四章 夢の後先
第22話
「げっ」〈サークレット〉の救助船から帰還し、艦橋にやってきたクレアは〈プロテージ〉を前にそう漏らした。「なんでこれがここにいるの?」
「その問答は君が戻ってくるまでの間に」エディがぼくとフランシス、それから格納庫から戻ってきたマクスウェルを一瞥する。「こいつらが済ませたよ」
「何でいるの?」と追及の視線がぼくに向く。
「利害の一致だとさ」
「利害? 利害って?」
クレアは〈プロテージ〉を警戒しながらぼくの側にあるソファに腰かけた。
「それをこれから話してくれるんだって」とフランシス。「……〈サークレット(あちら)〉の船はどうだった?」
「散々ないわれよう。あることないこと、話が飛び交ってる」
「おれたちの話か?」とマクスウェル。
「それ以外に何があるの?」
「生きていく土台が全部失われたんだもの」フランシスが口を開いた。「どこかに理由を……誰かに責任を求めたいんでしょう。得体の知れないものに怯え続けるよりも、何が原因か、誰が敵なのか、解っていた方がずっとマシだもの」
「その通り」と今度はエディだ。「自分たちの手に負えないものを見なかったことにして、現実を自分の理解の範疇に歪める。ぼくたちはそのための仮想敵ってわけだ」
「さあ」とマクスウェルは声を張った。「お嬢様が仕入れた新情報を聞いて、心変わりをした奴はいないか?」
「何の話?」
マクスウェルは冷蔵庫から酒瓶を数本まとめて取り出しながら答えた。
「聞いて驚け。生き残った連中からは疎まれて、恨まれてるっていうのに、今度は盾になろうと言い始めたんだ。こいつらは」
マクスウェルは瓶を豪快に煽った。
「とんだお人よしの集まりだよ」
「あれを呼び寄せたのは、ぼくたちだ」ぼくは〈プロテージ〉を見る。「ぼくたちの無闇なメッセージが、連中の目に留まった。……そうなんだろう?」
〈プロテージ〉が首肯すると、マクスウェルは舌打ちして空瓶を〈プロテージ〉に向かって投げた。空瓶は〈プロテージ〉の手前に落ちて、彼女(?)の足元を転がっていく。
「命懸けでやっただろう。他の誰よりも、死にもの狂いだった。おれたち以外の奴らは?」
「こうなったのは彼らのせいじゃない」
「おれたちのせいでもない」
いい合うぼくたちの脇でクレアとフランシスが目を合わせて溜息した。
「はき違えるなよ、カイル。元凶は、あの〈グリッター(デカブツ)〉だ。あの〈デカブツ〉は、あいつの意思で以って、〈ミグラトリー〉をぶち壊したんだ」
「声を荒げるのも、恐怖の現れだ」とエディ。「あんな光景を見せられてビビるな、なんていうつもりはないが、ぼくたちも理解しよう。あの連中のこと」
場が収まったのを確認すると、エディは〈プロテージ〉に目配せした。
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