旅の男

右左上左右右

(SSG)


昔、郷長の家を旅の男が訪ね一言だけ告げて去った。

その冬は珍しく大雪になったが、七日もせず生活は戻った。

その際に郷長宅の裏からあの男が出てきた。遺体は寺で無縁仏とされた。

その頃から何かが狂った。

土が痩せ不作が続いた。家畜の病。神隠し。食物が腐る。黴の蔓延。流行病。異常だった。

誰かが郷長は呪われていると言い、郷長は追い出された。

だが災いは続いた。

住職が神主を呼び、郷中を浄め郷長の家は燃やした。

だが何も変わらなかった。

もしやと住職が無縁仏の墓を暴くと仏は今死んだかの様に壺に蹲っていた。

ざわりと背筋が総毛立つ。

壺を海に流した。

これで安心だと思った。

違った。

山が朽ちた。

木々は腐り池も川も干上がり酷い臭いがした。

郷では人が人を喰らう姿が見られた。そうか、と誰かが言う。死んだ者は喰って良いのだ、と。

住職には止められなかった。


住職は郷を離れ、郷に続く唯一の道を封じた。

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