第2話

俺のことをお兄ちゃん!と呼んだ、

この男みたいな女の名前はユーコ。


名前はユーコで、

オンナみたいな名前だが、ユーコのやつは

ショートカットで肩幅も一丁前にあって、

がしっとしてる。空手をやってるせいもあるな。何しろボーイッシュな女だった。


目の前にいる女女した大学生家庭教師の

真島先生とは対極を為してる。


最近、俺の両親が再婚したせいで、

幼稚園時代からの幼馴染ユーコと義理の兄妹関係になった。

つい先日まで、

俺のこと、よそよそしく、てか、

上から、

「あんた!」と呼んでいたのに、

真島先生が来てから、変なんだ。ユーコときたら。


「お兄ちゃん!」と俺のこと、呼称してきやがった。


それに加えて。外見も変化が見られた。


長い髪の毛がうっとおしい!から

ちょくちょく伸びて来たら美容院に行っていた筈なのに、なんだかよく分からないが、

今、ユーコの奴は真島先生みたくサラサラのロングヘアに憧れて、髪の毛を伸ばしているらしいんだ。


「なんだよ、ユーコ。

俺は今、勉強中なの!勝手に部屋に入ってくんな!」


「な、何だよ、折角、この私が紅茶を淹れてあげたのよ!それからクッキーも焼いてあげたのよ!」


早足で俺の机に近付いたかと思うと、

ガチャン!とティーカップとクッキーののったお盆を置いた。


「ちょっと一息、いれれば??」


「あ、うん、ありがと」


真島先生は、ユーコにちょっとびびって、


「ありがとう」と小声で言った。


それから、ユーコときたら、

「フン!」


と鼻息荒く部屋から出て行った。


その後、俺は、真島先生に休憩を促した。



「あ、これ、俺の幼馴染...

あ、もう最近義妹になったんですけど、

お茶いれてくれたんで、休みましょう...」


「あ、あと、一応、クッキーもあるんで...」


実は。

ユーコが焼いてくれた

クッキーは、ちょい焦げていて、

お世辞にも美味しいとは言えなかった。

円や星の型抜きで抜いて、形はそこそこ

いいが、食べてみると味はイマイチだった。


あいつはスポーツはできるが、

それ以外のこと、例えば、

勉強と家庭科はとことん苦手な奴だった。


それが、無理して最近、

台所に立ち、やたらと女子力を磨いているらしかった。


あいつ、俺の家庭教師が来てから

おかしくなっちまったんだ。


真島先生が、クッキーを摘んだ。


それからちょっと苦笑いして、


「こげてるけど大丈夫」と微笑んでた。


けして、不味いとは言わなかった。


もう何度か、ユーコ特製のクッキー食べているが、ユーコを傷つけない配慮は流石だと思う。

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