第135話 謀略
降伏した後、俺は氏規とあっていた。
「氏規殿よく決断なされた。」
「お恥ずかしい限りです、どうか、民と兵達には寛大な処置を。」
「もちろんです。氏規殿にも手出しするつもりはありません、もう少し領内が落ち着いたら北条に帰ってもらって構いませんよ。」
「なっ!私が帰って良いと?」
「はい、私は伊豆を手中におさめるだけで、別に氏規殿の首が欲しいわけではありませんから。」
「・・・宜しいのですか?」
「ええ、暫くはゆっくりしてください。」
俺は氏規を韮山城で軟禁状態にして、伊豆の制圧を行った。
多少の抵抗はあったが一先ずは統治に成功する。
「氏規殿、もういいですよ。北条までお帰りください。」
「忝ない、再び戦場でお会いしましょう。」
氏規は小田原に向かい去っていった。
「よろしかったのですか?」
服部正成は聞いてくる。
「いいよ、それに氏政に伊豆を捨てて帰って来た弟を受け入れる度量があるか、確認できるしね。」
俺は伊豆を失った氏規を氏政が受け入れる事はないと予想していた。
「それはどういう事でしょうか?」
正成は不思議に思っていた。
「何も要求が無く釈放された弟を信用出来るかな?
もし、信用するなら氏政の器量は中々の物がある。
対峙するならてこずるかもしれない。
でも、氏規を信用出来ないと遠ざけたら、小田原城は荒れるだろう。
何せ一族が裏切ったと家臣に伝えるようなものだからな。」
俺は伊豆を統治しつつ、北条の動きを見る。
一時期は援軍に来るような動きを見せていたが、韮山城の陥落を聞き、出兵を止めたようであった。
「氏規、何か言うことはあるか?」
氏政は無事に帰ってきた氏規を捕縛して取り調べをしていた。
「兄上、私は裏切ったりしておりません!」
「ふん、ならば何故お前は解放させたのだ、命を惜しんで北条家の秘密を話したのか?」
「私は何も話していません!」
「黙れ!お前が無傷で解放された事が証拠だ!」
「それは・・・」
「ええい!氏規を小田原から追放しろ!」
「兄上!」
「裏切り者を城に入れておれば戦う事も出来ぬ!」
氏政の一存により、小田原城から追放された氏規は八王子城をおさめている一族の長老、北条幻庵の元を訪れていた。
「玄庵さま、かくまっていただき感謝します。」
「気にするな、氏規、早まった真似はするでないぞ、必ずや誤解は解ける。
ワシも協力しよう。」
「ありがとうございます。」
氏規は幻庵に涙を流して感謝をしていた。
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