第4話 ルルーの酒場

 あの後俺は、スライムを10匹倒したところで帰ることにする。 

 日が沈みかけてきたからだ。 

 この大草原は昼と夜で現れるモンスターが違う。 

 夜になるとカラスの化け物や、凶悪なスケルトンが出るみたいなので今はやめておいた。 



 べっ別にビビってねぇし!  

 飯とか用意してないから仕方なく帰るだけだし! 



 とまぁ、いつもの強がりですわ。 

 俺は、レベルが上がって格段に強くなった。 

 だがしかし所詮はレベル2。


 今のところ、夜のモンスターと戦う理由もないし、レベル5になるまではスライムキラーとしてスライムを狩り尽くしてやろうと思う。 


 そんなこんなでやっと町に到着! 

 今日は長かった……。

 

 さっそく俺は、冒険者ギルドで魔石を換金しに行く。


 今日は、初日にも関わらず大量だ! 

 魔石が10個もある。

 いくらになるかなぁ~? 


 一個5ゴールドなら50ゴールド。 

 まぁかなり低く見積もって一個1ゴールドでも10ゴールド。 


 うん、宿屋代にはなるな。 


 俺は軽い足取りでウキウキしながら冒険者ギルドに入った。 

 

 しかし、なんか様子が違う。 

 この雰囲気……酒場だ! 

 冒険者ギルドの中は、昼間何もなかったスペースにテーブルや椅子が置かれ、強面の人たちが顔を赤くして騒いでいる。



「うん。明日にしよう……ちょっとこの雰囲気無理。」 


 俺が場違いな雰囲気に踵を返そうとした時、聞き覚えのある声で呼び止められた。 



「坊や、無事帰ってきたんだねぇ、怪我はないかい? どうせ今日は何も倒せなかったんだろ? 一杯奢ってあげるから入りなさいな。」 


 

 ルルーさんである。 

 昼間と違うルルーの姿は完全に酒場のママ。



「は、はい。えっと……ここ冒険者ギルドでいいんですよね?」


「ははは、なるほどね。そうさ、ここは冒険者ギルドに間違いないさね。ただ、夜は酒場になって、みんなここで冒険の疲れを癒すのさ。さしずめルルーの酒場ってとこさね。」 


「そ、そうなんですね。ビックリしました。 間違えちゃったかと思って帰ろうと……。あっ! ところで、魔石の換金って今でもできますか?」


「ほおー、こいつはたまげたね。初日に単独で倒せたかい。てっきり逃げ帰って仲間でも探しにきたのかと思ったさね。どれ魔石を見せるさね、換金してあげるから。」 



 そう言われて、俺は青色の小さな魔石を10個差し出す。



「あらま! 10個もかい! あんた見かけによらずにやるさね! ちょっと待ってな。はいよ! これがあんたの今日の稼ぎさね。」 



 そう言ってルルイーダさんは俺にゴールドの入った布巾着を渡してきた。



「中身、見てもいいですか?」


「当たり前よ、ちゃんと確認するさね」 



 ジャラジャラ……。 


 

 ひー、ふー、みー……ご、5枚…1ゴールド硬貨が5枚……。

 つまり5ゴールド!? 

 マジで!? 

 何かの間違いじゃないか? 



「あの~、5ゴールドであってますか?」 



 俺は恐る恐るルルーさんに確認する。 



「少ないかい? スライムの魔石は2個で1ゴールドさね。」 



 ガーン! 

 あれだけ必死に倒して5ゴールド。いくらなんでも世知辛すぎるだろ……。



「そ、そうだったのですか……。わかりました。」 


「ほら、しけた顔しなさんな。今日は初討伐祝いで一杯奢ってやるさね! ほれ、飲みな!」 


「あの……でも俺。お酒飲んだ事無くて……。」


「私の酒が飲めないってか!?」 



 優しかったルルーの顔が般若の面に変わる。 

 それを見て焦る俺。 

 すかさず飲み干す事を決意した。 



「はい! いただきます! ありがとうございます!」 


 

 ゴキュゴキュゴキュ! 

 プファ~!!



「い~い飲みっぷりさね! それはアタイの特性ビールよ。もっと味わって飲みな!」 



 渡された飲み物は苦かった……。

 が、なんとなく一気に飲まなければならないと思い、飲み干してみると、意外にも喉越しが良い。 

 一口目は苦いと思ったが、飲み終わってみるとなぜか旨いと感じた。



「ぷふぁ! ごちそうさまです!」 



 あれ? なんだろう……。

 ふわふわする。


「まだ飲むかい? 二杯目は金取るよ。一杯5ゴールドさね。」


「いえ、一旦宿に帰りたいとおもいまふ……。」 


 

 若干俺の呂律がおかしい。



「そうかいそうかい、まぁ今日は疲れただろ、ゆっくり休みなさいな。」 


「はひー、ありがとぅーございまふ。」



 俺は、フラフラふわふわした足取りでルルイーダの酒場を後にし、なんとか宿屋に辿り着いた。

 そこで10ゴールドを支払い、部屋に入って直ぐにフカフカの布団にダイブする。



「もうのめにゃい……。」 



 こうして俺の冒険者初日が終わるのであった。

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