第37話 景久の奮闘

信綱は纏まった兵を連れてヒロユキがいる本陣を目指す。


「本陣を落としたら勝ちだ!神を詐称するものを討ち取れ!」

信綱が先頭に立ち、敵を斬り士気を高めている。

流石未来で剣聖と呼ばれる男。

あまりの武勇に道が切り開かれる。


「見よ、あれが本陣だ!突き進め!」

信綱の目標はヒロユキの首ただ1つだった。


「や、やべぇ・・・何あれ?」

あまりの進撃の早さに驚いていた。


「ヒロユキ様、お下がりください!皆、ヒロユキ様を御守りするぞ!

我に続け!!」

景久が俺の前に出て、信綱に立ち向かう。

本陣には飯田から連れてきている兵を配置していた為に忠誠心は高い。

景久の踏ん張りで何とか持ちこたえていた。


「景兼!あの小僧を相手しろ、ワシはその間に将の首をとる。」

「はっ!お任せあれ。」


踏ん張る景久の前に現れたのは上泉信綱の一番弟子といっても過言ではない、疋田景兼であった。


「若いのにいい腕だ、斬るには惜しいがこれも戦場の習い覚悟致せ。」

「此処は通す訳には行かない!」

「いい覚悟だが師匠が既に向かっておる。悪いことは言わん、降伏いたせ。」

「断る!お前を斬って、その師匠も討ち取って見せる!」

「若いのう、良かろう、相手致す!」

景久と景兼の戦いが始まる。


「くらえ!」

景久の初撃はかわされ、逆に斬りつけられる。

「くっ!」

景久は何とかかわせたが、どう見ても景兼の方が上手であった。

それから何度も斬り合うが景久が景兼に手傷をおわすことはできなかった。


景久は劣勢にも関わらず決着を急ぐあまり大振りが多くなっていた。

そこを景兼につかれ、徐々にケガが増えていく。

「はぁ、はぁ・・・」

ついに景久は膝をついた、血を流しすぎて、意識を失いかけていた。


意識を失いそうになりつつも刀を離さないその姿に景兼は感嘆する。


「誇るが良い、その歳でそこまでの剣技を身に付けるとは・・・今、楽にしてやろう。」

景兼は止めをさそうと近付く・・・


景久の間合いに入った瞬間だった。景久の刀が景兼に迫る。


景兼はその者の視線や意思を感じとり太刀筋をよむ極意を得ていた。

それゆえ、景久が無意識で繰り出した一撃に反応が遅れた。

そして、それが致命的だった・・・


景久が繰り出した横凪の剣が景兼の腹を切り裂く。

「なっ、ば、馬鹿な・・・」

景兼は死にかけの状態だった景久の太刀筋を見切る事が出来なかった。

最後に見たのは刀を振り抜いたまま意識を失っている景久の姿であった。

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