登校

「あなた起きて」


後5時間……むにゃむにゃ。


「起きてってば」


でへへ、お姉さまだめですよもう寝ないと。むにゃ。


「起きないと……」


起きないと?


「毟るわよ」


「おはようございますお姉さま!」


僕一体何を毟られるんですか!?


「おはようあなた。朝ご飯は出来てるわよ」


「すぐ行きます!」


わーいお姉さまの手料理だー!


「それと」


それと?


「全身艶がいいわね。ふふ」


え? 艶ですか? 全身? はてええええええええええ!?

ね、寝ぼけて変身してたあああああ!?


きゃあああああああああああああああああ!?



「ふふ。いよいよ学園生活、楽しみね」


「はいお姉さま! 僕はお姉さまと一緒ならどこでも楽しいです!」


「……もう」


朝一番に怪物形態で起きると言うハプニングがあったものの、のどかな春の陽気の中、お姉さまと手を繋いで伊能学園に向かう。昨日俺はスーツ、お姉さまは着物だったので初めて制服を着ての登校だが、なんというか制服かこれ? なんかの戦闘服なんじゃないかってくらい丈夫で運動性重視なんですけど。え? マジで学生なのに怪異と交戦してる現場に投入されるんですか? あと制服姿で照れてるお姉さまが可愛い。くぁわいい!


「あいてっ」


「また変なこと考えてるでしょ?」


またお姉さまに霊力でデコピンされてしまった。だがこの男貴明、宣言させて頂きます!


「お姉さまが可愛いって思ってました! 決して変な事ではありません! あいてっあいてっ」


「……バカ」


顔を真っ赤にしたお姉さまに追加で2回デコピンをされてしまった。でも可愛いんです愛していますお姉さま! あいてっ。でへへ。



へ、へへ、へへへ。は、ははは。


「ふんっ、伊集院がまさか受かるとはな」


「あ? 何だと京極?」


「あら東雲さん、お家の方が妖異から逃げ帰ったとか。おほほ」


「そう言う氷室さんのお家は事業で失敗したとか。おほほ」


い、いやあ、名家の人達落ち着いて下さいよ。教室に入った時何事かと思いましたよ? バッチバッチにメンチ切り合ってるじゃないですか。田舎の不良でももう少し大人しいですよ? それにあなた方、生身でも金属バットより恐ろしいじゃないですか。勘弁してくださいよ。へへへ。やっぱ生まれが高貴だと一味違うんすねえ。へへ。ねえお姉さま? ああ、そのニタニタ笑い素敵です! おいお前達! お姉さまが楽しんでらっしゃるからもっとやるんだ!


「少し静かにしたらどうですか?」


「なんだか騒がしいね」


教室の入口から発せられた声にシーンとする室内。というかこの涼やかな声ときりっとした声はあああ!? 間違いない! どこぞのアイドルよりも可愛らしい御方と王子様! というかお二人揃ってという事はやっぱりそういう!?


「ふんっ。橘と佐伯か」


様を付けろやあああああ! あ、お姉さま首が締まってます。すごいや霊力ってこんな事も出来たギブギブ。


(資産も無い橘の家を再興なんて無理に決まってる)

(佐伯のせいで損をした)

(世間知らずな橘だ。適当に遊んで捨ててもいい)

(どうにか佐伯から金を搾り取れないか)

(恥をかかせれないか)


やだドロドロしてる。これが恨みの相続ってやつ? 皆さんの家歴史長そうですからねえ。


「何をしてるの? リバーシ?」


「あ、ちょっと黒か白か知りたくて」


「ふーん」


お姉さまの時は濃かったから使うまでもなかったけど。対象は、まあ先に橘お姉さまと佐伯お姉さまでいいでしょう。あそれ、指で弾いてっと。親父も嵩張るルーレットじゃなくてこっちにしたらいいのにな。


うーん白。残念ですが皆さんには正当性が無いようです。またのご利用をお待ちしております。


では今度は逆で行きましょう。対象は皆さんです。あそれ。あのルーレット、親父とお袋の絆でもあるから変えないんだろうなあ。それと押し花にしている4つ葉のクローバー。まあ夫婦仲がいいのはいい事だ。


パンパカパーン! 黒です! 黒色ですよ黒色!


これでお姉さま方の正当性は証明されました! なにをって? 



     く


あいてっ


お姉さま?


「ふふ。人間って言うのはね、神様が思っているよりも強くて逞しいものなのよ。見守ってあげなさい。その上でどうしてもっていう時は助けてあげなさい。あなたは両方あなたなんですもの。分かるでしょ? ね。あ、な、た」


お姉さまの言葉に何か熱いものが込み上げてくる。なんだか、こう、自分を全肯定してくれるような優しさに包まれて……。初めての経験だ……。親父とお袋は除く。


お姉さま! 僕は、僕はお姉さまをおおおお!


「全員揃っているか?」


「残念。いい雰囲気だったのに。ね?」


このクソ学園長がああああああ! 今日と言う今日は許さん! てめえには毎日仕事に遅刻する悪夢の呪いを掛けてやる! 食らいや!? こ、こいつ全身に防御用の霊符を張り付けてやがる!? どういうことだ!? ここは戦場だったのか!? だが残念だったな! そんなものに感知も防御もされるようなちゃちな俺様じゃないわい! さあくら


「早速だが実技に入る。他の一年生が習うルールや決まりは諸君達には当たり前のことだろう。わざわざやるよりも実戦に即した方がいい」


は?


は?


皆さんどうして頷いてらっしゃるんですか?


異能者のルールとか決まりって何ですか?


もしかして一般の人達に使っちゃいけないとかですか?


「それでは第一訓練場に集合しろ」


や、やべえよやべえよ。




























僕結構使っちゃってるんですけど? あ、これからバレない様にすりゃいいじゃーん。って、いつも通りか。はは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る