第42話 伝説の装備

「サクセスさん! イーゼさんの意識が戻りました!」 



 俺が魔王の影を倒して、冒険者カードを見ていると後ろからシロマの声が聞こえる。

 どうやらイーゼは無事回復したようだ。

 俺は急いでイーゼに駆け寄る。 



「イーゼ! 大丈夫か!? まだ苦しいところはあるか?」 


「はい、おかげさまで大分良くなりました。」



 そう言ってイーゼは立ち上がろうとするも、やはり消耗が激しいのか、フラついて俺に寄りかかった。 



「無理するな、イーゼ。お前のお陰で俺は助かった、ありがとう……。でもな、俺の為に命をかけないでくれ……お前が死んだら俺は一生後悔する。だからもうあんな事はやめてくれ、お願いだ。」



 俺は、イーゼを受け止めながら優しく伝える。 



「サクセス様は流石です。やはり私のサクセス様です。魔王と名前のつく敵を倒せるのは、勇者しかいないと言われておりますわ。それを倒したのですから、周りがどう言おうと、私にとって勇者はサクセス様です。それに、もしも私が死んでサクセス様に一生思ってもらえるなら、それも悪くないですわね。」


「馬鹿! そんな事俺は、絶対に許さない! 俺が絶対守ってやる!」 



 そう言って、俺はイーゼを強く抱きしめた。

 俺はもう二度と、仲間を危険な目には合わせたくない!


 しかし、本当にイーゼは無茶をする。

 二度とやめて欲しい……と言っても、またやるだろうな。

 俺が同じ立場でも多分そうする。

 ならば、俺は強くならなければならない。

 もう誰も傷つけない為に……。 



「ほら、もういいでしょ! 二人とも離れて! それより宝箱を確認するわよ。」 



 リーチュンが俺とイーゼを引き離す。

 でも、その目には涙の跡が見えた。

 どうやらリーチュンも、大分心配していたようだ。


 それにしても、少し早いんじゃないか?

 もう少しラブシーンをさせてくれても……。

 今の雰囲気なら二度目のキスも許されたかもしれないのに……。

 いかんいかん!

 まだやる事が終わってないじゃないか。

 よし、財宝の確認だ!



「イーゼ……」 


「インパルス……サクセス様に抱いてもらって回復しましたからこの位は平気です。」


 イーゼは、俺が名前を呼んだだけで、俺が何を言おうとしたか察したようだ。

 やはり、イーゼば凄い。

 だがこれだけは言わせてくれ!


 俺はまだ抱かせてもらってないぞ!



「お、おう。あっ、両方青だな、みんなで一緒に中身を確認するか。」



 俺がそういうと、全員で宝箱の前に立つ。 



「開けるぞ!」



 俺が宝箱を開けると、中に入っていたのは……黄色い丸い玉だった。


 なんだこれ?


 俺は不思議に思い、その玉に触れる。



「イエローオーブ?」


「伝承で聞いたことがあります。六つの色のオーブを集めることで、空から龍が現れて願いを叶えてくれるとか……。昔の勇者はその龍に乗って魔王と戦ったようです。」



 俺が呟いた疑問にシロマが答えた。


 なるほど。

 つまりこれがアバロン王がマンダ神殿に運んでいた宝か。

 今、全て繋がった。

 だから、魔王が先手を打ってきたわけか。

 つまり他のオーブも魔王に狙われているかもしれない。

 これはアバロン王に伝えないとな。 



「じゃあもう一個はアタイが開けるね!」


 リーチュンはそう言うと、もう片方の宝箱の蓋を開けた。

 安全とは言え、勝手に開けないでほしい……。


 するとリーチュンがヤバイ物を宝箱から取り出す。 



「なんだろこれ? 紐?」



 そ、それは……。

 まさか……あの伝説の……。 



「か、貸してくれリーチュン! ダメだ! これはダメなやつだ!」



 俺は慌ててリーチュンからそれを奪った。

 そのアイテムは……。



【やっべぇ水着】 防御力3 スキル 魅了 レアリティH  



 初めて見た。

 レアリティがアルファベットだぞ!?

 まぁ、それはいい。

 それよりも……これは……。


 昔親父から聞いたことがある。

 伝説の装備について……。

 この装備は女性が装着すると、目の前の男を狼に変えてしまうらしい。


 こんな素敵な……こほん、やばいものをうちの女神に持たせるわけにはいかない。

 アバロン王は、一体何を考えてるんだ!

 俺と気が合いそうだっぺ!



「サクセス様、よろしければ私にも、それを見せていただけませんか?」 


「ダメだ! イーゼなら尚更ダメだ! これは俺が後で直々に王に返す。王の誇りは俺が守る!」



 まだ会ったことのない同志よ。

 俺はお前の誇りを守りきってみせるぜ!

 だから、いつか貸してこれを貸してくれ。



「サクセスさん、鼻血が出てます。大丈夫ですか!?」



 童貞には刺激が強すぎたようだ。

 見るだけで負傷させるとは、流石は伝説の装備。


 するとリーチュンが俺の服を引っ張る。 



「今更だけど、この装備どうしたの? 凄い格好いいじゃん!」 


「これな、なんか熟練度が溜まったとかで、装備が進化したらしい。俺にもよくわからん!」


「私にもわかりませんが……素敵ですわ。どんな装備をつけてもサクセス様は素敵でしたが、今はもう……たまりませんわぁぁ!!」



 イーゼが通常の変態に戻った。 



「真っ白い装備ですね。サクセスさんにお似合いです。」



 シロマは嬉しい事を言ってくれる。

 俺はまだ誰にも踏まれてない雪だからな……って!

 童貞馬鹿にすんな! 



「それと、俺の職業が聖戦士になっているんだが、誰か知らないか?」 


「すいません、聞いた事がありません。似たような職業だとパラディンという上位職はあるのですが……多分それとは別ですね。」



 どうやらシロマも知らないらしい。

 それなら当然俺にわかるはずがない。

 俺の知識は、親父から聞いたエロ話だけだ。


 俺たちがそんな話をしていると、塔の外から馬が駆ける音が聞こえてくる。



「思ったよりも早いな、多分アバロン軍だ。早速下に行って出迎えよう。」



 こうして俺達は、塔を降りていくのであった。

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