第27話 護衛

 アメリアは新聞で婚約破棄を知ってから、使用人の寮で指輪を渡すまでの自分の行動について、ジェラルドに話した。


 それを受けてジェラルドも同じ頃の行動をアメリアに教えてくれる。


「俺は卒業パーティー後に叔父上の協力者を捕まえるために極秘で動いていたんだ」


 ジェラルドが王宮に戻ったのは、アメリアが指輪を騎士に渡してから1週間後だったという。ジェラルドは指輪を受け取って、近衛の隠密部隊を使ってアメリアを探させたが、アメリアが本当に王都入りしていたのかどうかも掴めなかったそうだ。


「アメリアの護衛は優秀過ぎる。今もいるのか?」


 ジェラルドは誰もいない天井を見上げている。 


「いないと思うわ。私の伝言をジェラルドに届けるのも難しいって言っていたもの」


 ジェラルドは複雑そうな顔をした。


「伝言を届けられなかったのか。ゴメンな。叔父上の事を警戒して警備を強化したんだ。お前の護衛には隠されていたし驚いたかもな」


「え?」


 特殊部隊内で情報が遮断されていたとアメリアたちは考えていたが、そうではないのだろうか? アメリアはジェラルドが知っているのなら聞きたいが、知らなかった場合は辺境伯軍内部の話を広めることになる。


「眉間にシワよってるぞ」


 アメリアが慌てて自分の眉間を隠すと、ジェラルドに笑われてしまった。


「アメリアになら、もう話して大丈夫だと思うが、3年以上前からアメリアの護衛は情報を遮断されている。辺境伯が指示したと言っていた」


「3年も前!?」 


 アメリアは驚いて立ち上がりそうになる。


「お前の馬車が襲われたときからだ」


 ジェラルドはアメリアを伺うように見てから言った。ジェラルドはアメリアが馬車で襲われた事をかなり気にしているようだ。襲われたことに気づいてもいなかったアメリアとしては何だが申し訳ない気持ちになる。


「アメリアの馬車が襲われた後、お前の護衛が躍起になって犯人を探していた」


 クロとトビは犯人が見つけたら、すぐに全員殺す気だろうと辺境伯は考えた。だから、犯人を探し出す前にアメリアとともに辺境伯領にクロとトビも追い出したらしい。


「俺、個人としては犯人がどうなっても良かった。だが、皇太子としてはアメリアの件だけでなく武器の件も含めて関わった者全てを排除する必要がある。武器を集めた後の計画や、そこに至った経緯や原因も、きちんと把握する責任もある」


 念の為、フウが監視をしていたが、アメリアが領地にいる間はアメリアの護衛を優先していたため、特に動くことはなかったようだ。


「辺境伯はかなりあの2人の扱いには困っているみたいだった。アメリアのためなら辺境伯の事を簡単に裏切りかねないと言っていた」


 アメリアは可能性があるので苦笑するだけに留めて口をつぐんだ。


「本当にただの護衛なんだよな?」


 アメリアは一瞬首を傾げかけてジェラルドの質問の意味に気づいて頬が緩む。


「護衛に決まっ……」


 アメリアが喋っているのに、ジェラルドはアメリアの唇を塞いでしまった。アメリアは驚きながらもそれを受けいれる。


 アメリアの唇を離したジェラルドは、アメリアの赤くなった頬を満足そうに撫でた。

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