45話 転校生が来た
「おはよう翔和! 今日もカワイイ後輩と一緒に登校かよ!」
星奈と別れて、僕のクラスである2年1組の教室に入るとすぐに、親友である
「見てたのかよ」
「外を見りゃあ、すぐわかる。イチャイチャしながら登校しやがって」
「イチャイチャなんてしてないさ。ただの世間話だ。羨ましいのなら【天使】様にでも声をかけろよ」
「頴川学園三大――いや、四大美女に声をかけるなんて、恐れ多くて出来たもんじゃない。遠くからそのご尊顔を眺めるだけで十分だ」
そりゃ随分と変態的行動だ。警察に通報されないようにだけしていただきたい。
「あれ? 三大美女じゃなかったか? 【女帝】、【女王】、【天使】の3人だろ……」
頴川学園にはどういった基準なのかは不明だが、2つ名のようなものを付けられた女子生徒がいる。
【女帝】—―頴川学園理事長の孫であり、超常現象検証部の部長である
【女王】—―生徒会会長である
【天使】—―風紀委員委員長である
現在はその三名に留まっていたはずなのだが。
「最近、更新されたんだよ。1年2組にいる【姫君】、
「へぇ。どうでもいいが、誰がその中二臭い名前考えてんだ?」
「さあな。どっかのオタクが必至こいて考えてんだろ」
大和は腕を頭の後ろに回して、自分の席へ戻って行った。僕も自分の席へ向かい、鞄から教科書やノートを出していく。
と、あることに気づいた。僕の席は窓側で、他の列よりも1席分はみ出る形で一番後ろのなのだが、隣に机がひとつ増えていたのだ。
「……転校生」
耳を澄まさなければ聞こえない程度の声量で口を開いたのは、右斜め前の席に座る
彼女は1年生の時から同じクラスで、特徴と言えば、肩まで降ろした長い髪と口数の少なさだ。そして、いつも本を読んでいる。よくいる文学少女かと思いきや読んでいるものはいつも漫画であり、授業中でも漫画を読んでいる不良ぶりだ。
「転校生?」
「そう」
今朝、星奈が言っていた転校生か。彼女のことを信用していないとまではいかないが、まさか本当に僕のクラスに来るとは思ってもいなかった。
「こんな時期に、不思議」
「そうだな」
土門は、星奈のように噂話に疑いの目を持たない無邪気な子供とは違う。いたって冷静であり知識人だ。彼女ならば、簡単に嘘や詐欺などには引っ掛からないだろう。
「ホームルーム、始めるわよぉ」
時間になって教室に入って来たのは、僕たち2年1組の担任教師である
「ほらー! みんな席に着けー! ホームルームが始まんだぞー!」
そう言って、突然声を上げたのは大和だ。他の先生であれば言うことも聞かず、おしゃべりでをしている彼だが、天城先生の前ではいい顔をしている。
すらりとした手足に、整った顔立ち。歩く度に肩まで伸びた長い髪が美しく揺れている。そんな美人教師にドギマギする生徒は男女含めて、そう少なくない。
「……えーっと、今日はみなさんに大事なお知らせがあるのぉー。すでに気づいている人もいると思うけど、転校生よ。学校側の手違いにより、4月に間に合わなかったのでこの時期に転入という形になってちゃったんだけどね。それじゃあ、入って」
「――失礼します」
扉を開けて入って来たのは、青い眼鏡が印象的な、ショートカットの美少女だった。礼儀よく一礼をして、サラサラとした綺麗な髪を耳に掻き上げる。
「
再びの一礼。
教室は拍手で彼女を迎い入れた。それと同時に多くの男子たちがコソコソと喋り始めた。これほどの美少女がクラスにやって来たのならば、その内容はおおよその見当がつく。
「席は窓際の一番奥ね。困ったことがあったら、志水と土門に聞きなさいな」
「分かりました」
先生の指示通り、彼女は僕の後ろの席にやって来た。
「志水君、土門さん、よろしくお願いします」
一礼。
「あ、うん。よろしく」
「……よろしく」
僕と土門は彼女の礼儀正しさに、一瞬、間をおいて挨拶を返した。
しかし、どうして僕が志水だって分かったのだろうか。彼女は2人の名前だけしか聞いていない状況で、僕の名前を「君」と付けて呼んだ。土門も気づいたのだろうか。少し訝しい顔をしている。
まぁ、2分の1の確率で志水「君」なのだから、特に深く考えはしなかった。
彼女は微笑みながら美しく席に座った。椅子に座る姿勢の良さが、お嬢様のオーラを引き立てている。これで勉強、運動ができるとなれば僕の苦手なタイプだな。
<あとがき>
コイキング 食用ポケモン
刺身は美味らしい
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