世界の危険1
朝ごはん! お姉様の朝ごはん!
ん? テレビの速報?
『バチカンと異能研究所は、世界の危険の訓練符を使用しての訓練に同意しました。訓練の内容はメディアには非公開で行われ、早ければ来月中に行われると見込みとの事です』
「ぶーっ!?」
ごっほごっほ! またこの件でむせちゃった! いや、前回のは正確にはバチカンの件だったけど、これも似たようなもんだ早すぎるだろ!
「ふふ。世鬼でも大丈夫ってぶちあげちゃったから、世界中から突っつかれたのねきっと」
「そ、そうですね!」
やべえよやべえよ。どう考えても……俺は悪くない! 悪いのはどさくさに紛れて発表しちまえってやった胃に剣の所長だ。それがとんでもない化学反応起こしてしまったのだろう。結論。だからやっぱり俺は悪くない。
それにお姉様の言う通りバチカンは、世界、特にヒュドラ事件で被害の多かったNATO加盟国とギリシャから突っつかれまくったのだろう。お宅ら、初動はそりゃ仕方ないけど、世界中から異能者が集まってた第二次攻撃の時、ご自慢のカバラの聖人どうしてたの? あ、その時はいなかったんだった。なにせついこの間誕生した体だもんね。いやあ、実際戦ってるとこ見たいなーっ。て言われまくったに違いない。なにせNATOにはイギリスもいるのだ。絶対そうだ。確信がある。だからこんなアホみたいに早く話が進んだんだ。
はっ!? また香ばしい臭いが! これは、どうすんだよやっぱり黙ってた方がよかっただろって慎重派と、逆に考えるんだ。実際に世鬼を倒せられる戦闘力を、多分、持ってるんだから、これを機により一層勢力を拡大しようって発想をした行動派との過激な勢力争いの臭いだ!
「カバラの方は分からないけど、世鬼の方はどのくらいなんでしょうね? ねえ、あ、な、た」
「どどどどうなんでしょうね! いやあ、僕分かんないです!」
お姉さまそんな流し目をされたら僕はあああ!
ふう……。
実際、メタトロンかサンダルフォン。特にサンダルフォンがいれば何とかなる筈だ。その上でカバラの聖者の半数以上が居ればまず間違いなく勝てる。筈。筈筈言ってるのは、やっぱりカバラの聖者がどの程度の戦闘力を持っているかさっぱり分からないからだ。
それに最近、死者たちの記憶を見ながら確信したのだが、あの訓練符やっぱりヒュドラより強い可能性が非常に高い。強化しすぎたか……いや、補正掛けまくった協力者の皆さんが悪いのだ。もしカバラの聖者が負けたとしても俺は悪くない。
いやあ、訓練は非公開でよかった。バチカンの切り札とはそれ即ち人類の切り札の一枚なのだ。そんなのが万一負けた場合、世界中でパニックを誘発する恐れがある。
「でもタイミングが悪いわね。今日来てくれたらカバラと世鬼が見れたのに、カバラが来るのは来月だなんて」
「そうですねお姉様! はっはっは!」
お姉様には非常に申し訳ないのだが来月でよかった。なにせ今日は胃に剣の見学日なのだ。もしカバラの皆さんが負けてところを直接見てしまったら、俺のせいじゃないのに責任の一端を感じてしまうところだった。
まあその心配はないか! なんたってメタトロンとサンダルフォンが両方来てくれるはずなんだから!
◆
◆
◆
ところ変わって異能学園正門前のバスの中、ざわざわして今から向かう異能研究所について語り合っているクラスメートの皆さんがいた。それもそうだろう。なにせ世界でも5指に間違いなく入る霊的国防機関にこれから行くのだ。そこには最先端の技術や超一流の人材が集結しており、志高すぎる皆さんにとって、一生に一度は絶対に行かなければならない場所となっている。
「先生、一年A組全員揃いました!」
「分かった」
主席としてクラスの数を数え終わった俺が報告するのは、勿論我らがゴリラ、じゃなかった学園長だ。来月とはいえカバラなんて大物が来るのに、そのまま見学を続行できる当たり、やっぱりゴリラ脈、じゃなかった人脈もやべえな。
「では出発をお願いします」
「はい」
「何か面白い事があればいいのだけど」
「そうですねお姉様!」
学園長がバスの運ちゃんに声を掛け、ブラックタール皇帝とお姉様の異能研究所視察は始まったのである。
◆
◆
◆
「なに? 伊能学園の見学も今日だっただと?」
「はい所長。混乱でブッキングに気が付かなかったようです。学園側に中止を通達しますか?」
「そうしろ。全く、今忙しいと分かり切っているのになぜ許可を出した。担当者は一体誰だ?」
「担当者は確認中ですが、異能学園側は竹崎学園長が直接来るようです」
「なに? それは少し話が変わるな……。どう思う?」
「来客への事でしたら、かつての日本最強がこの場にいるのでしたら、十分な牽制と抑止力にはなるかと。竹崎学園長は海外にもその名が知られていますし」
「うむ、そうだな。よし、そのまま学生は担当者をつけて見学させて、代わりに竹崎をその場に呼ぶ事にする」
「はい。ではそのように」
「タイミングがいいのか悪いのか……」
「全くです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます