チーム花弁の壁
マネージャー
「あらあなた、丁度良かったわ」
「なんだかお姉様に呼ばれた気がしたんです!」
「やっぱり私達繋がり合ってるわね。ふふ」
「でへ、でへへ」
蜘蛛君と写本の製作に取り掛かろうとした時、なんだかお姉様に呼ばれた気がしたので教室に戻ったが、どうやら完璧にその勘は当たっていたらしい。これが夫婦の絆……!
「佐伯お姉様達のチームの事ですか?」
「ええそう」
どうやら用件もズバリと当ててしまったらしい。やはり夫婦の絆パワー。でへ、でへへ。
おっと考えが逸れた。俺とお姉様が話しているのは、戦闘会の団体競技にチームとして参加する事となった、佐伯お姉様、橘お姉様、そしてマイフレンド藤宮君の事。もっと言うなら、そのチームにマネージャとして俺とお姉様も参加する事となったのだ!
「まあ、飛鳥の方は放っておいても大丈夫そうだけどね」
「はは、ははは」
通常マネージャーの仕事は、訓練のサポート、スケジュール管理、対戦相手の情報収集と解析、千本ノックからエースとの内緒のお付き合いまで多岐に渡り、今年から始まった集団戦闘とはいえ、上級生の強豪チームには早速マネージャーが付いているみたいだ。
このマネージャー、将来活躍するであろう推薦組のチームに対して、一般クラスの生徒が立候補している。うーん、卒業後の人脈作りとは大変だな。尤も、普段から推薦組を見下しているような名家出身の連中には、当然寄り付きもしないらしい。だからそんな奴等は、全部自分達でやらないといけないのだ。ぷぷぷ。ざまあ。
そして普通に佐伯お姉様がマネージャーを募集した場合、とんでもない事が起こるのは目に見えていた。それは当然……。
「私達、佐伯お姉様のマネージャーになります!」
これ、俺の発言ではない。
「ははは。気持ちは嬉しいけど、もう他の人に頼んじゃっててね」
「そんなあ……」
態々我がクラスにやって来た一般クラスの女の子達。そう、達である。通称佐伯お姉様親衛隊。これ、俺が密かに付けたんじゃなくて、クラスの皆さんも親衛隊扱いしている集団だ。皇帝の俺でさえ親衛隊はいないというのに、流石は佐伯お姉様だ。
ともかく、佐伯お姉様だけなら全く問題ないだろう。なにせ彼女達をマネージャにすれば全部やってくれる。
問題は、いや問題とか言ったら非常に失礼だな。うんうん。
問題は佐伯お姉様ではなく、橘お姉様と藤宮君だ。2人とも人付き合いが非常に苦手、を通り越して壊滅的だ。特に藤宮君は、佐伯お姉様親衛隊の中に放り出されると、次の日には別のチームを探しているだろう。
というか藤宮君は人付き合いが云々どころでは無い。橘お姉様は女性だから大丈夫だろうが、このチームに紛れ込んでしまった藤宮君は男である。つまりその次の日を迎える前に、親衛隊に君側の奸として闇討ちされかねないのだ。ローマのプラエトリアニかな?
「あなたは結構適正あるわよね」
「えっへん!」
佐伯お姉様に断られてしょんぼりしている小娘共に比べて、俺は非常にマネージャーとしての能力が高い。蜘蛛君達に行ったマネジメントもそうだが、情報分析と言う点において非常に役立つこと間違いなしだからだ。
なにせ生まれながらにして邪神、ナチュラルボーンイビルゴッドな俺は、嫌がらせに掛けて他の追随を許さない。つまり、相手の嫌がる事を進んでやりましょう。という事だ。悪い意味で。
その上邪神イヤーと邪神アイを兼ね揃えているとくれば、もうこれは完璧と言う他ないだろう。という訳で対戦相手諸君、悪いがトラウマをほじくり返させてくれたまえ。これもお姉様方とマイフレンドの為なのだ。あ、流石に下剤を盛る盤外戦術は取らないから、そこは安心してくれたまえ。マジの真剣勝負なら毒盛るけど。
「とりあえずは、部室を取るとこまで頑張ってもらいましょうか」
「全力で応援します!」
この戦闘会の集団戦、勝てば勝つほど設備のいい部室を与えられるらしい。今のとこ一年生で部室を持っているチームは無いが、最速は我がチームで間違いないだろう。そうなれば色々と資料も集めて置けるので効率が良くなる。
「貴明、そろそろの筈だ。見に行こう」
「そうだね藤宮君! お姉様ちょっと行ってきます」
「ええ。私は飛鳥と橘と話を進めてるわ」
考え事をしていると藤宮君に誘われた。お姉様に断りを入れてから、目指すは掲示板の下だ。
「さて、相手の学年と数は……」
「僕は1個上で5人と見たね。ついでに言うと癖のないバランス型」
「俺もそんな気がする」
その掲示板に、対妖異ならいくつかの選択肢が張られ、対人間の集団戦なら、相手のチームと構成が張り出されるのだ。
なお人間同士の集団戦について、当初学園長は戦闘会に組み込むつもりはなかったようだが、未だに人型が多い都市伝説系の妖異が、妙に全国的に増えているせいで、急遽試験的に行われることとなったらしい。
そんでもって佐伯お姉様、橘お姉様、藤宮君擁する我がチームは、一年の中では間違いなく最強チームで、まず同学年と当たる事はない。勝つことが分かっていて、しかも切磋琢磨するというには、少々実力に差がありすぎるのだ。はっきり言って、2年の平均チームよりも強いだろう。
だから
「やっぱり1個上で、しかも5人だね」
「ああ。それに全系統揃ってる」
だから学園長、もしくは担当者がこれくらいで丁度、もしくは様子を見てみようと思ったのだろう。
張り出されていた対戦相手は、1学年上の先輩方で、隙がないように全系統揃っていて、かつチーム上限一杯の5人であった。
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