81話 逃走中




「冠城くん、どうするの!?」


 黒服たちが後ろから迫っている。もうすぐ水族館の出口のはずだが、浩一郎の言っていたことが真実であれば、出口にも彼の仲間がいるはずだ。このままでは挟み撃ちになってしまう。


「……どうにかする」


 何か良い考えがあればいいが、最終手段は出口の強行突破だ。だが、幸運にも武力行使には至らなかった。


「なんや、おふたりさんは珠李と一緒だったんちゃうんか?」


 出口にいたのは、5人の黒服を縄で縛りあげていた十文字だった。


「なんで十文字さんがここに? っていうか、珠李もいるんですか!?」


「それはこっちのセリフや。珠李と一緒にあんたらを監視する為にここまで来たんやけど水族館に怪しい連中が乗り込んだのを見て、ほな行こかって珠李と話して入口と出口で別れて入ったっちゅうわけや」


「えっと、監視ってどういうことですかね?」


 その問いに、十文字はさささと駆けて来て耳打ちをする。


「……あんたらが、ちゅー以上のことをせえへんか見守るっちゅうことや」


「し、しないよ! するわけがない!」


 大きな身振りで否定する。こっちはまだ付き合ってすらない。付き合うのかも含めて今回の水族館だ。


「ほな、安心や。まだ正々堂々と勝負できるさかい」


「勝負?」


「おっと、それはこっちの話や。ほなあーしは珠李の加勢に行ってくるわ。2人はどこか安全なところにでも隠れたらどうや?」


「昔、私が住んでいた家があるの。そこに隠れるのはどう?」


「昔住んでたって、いまは別の人が住んでるんじゃないのか?」


「だいじょうぶ。何も心配いらないわ」


「それならいいけど」


 詳しい事情は知らないが、いまは彼女の言葉を信じる他ない。


「ほな後でそこの住所送っといてな。ケリが着いたらすぐにそっちへ向かうからな!」


「ああ、任せた」


 十文字であれば僕よりも戦力になるだろう。1人で5人相手に圧勝しているのだ。珠李の役に立ってくれるだろう。


 それにしても、僕の周りのメイドたち、戦闘力高すぎやしないか?




<あとがき>


 すいすいすいぞくかん

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