第156話 長政の焦燥

「なぜだ!」

浅井長政は荒れていた。

せっかくの馬揃え、意気揚々と先頭を行くも、結果は・・・誰も見ていない。


家臣に調べさせたが、民の中で、浅井の名前を上げる者はいなかった、


話に出てくるのは信長殿の畏怖、まあこれはいい、元々その為の馬揃えだ。


そして、上杉景虎の威容・・・これは確かに長政自身も感じていた、さすがに天下に武勇を轟かす御仁だと納得出来る所もあった。


だが、土御門ヒロユキ、奴はなんだ!

都の民から華やかだ雅だと持て囃され、いい気になって・・・

奴は馬揃えを何だと思っているんだ!!

そもそも妻を馬揃えに参加させるとは何事だ!

信長殿の美人な妹を嫁にしていい気になりおって!!


長政は市の姿を思い出し少し頬を染める。

馬揃えを終えたあとチラリと見えたその姿は満面の笑みが可愛らしい女性であったな。

あれ程の人を妻にしたなら・・・


ちがう、そうじゃない。

長政は首を振り、頭に浮かんだ者を打ち消そうとする。


「長政様、土御門殿より使者が参り、私的な酒宴への誘いを持った来ましたが、如何になさいますか?」

「酒宴の誘い?私と土御門殿はそれほど仲がいいわけでも無いだろう。」

「それが信長殿と景虎殿が参ったので長政様も参加なされないかとのことでした。」

「なっ!」

三人の仲が良い事は理解出来ていた、しかし、知ってしまうと疎外感を感じる。


「わかった、御二方がおられるならすぐに参ろう。」

長政は仕度を整え、ヒロユキがいる砦に向かうのだった。


「ヒロユキ殿、お招きに預かり感謝する。」

長政は口では礼を言うものの疎外感から少し不機嫌そうに話している。

「長政殿、お招きが遅れて申し訳ない、お二方が予定に無く来られてしまいましてね、折角ですから長政殿もご一緒にと思ったしだいです。」

俺は理由を説明するも納得出来てない事が表情からわかる。


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