第30話 開発

俺は塩浜を作ったあと、猪を使い開墾を進めて行く。

金山の発見もあり、資金を充分回してもらうことが出来た為に、三河の開発も進む。


「どうだい、守綱これでも信用出来ないかな?」

「いえ、ありがとうございます。

三河の民に未来を感じられます。」

「そうか、一応養子も信玄公に認めてもらってるから身の安全も大丈夫だろう。

ただし、武田に歯向かう真似は止めてくれよ。」

「それは・・・わかってます。」

「松平の再興はちゃんと考えるから、せめて竹千代が元服するまでは大人しくしておいて。」

「はっ!」


三河が開発されていくに従って、元康家臣団も徐々に武田家に士官してきた。

本当は俺の所に欲しかった家臣だったが、結局直接の傘下は渡辺守綱、服部正成、榊原康正、鳥居元忠、本多正信の5人だけだった。


この頃になると義信にも竹千代の正体はバレており、タメ息混じりに認められていた。

ただ、管理はちゃんとしろと念は押されたが・・・


松平の家臣の参入で、開発は更に進む、住民の協力を得やすくなった事もあり、まだ予定していなかった治水工事や飯田までの道の整備も行われていた。


また、それならばと俺は吉田の地に大型の港の建設も行う。今後の開発も考えて貿易は必要だからである。


急ピッチで三河は変貌を遂げていく。

その開発を行っている義信の名は広く名前が届くようになり、今や軽んじる者はいなくなっていた。


「ヒロユキ殿、誠に感謝致します。」

義信は改めて頭を下げてきた。

「いえいえ、これも義信様のお力ですよ、俺はそれに力を貸しただけです。」


「いや、これほどの事は私には出来なかった、どうだろう、これからも私の師として三河にいてくれないか?」


「それは出来ませんよ、私は信繁様の家臣で飯田の城代ですからね、此処に滞在し続けるのも問題がありますし、多分田植えが終われば信玄公に呼ばれる事でしょう。」


「父上にか?」


「はい、戦争に駆り出されるでしょうね。」


「上野の援軍か?話しは聞いているがヒロユキ殿は呼ばない予定だったと思ったが?」


「たぶん呼ばれますよ、それの準備もしたいので田植えの前には帰国したいですね。」


「うむ、残念だが、そのような話なら仕方ないのか・・・」


「そうだ、もし俺の家臣で滞在を希望するものがいたら残していって構いませんか?」


「わかった、面倒はちゃんとみる、しかし、大丈夫なのか?どうせ松平の旧臣の話だろ?」


「ええ、約束ですので、彼等のお陰で開発で楽が出来ましたからね。」


「確かに、武田に仕えてくれたお陰で戦力も上がったからな、今なら安城、刈谷も落とせるのではないか?」


「織田に手を出すなら一気に最後までいくつもりでやるべきです。1つ2つ城を落とした所で、消耗戦になってしまいます。

今は軍備を整え、隙を見せない事です。

何、開発は上手くいっているのです、二年か三年すれば三河単独で尾張を狙う事も可能でしょう。」


「ヒロユキ殿の言葉だ、従おう。ただ戦の時は来てくれるかな?」


「その時によりますね、もしかしたら別の戦場で戦っているかも知れませんから。」


「そうだな、ヒロユキ殿ならあり得るな。」


「俺は平和に過ごしたいのですけどね・・・」


口は災いの元、義信と話した数日後、信玄から出陣命令が来るのであった・・・

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