第9話

「お母様、家にいらっしゃったんですね。

では、単刀直入にお伝えします。

娘さんのユーコさんなんですが、成績表拝見させて頂きましたが、とても優秀ですね」


「今回はたまたま350点取れなかったですけど、それ、わざと手を抜いたとかだと思いますよ...」


「ま、まぁ...!?」


家庭教師の先生のその言葉に驚くユーコの実親。


「....っ!お母さん!信じないでよっ!」


ユーコは負けじと言い返しているが、

先生も負けてない。


「シンジくんは正直、大ピンチですが、

ユーコさんは私がいなくても自力でいい高校に入れると考えます」


「そ、そーかしら...」


「まあまあ!先生にそう言っていただけるなんて、

嬉しいわ...」


よーし、よし。

その調子でドンドン押してもらっていい。

大体な。

こんな幼馴染の監視下の指導なんて俺的に真っ平ごめんだから、

なんとかして美人で巨乳な家庭教師の先生との

マンツーマン指導に戻して貰いたい...!


だが。


ユーコはここで泣き出し、

駄々をこねた。


「私、県内で1番のトップ校に行きたいです、先生!確かに350点は楽に取れてたかもですけど、偏差値68の高校に行くには、点数が足りません!お願いします!!私に勉強教えてくださいっっ!」


ああー。


「まあまあ!ユーコ!あんた、進学校に行きたいのね...!やる気になってくれたのね!先生、娘もそう言っていますし、

やっぱり、ご指導お願いしますぅ」


ユーコママはすっかり騙されてた。


真島先生は、ユーコの嘘泣きに負けたことになる。


「かしこまりました」


ユーコの奴、俺のところを泣きながらチラリと、一瞥して、ペロリと舌を見せてきたんだ。


つまり。


ユーコの演技。


どーせ、此処、山梨県で1番の進学校に

行きたいと言ったのも本心じゃねぇ。


ユーコは。

俺の記憶に拠れば。

空手部が強い高校に行きたいと常日頃、

俺にボヤいていた。


それが、ちなみに、家から結構近い中堅高校で。


350点取れば余裕で合格できた。


ユーコは。別に勉強しなくても、

そこに行ける実力があるんだ。



県一位の進学校に空手部はない。 


ユーコがそこへ行きたい理由なんて見当たらないんだ。



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