第5話 仁義なき戦い

とはならず、その後リーチュンが背中を殴打し、肉が口から飛び出たことで一命を取り止める。


「がはっ! ハァハァ。すまない、ありがとう。」


「大丈夫?」


「あぁ、でも少し気分が悪いから、先に馬車の中で休ませてもらってもいいか?」


 俺が全てを有耶無耶にする為に、馬車に逃げようとしたところ、全員がついて来ようとする。

 簡単に逃してはくれない。


「大丈夫ですかサクセス様? 私が付き添いますわ。」


「いえ、ここは僧侶の私が良いと思います。」


「何言ってんの! 大体シロマがサクセスに詰め寄ったからこうなったんでしょ!」


「確かにそうですね。私が原因ですから、責任をとって私が看病しなくてはなりませんね。ですので、皆さんは先に食事を済ませて下さい。」


「ダメですわ。シロマさんは、そう言ってサクセス様に無理矢理、色々聞こうとするに決まってますわ。わたくし、そう言うのは良くないと思いますの。」


「わかった! じゃあサクセスはアタイが看病してるから、みんなはご飯食べてて!」


「何がわかった! ですか? 大体、リーチュンが変な事を口にするからこんな事になったんですよ。」


「アタイ、別に変な事なんか言ってないわよ。事実を言っただけだわ。」


 今ここに、女性三人による


  仁義なきの戦い


が始まった。

 

 そして俺はというと、女性の醜い争いは見たく無かったので、そのまま何も言わずにゲロゲロを連れてそっと馬車なら戻る。


 ゲロゲロは口をモグモグさせながらも付いてきてくれた。


 ちなみにゲロゲロは、みんなが争っている間に謎鍋をむしゃむしゃ食べていたようだ。


 ゲロォ!(肉、美味しい!)


 みんなゲロゲロを見習って、食事に集中してくれないものだろうか……。


「お前だけが、俺の救いだよ。」


 俺は馬車の中で毛繕いをしているゲロゲロを眺めながら、そのまま寝るのだった。


 その夜、遅くまで三人の仁義なき争いは続いていくのだった……。

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