41話 テスト勝負
学に救いの手を伸ばしたのは、広世だった。
「そんなに学を取り合うのなら、テストの点数で勝負しようぜ」
「……いいわね」
「……アリです」
「……いいですよ」
三者ともに顔を見合わせ頷く。
「露峰ちゃんだけ学校が違うから、テスト範囲も異なるだろう。だから、両校不利にならないようなテスト範囲を設定したオリジナルのテストを作成する。これなら期末テストの勉強もしつつ、勉強が出来るだろ?」
広世の提案に珠李が手を挙げた。
「広世さんが作るのですか?」
「いいや、アテはあるから安心しろ」
「勝負に勝ったら、何が貰えるのかしら?」
「……1日デート券」
広世の『デート』という言葉に3人の目つきが変わった。まるで獲物を狩るような猛禽類の目つきそのものだ。
「まあそう早まるな。今回の勝負は学も入れて行う」
「おい、勝手に景品にして勝手に出場させるな」
学が突っ込むと、広世は彼の耳元に近づき囁く。学の蒼ざめた表情を見て、脅し文句であることは確かだが、何を言ったのかまでは分からなかった。
「わかったよ。俺も参加する」
「おお、参加者が増えた嬉しいね。仮に、学が優勝した場合、この中の誰か好きな相手に1日デート券を行使することが出来る。また、破棄も可能だからな」
「あいよ」
「詳しい内容は後で連絡するよ。みんなの連絡先を教えてくれ」
*
その後、勉強の邪魔になるからと瀬葉須に促され帰宅となった。ああなった以上、ノア自身も勉強する必要があるのも事実だ。
「……アタシ、あの女嫌いよ」
瀬葉須の運転するリムジンの中、ノアは思い出したかのうように呟いた。
「安良岡さんという方のことですか? 学様と、とても仲が良さそうにしていたじゃありませんか」
「性格が悪いのよ。腹の内が真っ黒」
「私の目にはその様に見えませんでしたけど」
「……ガッ君って苗字で呼ばれることを嫌うのよ。それなのに、あの女、わざと苗字で呼んでいるわ」
「学様が気にしている様子はなさそうですが」
「傍から見たら些細なことだから分からないのも当然よ」
こういう些細な言動を見逃さないのが許嫁と呼んで欲しい部分である。
「ガッ君の性格上、自己紹介の時にでもクラスの人には下の名前で呼ぶように呼び掛けているはずよ。でも、あの女は他人でもない。部屋に呼ぶぐらいは仲が良いのよ」
「よく見ているのですね」
「あったり前よ! とりあえず、この件はアナタに調査を任せるわ」
「はぁ。承知しました」
ノアはスマホを取り出す。LINEをひらいて犬星梅子とのトーク画面を開いた
「勉強は無理だから、夏に勝負を仕掛けるわよ!」
「……せめて赤点は回避してくださいませ、お嬢様」
— 恋敵立候補 終 —
<あとがき>
次回から暗殺計画編に移りますヨ。
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