第69話 潜入! ヒルダーム城
翌朝、俺は全員を集めて、夜中にヘルアーマーから聞いた話について説明した。
普通に考えれば夢を見ただけだろうと思われ、信用など出来るはずもない話であったが、何故か全員俺の話を信用してくれた。
それが俺には嬉しかった。
それとは別に、ボッサンが殺された王の息子と聞いた事について、ボッサン本人に確認した。
すると、本人は言いづらそうにしていたが、これを認めた事もあり、ヘルアーマーの話の信用性が高いと判断されたのである。
「で、ボッサン。偽物の王を倒したらお前が王になるのか?」
俺は単刀直入に聞いた。
「俺は、王様になるのが嫌で家を出て冒険者になった。それが今更になって王になるってのは、ちょっとな。だけど、ちびうさや、この国の為なら……いや、やめよう。もしも、俺がこの戦いで生き残ったら考える事にする。」
ボッサンもこの30年で色々考えも変わったのだろう。
まぁ確かに、全て終わってから考えるべき事だな。
「わかった。じゃあみんな、午後までは好きにしてくれ。各自準備だけは怠るなよ。時間になったらそれぞれのチームで行動を開始する。今日も作戦は【いのちだいじに】だ。」
俺がそれだけ言うと、全員がそれぞれ自分の準備始める。
俺も午前中は、イーゼと回復アイテム等の補充を済ませた。
そして時は来た。
ヘルアーマーとの約束の時間だ。
俺は、イーゼを連れてカジノの裏に来ている。
カジノの外周は塀で囲まれていて、裏側には回れないようになっていた為、裏の塀をちょいとぶち壊し、中に入った。
一応壊した壁は、イーゼの魔法【アースウォール】で補修しておく。
これは、侵入したのがバレるのを防ぐ為だ。
そして俺たちは、カジノの裏で隠し通路を探していると、早速イーゼが何かを発見する。
コツ コツ コツ コツン!
「サクセス様、この草の下になにかあります。」
イーゼが杖で地面を叩いていると、草の茂みの下に、感触の違う地面がある事に気づいた。
「ナイスイーゼ、ちょっとどいてくれ。」
俺はそう言うと、その地面を思いっきり素手で殴ってみる。
ドガっ!
すると土の下には、隠された木板が設置されており、それが壊れると地下に続く穴とハシゴが現れた。
「流石サクセス様! 素敵ですわ。」
「いやいや、イーゼのお陰だ。それよりこの下は、いつどこでモンスターと遭遇するか分からない。十分に気をつけてくれ。」
「はい、肌身離さずサクセス様にくっついていますわ。」
そう言って俺に抱きついてくるイーゼ。
「その言葉、使い方おかしくね? まぁいい、くっつくまではいかないにせよ、俺から離れるなよ。」
「当然です。何があっても離れません!」
「なんかちょっとズレているような気もするがまぁいい。中に入るぞ。」
俺はそう言って、梯子を降り始めた。
梯子を降りる際は、落下を防ぐ為に【レミオール】を使って、あたりを照らしながら降りる。
そして当然、俺の後に続くのはイーゼ。
それがどういう事か……言わなくてもわかるだろ?
俺が下、イーゼが上。
そして今降りているはハシゴ……。
光に照らされて闇の姿がハッキリと映し出される。
そう俺の言う闇とは……。
く、黒のTバック……。
なんっつうもん履いてやがるんだ、この変態エルフは!
俺がちょっと上に目線を上げると、イーゼの勝負下着が覗き放題であった。
そのおかげで成長した息子と手と足の三つがハシゴにひっかかり、抜群の安定性を……って、んなわけないだろ!
こんな時なのに普通に興奮してしまう。
やってくれたなイーゼ!
まぁやってるのは俺だが!
しかし、あまり見ると覗いている事がバレてしまう。
まぁイーゼの場合は、これも想定して、あえてその下着を選んだ気もするが、やはりこう、なんていうかな?
バレないように見るのがいいんだよね!
そんな事を考えているといつの間にか足が地面についた。
「イーゼ、思ったより深くないぞ。気をつけて降りてこいよ。」
俺は、降りる速度が速かったせいか、イーゼはまだ上の方にいた。
「はい、サクセス様。ご満足いただけましたか?」
やはり計画的犯行だったか。
だが、俺は満足している。
何も言うまい。
その時、突然イーゼの手が滑る。
「キャっ!」
イーゼはハシゴから手が離れて落下した……が、無事に俺が両手でキャッチ!
お姫様抱っこでイーゼをキャッチした俺だが、何故かイーゼの服がめくれて、黒い三角形が面前に現れた。
「……一応聞こうか? 何してんの?」
「あら、バレました? 偶然を装って近距離で見てもらおうかと。」
イーゼは自分で裾を上げていた。
違うんだよ、イーゼ。
だから違うんだ。
こんなダイレクトじゃ興奮するはずが……
うん、してる。
してますとも!
しないはずないだろ。
生粋のチラリズマーの俺を興奮させるとは……流石黒パン○ィの破壊力は違う。
だが、冗談はここまで。
「どうでもいいが下すぞ、遊んでる場合じゃないからな。」
俺たちが降りた先は、人が二人通れるくらいの幅の通路だった。
そして、通路の先の暗闇から、何が近づく音が聴こえてくる。
ガシャン ガシャン ガシャン
金属が歩く音だ。
なのですぐ気づいた。
「ちびうさの父親か?」
俺は一応、薄らと見えてきたヘルアーマーに声をかける。
「あぁ、時間通りに来たな。ではついてきてくれ。この先は道が広くなっていて、そこを人間が通ると魔物が襲ってくる。気をつけろよ。後、俺のことはマモルと呼んでくれてかまわない。」
「あぁ、わかった。注意する。ここから魔物が出るらしいから気をつけるぞ。」
俺がイーゼに言うと、何故かイーゼが驚いた顔をしている。
「どうした? イーゼ?」
「いえ……そうですか。サクセス様にはあの魔物の声が聞こえるのですね? 私にはサクセス様の独り言にしか聞こえませんでしたので……。でも、わかりました。気をつけて進みましょう。」
どうやらマモルの声が聞こえるのは、やはり俺だけのようだ。
「マモル、この通路はどのくらい歩けば、城の地下にたどり着けそうなんだ?」
「そうだな、私だけなら十五分もあれば着く。だが、人間と一緒なら戦闘もあるだろうし三十分と言ったところか。ここは、デモンズアーマーやガーディアンと言った強い敵が出る。気をつけてくれ。」
「ガーディアンなら前に倒した事がある。ということは、ボスクラスのモンスターがウジャウジャ出てくるって事か? デモンズアーマーは初めてだ。」
「え? ガーディアンとデモンズアーマーが出るのですか?」
俺の言葉のみで、イーゼは俺とマモルの会話を察した。
「みたいだな、っと、早速お出ましのようだ。鎧が赤と黒で半々だな、強いのか?」
「はい、強敵です。かまいたちという風の技を使うので気をつけて下さい。でも、今のサクセス様ならきっと余裕です。」
イーゼはそう言うと早速魔法を唱えた。
【ワザトーン】
デモンズアーマーの体が球体に包まれる。
成功だ。
「でかした! イーゼ!」
俺は、その隙に一気にデモンズアーマーに詰め寄り、はじゃのつるぎを振るった。
ズバっ!
どうのつるぎと違って切れ味抜群である。
デモンズアーマーは体が真っ二つになり、赤色の鎧と黒色の鎧に分かれ、霧散した。
俺はあまりにも呆気なく倒せたものだから、一瞬油断してしまう。
ヒュン!
突如、俺の死角から聞こえる風切り音。
俺たちが進んでいた道は、一方通路に見えて、所々十字路になっていた。
俺はデモンズアーマーに接近する際、丁度その交差点に侵入してしまったようである。
左方にいたデモンズアーマーが俺にかまいたちを放った。
しかしその時……。
バチっ!!
俺に真空の刃が当たる前に、何か金属のような物に当たった音がした。
「油断するな。君とて不意打ちで攻撃を喰らえば万が一もある。」
俺と敵の間に立っていたのは、ヘルアーマーのマモルだった。
マモルが真空の刃を緑色の盾で防ぐと、イーゼが放った上級炎魔法【メラメラゾーン】が敵を焼き尽くす。
「マモル! お前戦えるのか?」
「当たり前だろ? 昨日のように霊体ではない。それに、俺はこれでも結構名の知れた魔法戦士だったんだぞ。」
マジか。
魔法戦士……確か上級職だな。
マモルが戦えるのなら、前衛二人に後衛一人、これなら……いける!
「凄いな。闘技場で負けない訳だ。まぁバレないように手加減してたのだろうけど。よし、イーゼ。マモルが戦列に加わる、陣形を組んで進むぞ。」
「はい、サクセス様。それでは私も攻撃魔法で援護させて貰います。」
その後もデモンズアーマーやガーディアンが二匹、三匹とわらわらと現れたが、ことごとく俺たちのパーティに駆逐されていく。
即席パーティであったものの、マモルが熟練の冒険者だったのもあり、かなりバランスのいいパーティとなった。
「大分いい感じだな!」
「はい、流石サクセス様です。マモルさんも会話はできませんが動きに隙がありません。いいパーティです。」
イーゼもマモルの動きに関心している。
しかしマモルだけは違った。
「もうすぐ地下の牢獄に繋がる扉に着く。しかし、そこはドーム状の広間になってるから敵が多い。油断はするな。」
マモルは、油断している俺を叱咤した。
流石ベテランの元冒険者は違う。
まぁ今はモンスターだけどな。
そして、俺たちはそのまま広間まで進むと、急にマモルが立ち止まって呟く。
「まずい……なんで奴がここに……。」
その広間の中央に立っていたのは、巨大な剣とボウガンを持った謎の機械であった……。
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