正面戦力?

「火力はボク、支援は栞が担当するから、正面担当が欲しいんだけど、どうもいまいちピンとくる人がいなくてね」


 ははあ、つまりタンク役が必要なんですね佐伯お姉様。もしくは勇者枠。

 と言う事は!


「不肖この貴明、お二人の肉壁に!」


「だからそういうのは止めなさいと言ってるだろうに」


「ふみまへん」


 お二人の為なら、例え槍が降ろうとハンマーが降ろうと、肉の盾としてお守りする覚悟だったのだが、隣に座られている佐伯お姉様に、ほっぺたを引っ張られてしまった。でへ、でへへ。


「どうも自己犠牲精神にあふれてるね。どうにかしないと小夜子」


「全部ひっくるめて彼を愛してるから難しいのよ」


「ふおおおお!」


 お、お姉様ああああああああああああああ!


「はいはい」


 佐伯お姉様のみならず、橘お姉様まで呆れた様に俺とお姉様を見られているが、今ちょっと嬉しすぎてですね。でへ。でへへへへへ。


「理想は小夜子なんだけどね」


「ふふ。つまらないから出る意味もないし、出るなら一人で出るわ」


「だよねえ」


 流石ですね佐伯お姉様。確かにお姉様が盾役をすれば、最強の盾となって誰も突破できないでしょう。ただ、お姉様は最強の矛でもあるので、他の人とチームを組む必要が無いんですよね。


「もし全校生徒を相手にするなら呼んでちょうだいな」


「はは、流石の小夜子でも一人じゃ無理でしょ。無理だよね?」


「さあ?」


 佐伯お姉様、実はお姉様はお一人じゃなくてですね。お姉様がマジのマジになったら、ひーふーみーよ……お姉様と合わせて34か。おっとおしい。例え学園長含めて全教員と学生がお姉様に立ち向かっても、34-0でお姉様のぼろ勝ちなんですよ。


 お姉様とリムジンで初めてお話しした時に、僕の1000分の1以下と表現しましたが、言い方を変えると、全人類を呪える邪神ジュニアの1000分の1もお強いんですよね。それに式神が無い時の話なので、今はもっとお強いです。


 いやしかし困ったな。なんとかしてお姉様方の御力になりたいのだが、俺っち浄力を浴びると溶けちゃうんだよね。塩振りかけられたナメクジみたいに。ちょっと大げさに言っちゃった。とにかく、まず橘お姉様のバフを受けられない。そんでもって、攻撃手段は毛虫、ゴキブリ扱いの呪術以外無いときた上で、蜘蛛君たちの様に強い自我があるタイプならともかく、ほぼ自我が無い様な訓練符にはその呪術も通りが悪いと来た。


 これでお姉様方のお役に立つとか無理じゃね? い、いや、第二形態だ。第二形態の力を今の人間状態で使える様になれば、呪術を使った時と違って、排水溝から出て来たドブネズミの大群に対するようなリアクションはされないはずだ。


 あいやダメだ。見栄えのいい力は俺との相性最悪だった。じゃじゃ馬作り出してる時とか、全身火だるまになるかと思ったからな。


 ぐぬぬぬぬ。俺ではお姉様達の御力になれないのか?


 あ、そうだ。


「藤宮君とかはどうです?」


 思い出したのはマイフレンド藤宮君。彼は霊力と浄力を両方発動出せれば、オートリジェネ持ちの、くっそ硬い正面タンクとして、その上隙あらば超力と魔力で火力もこなせるという、一家に1人は欲しいスーパー異能者なのだ。


「考えたんだけど、彼とは接点が無い上に、あまりこういう事に興味が無さそうだからね」


 確かに藤宮君は一匹狼っぽい所がある。だが俺はマイフレンドとして知っているのだ。彼が、集団戦のチームに入り損ねて落ち込んでいる事を。孤高に見えるのも考えもんだね。


「大丈夫ですよ佐伯お姉様。不肖この四葉貴明がちょっと聞いてみますけど、藤宮君即食いつくと思いますよ」


「本当かい? 助かるよ」


 ◆


「参加する」


 ほらね。


「ちょうど俺も人を探していたところなんだ。貴明が良ければ誘いたかったのだが、学園で俗にいうところの訳ありのようだったからな」


「はは、はははは」


 どうやら藤宮君は俺を誘おうとしていた様だが、俺の事を配慮して声を掛けてこなかったらしい。


 ま、まあ、確かに、その、訳ありと言えば、えーっと、訳ありかな。邪神の息子で、かつその息子も邪神ってのは十分訳ありと表現できるだろう。それ以上の表現はないったらない。


「じゃあ、橘お姉様と佐伯お姉様に、藤宮君が参加する意志有りって伝えとくね!」


「ああ。よろしく頼む」


 ちょっと先走ってお姉様方を置いて藤宮君の所に来てしまったから、ちゃんと報告しておかないと。


「貴明もその気になったらいつでも言ってくれ」


「はは、はははは。そ、その時はお願いするよ!」


 やべえよやべえよ。何か勘違いされてるような気がするよ。俺、授業じゃいつでも全力で、実力を隠してる気はないのに。ちょっと巡り合わせとか運が悪かっただけなんだよ藤宮君。


 ただ、やっぱり呪術を使うのは隠さないといけないかなーって。なにせバレたら追放だよ追放。








 ◆


 それはつまり、呪い以外で何とかしたらいいという事だ。


 ふふ。まさかこの俺様に、修行パートなんてものが存在したとはな。


 さて、第二形態の力を人間状態で使えれば、橘お姉様と佐伯お姉様の御力になる事も出来る。まあ、制御をミスったらボンッになるけど些細な問題だ。


 では行くぞ! はああああああああああああああ! 第二けいたーーーい! でやああああああああああ!


 あ、ミスった。


 呪、呪力が逆流する!?


 ぎゃああああああああ!?


 ボンッッッッッッ


 ◆


「随分大胆にヘアースタイル替えたわね。何してたのか気になっちゃうわ」


「ちょちょちょっとイメチェンををををを」


 このアフロどうしよう……明日学校いけねえよ……。






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