第18話 え? ええ?

「降りてこい! デスバトラー!」


 俺は現在、デスバトラーを追って森の中を駆けていた。

 デスバトラーは空を飛び、俺は地を走る。

 当然俺の方が早いはずなのだが、地上は空と違い、木が多いせいで中々追いつかなかった。


「嫌に決まっております。降りたら攻撃してくるじゃありませんか。いい加減諦めてもらえませんかね? お仲間は心配ではないのでさか?」


「あぁ、心配だ。だから早くお前を倒させてくれ。」


「嫌でございます。しつこい男は嫌われますよ。」


「あいにくだったな。俺がしつこいのはモンスターだけなんだ。御託はいいから降りてこい。」


 いい加減この鬼ごっこにも飽きてきた。

 それにあいつが言う通り、仲間が心配なのも確かである。


「はぁ、このままじゃ埒がありませんね。わかりました、降りましょう。」


 チャンス!!

 降りてきたと同時にぶった斬ってやる!


 デスバトラーは俺から少し離れたところで、ゆっくりと高度を下げていった。


「オラァーー!」


 当然そこを狙う。


 ーーが、上空に避けられて、俺の一撃はかわされる。


「ふぅ、危ないですね。まぁ来るのはわかっていましたがね。さて、ではいきますよ。」


 フゥゥゥ……


 デスバトラーは口から煙を吐き出した。


 毒か!?


 俺はその煙を吸わないように下がる。

 だが、気づいた。

 これは毒じゃない。

 目眩しだ!


「それではさようなら。」


「待て! くそ、相変わらずやり方がネチネチしてて汚いぞ!」


 しかし、俺の罵声に返ってくる言葉はなかった。


「くそ、また逃げられたか。しかし、なんなんだあいつは。モンスターと戦ってる感じが全然しないぞ。仕方ない、まだ近くにいるはずだし周囲を探すか。」


 デスバトラーに逃げられてしまった俺は、仕方なく森の中を走って探し回っていると、木々の先に青い光と黒い光が見えてくる。


「ん? なんだあれ。誰か戦ってるのか?」


 まだその場所と距離はあったが、気になってしまい走って近づく事にした。


 だが、その数秒後。


 ドガーーン!!


 光っていたところが、急に大爆発を起こした。

 その衝撃は俺のところまで届く。


「くっ! なんだなんだ? あそこで何が起こってんだ?」


 その時、俺の目にデスバトラーの姿が見えた。


「あの野郎~。あんなところにいやがったのか! あの爆発も奴の仕業か!」


 俺は、さっきの数倍の速さで駆ける。

 そして爆発が起きた場所に近づいていくと、嫌な空気が強くなってきたのを感じた。


「なんだ、この禍々しい感じは? ん? あれは……。」


 俺の目に映るは、ボロボロになって瀕死のモンスター。

 どうやら、この禍々しい気配は奴のものだった。


 そいつは徐々に体を回復させていくと、何故か大笑いを始めて、ゆっくりと動き出す。


「何だあいつは? いや、マジで気持ち悪いな。何を喜んでいるんだ?」


「グベ、グベグベ。勝ったグベ! 勝ったグベーー!」


 そいつは大分回復したのか、声がハッキリと聞こえてきた。

 だが、全く俺に気づく気配はない。

 怪我のせいなのか、それとも何か他に気がいっているのかわからないが……これはチャンスだ!


「よく分からないけど、かなりヤバそうな奴だな。とりあえず、ヤッとくか?」


 奴が止まった瞬間、俺は一気にそいつの背後に接近し、はじゃのつるぎを突き刺した。


「グベ? ぐ、ぐ、グベェーー!!」


 叫び声、気持ち悪っ!!

 だが、トドメだ。


「ライトブレイク」


 俺の剣はそいつの体内から光の大爆発を起こす。

 以前より強くなっている俺。

 当然、その破壊力も上がっていた。


「グッべーー!!」


 そのモンスターは、一瞬でチリとなって消えていく。


 ゴロッ。


 巨大な魔石が転がる。

 

 なんかよくわからんけど、ラッキー! 

 レベル上がったわ。

 こいつ結構強かったんじゃね?

 だがしかし、今はどうでもいい。

 それよりも、あいつだ!


 俺は周囲を見渡すも、デスバトラーは見つからない。


 近くで見てるかもと思ったのだが、どうやらいないみたいだ。


「あいつはどこに行ったんだ。くそ、逃げられたか……まぁいい、なんかついでにボスっぽい奴倒せたしな。」


 このバカでかい魔石だけは拾っておくか。

「参ったなぁ。とりあえず一旦みんなの所に……。え!? 誰か倒れてるぞ!」


 俺が倒したモンスターの前には、キラキラ光った鎧をまとい、ボロボロになって倒れているものがいた。


 どうやら金髪の女性みたいだ。

 うつ伏せで倒れていて、顔は見えない。

 でも何となくだが、俺の美少女センサーに反応がある。


 ピキーン!

 この気配……美少女か!?


 いや、それよりこの怪我はヤバイだろ。

 早く回復しなきゃ!


 俺はゆっくりその子に近づくと、至るところから出血しているのが見えてきた。

 というか、皮膚が裂けて肉が……。


「まずいな、かなり重症だぞ。【ライトヒール】」


 光がその者を包み込む。

 普通ならば、これで怪我は一瞬で回復する……はずだった。


「え? 何で回復しないんだよ! ちょ! これ、やばいぞ!」


 理由は分からないが、全く傷が癒えない。

 俺は焦った。

 このままじゃ、死んでしまう。


 そして、考えた末に抱き上げる。

 お姫様抱っこだ。


 でも、顔は見ない。

 多分、傷ついているだろうし、そんな顔は見られたくないはずだ。

 俺も美少女の血まみれの顔は見たくない!


 早くシロマに回復させてもらわなきゃ!


 俺は走った。

 来た道を思い出しながら必死に走った。

 時間との勝負である。

 

 装備の割に、この子は軽かった。

 これなら、全力で走れば数分で戻れる。


 しばらくそのまま、道を間違えないように注意しながら走っていると、突然大きな声が聞こえてきた。



「サクセス!! 会いたかった……ずっと会いたかったわ! サクセス!!」



 え?


 その声は、俺が抱っこしている女性からだった。

 ふと視線をその子に移すと、そこには涙を浮かべている見覚えのある女の子が……。


 え? ええ? えええ!?


「ビビアン……なのか?」


 二人は遂に再会するのであった。

 TO BE CONTINUE

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