第143話 比叡山陥落
本堂につくと当代の当主、天台座主応胤法がそこで待っていた。
彼は皇族にあたる人物であり、この状況でも自分が害されるとは思ってもみない様子であった。
「帝の命令、ご苦労であった。」
何故か上から目線である。
「そなたの忠節は良きものじゃが、少々やりすぎじゃ、ここはのぅ、皇族のワレが管理しておるのじゃ、田舎に堕ちた土御門にはわかるまい。」
俺を馬鹿にする声に側の景久が殺気立つ。
「景久、落ち着け、お前はあの愚か者より下なのか?」
「ヒロユキさま!・・・いえ、大丈夫です。」
景久は怒りを何とか抑え込む。
「これだから下々のものは良くないのぅ、して、土御門、これからワレをどうする気じゃ?」
「そうですね、このまま天台座主という訳にはいきませんから、まずは京の外れに屋敷を用意しますのでそこでゆるりとなさって下さい。」
「なんと、何故外れじゃ?中でも良いでは無いか。」
「一応勅書に逆らった立場になりますれば、すぐに中と言うわけにもいきますまい。」
「そうであるな・・・わかった、我慢しようではないか。
ただし、しかともてなすのじゃぞ。」
俺の頬を扇子でピチピチと叩き上機嫌で山を降りていく。
「ヒロユキ様!あのようなものいい許していいのですか!」
姿が見えなくなってから景久は俺に怒りを出して問いかけてくる。
「あれでも皇族だ、始末するには手順がいるんだよ。」
俺は景久以下、家臣達をなだめつつ、京の外れに屋敷を作り、応胤法親王を一時幽閉する。
ただ、幽閉とはいえ、彼の望む物を運び込む。
アレが食べたい、コレが食べたいとまるで子供のように欲しがる親王に俺は用意してやる。
ときには女性をほしがり、一流の遊女すら用意する事があった。
そして、京中に噂を流す。
逆賊として寺は落ちたのに、そこのトップの天台座主は帝の親戚である事をいい事に反省する事なく、俺に命令を下し贅沢三昧。
その姿は見るに耐えないと話が伝わっていく。
そしてその噂は朝廷内にも伝わる。
「そのような噂が・・・」
帝は頭を抱える。
「残念ながら、朝廷の威信を汚す訳にはいきませぬ、どうかご決断を・・・」
公卿達に促され、応胤法親王は処罰される事になる。
罪は朝廷に歯向かった事による逆賊としての重い処分であった。
「なぜじゃ!なぜ、ワレが殺されねばならん、帝に帝に合わせてたも!
お合いにすれば、必ず命をお救いくださる。」
命令を持ってきた二条晴良に縋るように助命を願う。
「ヒロユキ殿、あとはよしなにお頼み申す。」
晴良は見るに耐えないと幽閉所をあとにした。
「応胤法さん、命令も出たのでご覚悟を。」
「い、いやじゃ!ワレは皇族なるぞ、ワレを殺せば天罰が下る!」
「坊主を殺しても天罰は無かった、比叡山を攻めてもな、じゃあ皇族を始末しても天罰なんかはない。」
「そ、そんな筈はない!皇族は神に連なる尊き血である!」
「ヒロユキ様、どうか私に。」
前原景久は捕縛した時から怒りを覚えており斬りたくて仕方なかった。
「いいのかい?一応皇族殺しになるけど?」
「構いません、ヒロユキ様への無礼許せぬものがあります。」
「わかった、斬れ。」
「はっ!」
景久は一歩ずつ近付いていく。
「や、やめよ、止めるのだ、来るでない!」
応胤法は後ずさりするがすぐに壁に当たる。
「お覚悟!」
「やめてたも・・・」
景久はあっさりと首をはねたが天罰が下ることは無かった。
こうして比叡山は完全に陥落してのであった。
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