無能でモテない陰キャだと幼馴染にバカにされてた俺→実は東大医学部も余裕で合格できるんだが、今更、模試とセンター試験の結果を見て態度おかしくされても、もう遅い。

雲川はるさめ

第1話

無能なモテない陰キャだと幼馴染にバカにされてた俺→実は東大医学部も余裕で合格できるんだが、今更、模試とセンター試験の結果を見て態度おかしくされても、もう遅い。



思えば。

俺、西野ユーマは昔から怠け者だった。

小学校、中学と、一生懸命なにかに取り組むのがカッコ悪いと思っていて、

特に、なんつーの。あれだ。

見て見ぬフリしときゃあいいのに、

「何、熱くなっちゃってんのかねー?」みたいに正義感振りかざしていじめっ子からいじめられっ子を庇う学級委員のシンジを冷めた目で見ていた。



「おまえな、弱い者いじめ、やめろよ!!

またリョーヤの肩隠ししやがってさ!

先生に言うぞ!」


リョーヤはヒョロヒョロでひ弱な体型だった。

言葉もどもりがちで上手く喋れない。

クラスのなかで一番の典型的、弱者の部類だった。だからこそ、いじめられていたのかもしれなかった。


いじめのリーダー格は強気だった。

三人で束になり、リョーヤのことをお昼休みや放課後、先生の見ていないところでからかっていた。


「へへーん!やなこった!先生に言いたきゃ言えよ!

正義のヒーローぶっちゃってさ!

カッコつけんなっつーの!!」


そうだそうだ。

ほっときゃいいんだ。

自分がいじめられてるわけじゃないしな。


俺は日和見的な態度でそんな光景を見てた。

所詮、蚊帳の外での出来事。

渦中の栗でない限り、俺なら絶対に傍観者に

徹してる。


だがな。その傍観者の立ち位置が、

リョーヤが不登校になったことで一気に崩壊したんだ。


俺が。


今度は俺がいじめのターゲットにされた。

理由は父子家庭であること。

昔、交通事故に遭い、右足をひきずって歩いていたこと。また、父さんの会社が倒産したこと

などが原因だった。


毎日が憂鬱だった。

言葉による揶揄い。

そして、殴る、蹴るなどの暴力。


もうな、リョーヤの時より酷い内容だった。


そんな時。


シンジが身を挺して庇ってくれた。


「いい加減にしろよ!いいか、誰しも好きでびっこ引いて歩いているわけじゃないんだぞ!」


「なんだよ。お前は引っ込んでろよ!!

関係ねぇだろ、お前にはよ!」



「嫌だね!俺はユーマと友達なんだ!」


友達と言えば友達だった。

よく、ゲームの話をして盛り上がっていた。

でも、それだけの関係。

俺的には広く浅く付き合っていた、それだけの

男友達のなかのひとりに過ぎなかった。


「うるせぇ!邪魔すんな!」



ドカーン!!


勉強と運動ができて、女子からモテモテのシンジが、ガタイのいいいじめっ子が勢いよく腕を振り払ったせいで、派手に吹っ飛ばされた瞬間だった。


思い切り、頭を打ったんだと思う。

腰も打ったんだと思う。


シンジは動かなかった。


「お、おい、シンジ!」


声をかけても動かなくて。


大慌て職員室にいた先生を呼びに行った俺。


先生が、救急車を呼んで、病院に搬送されたけど。シンジが病院から帰ってくることはなかった。

これは後に分かったことだが。

シンジは元々、心臓が弱く、シンジの通夜に出た俺の父親から、シンジは急性心不全によるショック死だったと知らされた。


俺が凄腕の医者を志そうと思ったのは

これが契機だった。


もしも、搬送先の病院が

最先端の医療技術を駆使していたら...?


もしも、そこに、ゴッドハンドと呼ばれるような心臓血管外科医がいたなら...?


そんなことを考えれば考えるほど、

シンジは実は助かっていて、

高校は俺と同じ高校に行って、

青春を謳歌していたんじゃないのか?

などと想像すると。


胸がきゅうっと締め付けられるように痛い。


一番、憎むべきは、

いじめっ子なのだが、そいつは今、この世にいない。


罰が当たったのか、シンジが亡くなってすぐに、水難事故で亡くなってしまった。


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