第67話 上杉景虎
「この状況で突撃してきたのか!
業盛、長槍部隊で防戦、無理に戦うな。
綱秀は弓にて応戦、景虎の部隊の数を減らせ。」
俺は長野業盛、三田綱秀に防戦を指示する。
信繁の軍が前方を打ち破りそうな今、此方が無理に攻勢に出てやり合う必要はない、上杉景虎を受け止めつつ、相手の後方に打撃を与えればいいのだ。
「元忠は左翼五百の騎馬隊を指揮、景虎本隊以外の部隊の後方に攻撃を加えよ。
無理はしなくていい、相手の注意を後方に来るようするんだ。」
鳥居元忠に相手の後方に攻撃を仕掛けさせる。
これにより挟撃が完成する。
上杉軍の被害が増していくが・・・
「ヒロユキ様、敵本隊の動きを止められません。景虎が此方に参ります!」
「なっ!業盛はどうなっている?」
「未だ上杉本隊とやり合っております!
ただ、一部の兵が此方に・・・」
すると俺の前に百騎の騎馬を連れた男が現れる。
「そなたが土御門ヒロユキか?」
「そうですが・・・あなたは?」
「上杉景虎である、そなたの戦いぶりは見事である。」
「景虎殿でしたか、なるほど流石の武勇にございます。」
「これぐらい雑作も無いことだ。
しかし、そなたもよくこの戦に間に合ったな、遠江におったのであろう?」
「主の危機に間に合わないのは情けないですからね。」
「ふむ、いい心意気だ。このまま散らすのが惜しいぐらいだ。」
「そうですか、ならこのまま越後に帰ってもらえませんかね?」
「そなたを斬ったら考えるとしよう。」
「斬られるのはいやですね、逃げさせてもらいますね。」
俺は上杉景虎が乗っている馬を暴れさせ後方に下がろうとするが・・・
下がる素振りを見せた途端、矢が飛んで来て俺の足を貫く。
「ぐっ、いてぇ・・・」
俺は痛みで動きが止まる。
「ヒロユキ様!」
俺の周りを奥山公重、林崎重信が守りを固める。
「逃げる真似をするとは些か武人の心意気が無いのではないか?」
上杉景虎が馬から降り、いつの間にか弓を持っていた。
「重信!ヒロユキ様を連れて後方に下がれ、此処は俺が引き受ける。」
奥山公重が刀を構え、上杉景虎に対峙する。
「わかった、公重、死ぬなよ。」
「難しい話だが・・・俺は簡単には死なん。
それよりヒロユキ様を頼んだぞ。」
奥山公重の言葉に林崎重信は俺を抱え後ろに下がる。
「逃がさん!」
「行かせるか!」
上杉景虎は俺を追いかけようとするが奥山公重と俺の本陣の兵三百が立ちはだかる。
俺の本陣の兵はマサムネが鍛えた精鋭だった。
奥山公重と共に上杉景虎の供廻りにも負けること無く、時間を稼ぐ。
それにより俺の姿が見えなくなり、上杉景虎はタメ息をもらした。
「仕方あるまい、皆、引き上げるぞ。」
上杉景虎は俺の首を諦め撤退を開始する。
軍を反転させ、挟撃を受けていた部隊を難なく助けて引き上げて行く姿は美しくもあった・・・
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