

 俺をヌカして……。


 

 こうして俺たちは、無事に再会を喜び合うのであった。


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