お化けのハンバーグ
@mizinko-mini
短編読み聞かせ
バケタンは今日も頭を悩ませる
「お客様が今日も全然来てくれない。」
バケタンはハンバーグ店で働くシェフ。
だけど、お店には誰も来てくれない日が続いている。
その日も遅くまでお店をあけていたけど、来てくれた人は近所の仲良し三人組だけだった。
「きっと僕が作った料理がおいしくないから来てくれないのだ。よし、新メニューを開発するぞ!」
バケタンは一生懸命新メニューを開発した。
一生懸命になりすぎて、気がつくと夜中の三時をまわっている。
「いけない。遅くなってしまった。そろそろ帰ろう。」
帰り支度をしていると、玄関からノックをする音が聞こえてくる。
「こんな時間に誰ですか?」
バケタンは恐る恐る尋ねた。
「腹が減った。食べさせてくれ」
ドアの向こうからドスの聞いた声が答えた。
バケタンはほっとくわけにもいかず、ドアを開けた。
するとそこには真っ白な大きな大きなお化けが立っていた。
「お前を食べてやる!」
そういって大きな口を開けたお化け。
バケタンは震えながらそのお化けに向かって言った。
「僕を食べる前に、僕が作った料理を食べてください。不味ければ僕を食べていいですから。」
お化けはニヤッと笑った。人間が作ったもの等美味しい訳がない。それなら、条件をのみ双方納得の上食べた方が楽にバケタンを食べられると考えた。
「よし。お前が作った飯を食べてやる。その代わり不味かったらお前を喰うから、大人しく喰われろよ!」
バケタンは黙って頷くと、調理場に向かい。先程開発したばかりのハンバーグを作って出した。
「美味しいですか?」
もぐもぐ食べるお化けに恐る恐るバケタンは訪ねる。
「不味くはないが、胡椒が足りない気が…。」
バケタンの真剣さに思わず本音を言うお化けハッと我に返り。
「不味い。人間が作ったものが美味しい訳がないだろ!」と焦って大きな口を開けバケタンを食べようとする。
「お待ち下さい。こちらはまだ未完成の品です。次こそは本当の商品を出します。」
バケタンが焦って言うとお化けは少しムッとした。
「お前は何か?これ以上上手いものが有りながら、私に不味いものを喰わせたのか?」
「はい。僕は命をかけています。お化けさんの舌が本物かもわからずいきなり美味しいものを出し、不味いと言われたのではたまりませんから。わざと試作品を出したのです。」
なるほどとお化けは深く頷いた。
「よし。わかった。俺は腹ペコだ。次こそは、お前が最高の料理だと思うものを持ってこい。」
バケタンは再び厨房に向かいます。
先程お化けがいったように胡椒を少し多めに入れました。
できたハンバーグを持っていきます。
お化けは嬉しそうにモグモグ食べます。
「いかがでしょうか?」
「味は悪くないが…見た目に華がない気がする。少し色味を着けたらどうだ?」
お化けはまたしてもバケタンの一生懸命さに本音を漏らしてしまいました。
「わかりました。野菜を盛り付けて色合いを良くします。」
バケタンは嬉しそうに答えました。
気がつくと辺りがうっすら明るくなって来ています。
お化けは返らなくてはなりません。
「明日も来るからな。少しでも不味ければお前を食うぞ。お前を食うまで俺は通い続けるからな。」
そう言うとお化けは去りました。
次の日も、次の日もお化けは来てバケタンの料理にアドバイスし、バケタンを食べずに帰っていきます。
毎日お化けの言うことを聞いて料理を作っているうちにバケタンのお店はいつしか人気のお店になっていました。
ある日いつもと同じように夜お化けが来ました。でも、お化けの顔に笑顔はありません。
「今日で、バケタンと会うのは最後になるよ。」
泣きながらお化けがバケタンに伝えます。
「何故です?私を食べるまで来ると約束したじゃありませんか?」
「俺はお化けだ。これだけ人気のお店になったんだ。俺が出入りしてたら悪い噂がたつだろう。それに、俺はもう腹一杯なんだ。」
お化けの目から涙が溢れては落ちます。
「お化けさん僕のお店のメニュー表です。」
バケタンは、メニュー表をお化けに渡しました。お化けが恐る恐るメニュー表を開くと【お化けのハンバーグ】と書かれた文字がありました。
「当店で一番人気のメニューになります。僕だけではできませんでした。それに、僕の料理が美味しくなくなったらお腹が減るでしょ?そしたら、僕を食べてくださいよ。」
「そんな事…。」
「させませんから。」
そんな事できない。とお化けが言う前にバケタンは自信満々に答えました。
「よし!お前の料理が不味くなったらお前を俺は食う。」
お化けも笑顔になりました。
その後、2人の夜食会は毎晩朝方まで続いたようです。
お化けのハンバーグ @mizinko-mini
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