20話 お約束な展開


 白熱した戦いが続く。


 相手の懐にもぐりこみ、移動の邪魔をする。身体が絡み合おうと勝利の為、貪欲に攻めていく。


 ようやく本来のゲーム性を取り戻したのだが、ここにきて本来のお約束までも取り戻すことになってしまった。


「お、おい舞桜!」


「なんだ!」


「前が見えない!」


「そうか!」


「そうか、じゃない! 恥じらえ!」


 俺はいま幸いなことにエアーはなく、四つん這いの安定した体勢で各々の色に触れている。


 一方の舞桜は、僕の頭を跨ぐようにして脚を開いていた。つまり、俺はいま舞桜のスカートの中に頭を突っ込んでいるのだ。


「どうってことないさ。珠李がいない時によくやってるじゃねえか。絶景ッ絶景ッ! って大喜びしてるだろ」


「やってないよ! 悪代官もびっくりなを嘘つかないで!」


 恐らく、珠李と真美がドン引いた顔をしていることだろう。外に出てきちんと否定したいところだが、メイド服のスカートは長くて捲らなければ顔が出ない。だからと言って、手を動かしたらゲームオーバー。


「さて、次は学君だね」


「お願いします」


 安全地帯を祈りながら動向を見守る。まぁ、見えないが。


「……出たのはエアーで、右手ね」


「妥協点か」


 右手を宙に上げる。これで現状は3点で身体を支えている状態になった。次もエアーで、今度は右脚になったらマズイ状況にはなるものの、まだどうにかなる段階だ。


「次は珠李ちゃんね」


 珠李はいま、俺の真後ろにいる。黄色と青色を踏んで両手はエアーだ。


「……出たわ。右手で青色よ」


「かしこまりました」


 これで珠李は屈んで俺の右側に来なければならない。青色は俺と舞桜がかなりの面積を占領しているため、珠李から見て奥の場所にしか手の届くところはない。


 小柄な珠李には少し遠い場所だったのか、懸命に動いて位置を調整している気配を感じる。


―—その時だった。


 右手に何か柔らかい感触が当たった。


 ……これはマズい。この展開でこの感触。非常にマズい。


 慌てて手の位置を変えると、再び柔らかい何かに接触してしまった。


「―—んっ」


 しかも今度は、艶っぽい吐息が聞こえたではないか。


 俺は大慌てで手をブンブンと振り回す。すると今度は、俺の手が大きな柔らかいものに何度も弾き返されてしまった。


「ご主人様」


「は、はい。なんでしょう、か……」


「くたばれ!」


 背中に強い衝撃を受けて、大きくバランスを崩す。


「うげえっ!」


 支えが減っている俺はバランスを取り戻すことが出来ず、床に大の字で倒れこんだ。


「はい、学君が地面に着いたので失格!」


 高らかに真実さんが宣言をして、俺はこのゲームで最初に脱落となった。


 暴力禁止じゃないのかよ。理不尽だ。




<あとがき>


 ツイスターゲームなんてこういうの目当てだろ!

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