101回目の救世主~最強魔導剣士は学園で臨時講師を務めてフリーダムすぎる教え子たちと姫騎士を鍛えながらバトルライフを楽しむ!
第24話「温泉露天風呂で精神修行!?~色々な意味でこじらせている姫騎士~」
第24話「温泉露天風呂で精神修行!?~色々な意味でこじらせている姫騎士~」
城まで瞬間移動しようかと思ったが――こちらに向かってきているトヨハの魔力を感知した俺は、トヨハの目の前に出現するよう瞬間移動した。
「ナサトさまっ!? ご無事でしたか!?」
白銀の鎧に身を包み、白馬に跨ったトヨハは様になっている。
俺を救援しようと思っていたのか、背後に騎馬隊を五十騎ほど従えていた。
「ああ、無事だぞ。サキとナナミに話を聞いたのか?」
「はい、ナサトさまが魔王軍と戦うという話を聞いて、いても立ってもいられませんでした。ナサトさまのことですから、ひとりで大丈夫と思いましたが……もし万が一なにかあったらと思うと……」
そう言って、トヨハは瞳を潤ませる。
「はは、心配性だなぁ。大丈夫だ、敵の軍勢は俺ひとりで食い止めた」
途中からは楽しんでただけだったが。
「そ、そうでしたかっ! よかったです! 魔王軍を食い止めていただきありがとうございます、ナサトさま!」
まぁ、長時間、楽しみすぎてしまったからな。
すっかり夕方だ。
「心配をかけて、すまなかったな。このとおり、どこにも怪我はない。相手の指揮官はこてんぱんにしてきたから、しばらく魔王軍も攻めてこないだろ」
俺の恐ろしさは、骨身に沁みてわかったはずだ。まぁ、プライドの高そうなメサのことだから、このまま引き下がらないかもしれないが。
「本当にありがとうございます。ナサトさまのおかげで魔法学園の生徒たちを鍛えることができ、さらには防衛までしていただけて……なんとお礼をしていいか」
「はは、まぁ、気にするな。美味いメシを食べられて風呂に入れれば俺はそれで満足だから」
「そ、それでしたら、ここから近い場所に温泉があるのです! よろしければ、そこまでご案内いたしますっ!」
「おっ、温泉か。それもいいな。城の大浴場だと生徒たちが乱入してきて落ち着かないしなぁ~」
昨日のことを考えるとサキやミナミが再び襲来することは十分に考えられる。
あいつらは、あまりにもアグレッシブすぎる。もっと羞恥心を持ってほしい。
「それじゃ、温泉に行ってみるか。案内してくれ」
「かしこまりました♪ ご案内させていただきますね! それでは騎馬隊の皆さんはここで解散です。城に帰ってゆっくりと休んでください。お疲れ様でした!」
トヨハの言葉に従って、粛々と騎馬隊は帰っていった。
これで、ふたりっきり。
「護衛とかつけなくていいのか?」
「はい、ナサトさまがいてくださったら十分です♪ ナサトさまの隣が世界で一番安全な場所だと思います♪」
「それはそうだな」
俺の探知魔法をもってすれば、数キロロからの悪意や殺意だって感じられる。
やろうと思えば、世界中の俺に対する害意を察知することもできるのだ。
ちなみに地形探査の魔法を使えば温泉の位置もすぐにわかるのだが、あえてトヨハに案内させることにした。
「こちらです、ナサトさま」
「どれどれ」
やってきたのは渓流沿いの温泉である。
膨大な湧出量らしく、濛々と湯気が上がっていた。
「おお、よさげな温泉だな」
「はいっ♪ 魔王軍との戦いが本格的になる前はこの温泉に疲れを癒しにきておりました。最近はゆっくり羽を伸ばすこともできなかったのですが……ナサトさまと一緒なら安心です♪」
一国の姫を務めるのも、なにかと苦労が多いだろう。
城の中だと、色々と気をつかうだろうし。
たまにはゆっくり羽を伸ばさせてやるのも俺の仕事かもしれない。
「それでは、入りましょうか♪」
トヨハは白銀の鎧と、その下に着ている服まで脱ぎ始める。
「って、おい! 俺がいるのに全裸になるつもりか!?」
「わたくし、ナサトさまにならいくらでも見られてもかまいません♪」
そのまま一切躊躇なく一糸纏わぬ姿になり、トヨハはにっこりと笑った。
……羞恥心とかないのだろうか。
ちなみに俺はトヨハの顔だけを見るようにして、首から下は見ないようにしている。これをできるのは、俺の精神修行のなせる業だ。
やっぱり、このお姫様はちょっと世間からズレている気がする。
だ、だが、ここでキョドったら、負けな気がする。
「……いくらでも見られてもかまわないんだな?」
俺は、あえて念を押すように聞き返した。
「は、はいっ、かまいませんっ!」
逆に、トヨハが少しキョドった。
これは、手応えありだ。
「ステータス透視魔法発動」
俺は魔力を行使して、トヨハの詳細ステータスを割り出す。
「……ふむ。上から、88・56・85だな」
「――っ!?」
俺の魔法の精緻さに驚いたのか、トヨハは目を丸くする。
さらに、少し頬が赤くなった。
「どうやら正解のようだな。しかし、こんなもので動じているようではまだまだ修行が足りないぞ! 動揺するな!」
「は、はいっ、すみません! わたくし、なにがあっても動じません!」
トヨハは稽古中のときのように凛とした表情で、俺に対する。
いい目だ。
「……よし、せっかくだからこういうときにしかできない修行をするか! 撮影魔法発動!」
まさか、この魔法を連続で使うことになるとは思わなかった。
だが、この魔法を知らないトヨハはキョトンとした表情になる。
「……撮影魔法? それは、どのような魔法でしょうか?」
「これは、おまえの姿を記録する魔法だ。ほら、こんなふうに」
俺は、さっそく投影魔法を使って宙空にこの数秒のトヨハの姿を映し出す。
『……撮影魔法? それは、どのような魔法でしょうか?』
口にしたばかりの台詞が、そのまま映像の中のトヨハによって繰り返される。
「――っ!? す、すごいですっ! こんなことが魔法でできるのですね!?」
「ああ、俺の魔法に不可能はないからな」
文明が発展しておらず、魔法も火・氷・風・雷の基本属性ばかりなので、こういう魔法の使い方はカルチャーショックだろう。魔導書を有り難がって、そればかり守ろうとするから新たな魔法の発展が起こらないのだ。
「というわけで、トヨハの裸体もバッチリ記録できるわけだ。そして、俺の魔法をもってすれば全世界に同時放映……つまり、いま見ている画面を数万数億規模で展開することができる。どうだ? それを聞いても平静でいられるか?」
俺はあえて、トヨハの精神修行のために活用することにする。
どんな状況でも動じない度胸を持つことが剣士には必要だからだ。
「ぜ、全世界、ですかっ……」
さすがにこれは脅しが過ぎただろうか?
だが、こんなことで怯(ひる)んでいるようでは剣士失格である。
「そうだ。俺がその気になれば民にも生徒にも兵士にも……トヨハのことをよく知る人物はもちろん、世界中の人間やモンスターたちに見られることになる」
「――っ!?」
そうなったときのことを想像したのか、トヨハはブルッと身体を震わせる。
顔はさらに朱色に染まっていき、身体が汗ばんでいくのがわかった。
「……動じているな。そんなことじゃ、まだまだ修行が足りないぞ。どんなことにも平静でいられる不動心を持たねばダメだ」
「も、申し訳ありませんっ、ナサトさまっ……! つい想像してしまい……そ、その……こ、興奮してしまいましてっ……」
…………。……ん? 今、興奮って言わなかったか?
え? 普通、そんな状況になって覚える感情って恐怖だろ?
「ちょっと、聞き直していいか? 今、興奮って言った? 恐怖じゃなくて?」
「は、はい、興奮であってます。そのさまを想像したとき例えようのない甘美な感情が胸の奥底で弾け、拡がっていったのです! こんな気持ち、初めてです……!」
…………。へ、変態だーーーーーーーっ!?
姫なのに露出狂だったのかーーーーーっ!?
自分で変な鍛練を課しておきながら、引いている俺である。
「……ああ、どうしましょう。そんなことになったらと思うと身体が熱くなってしまって呼吸まで荒くなってしまいます……はぁ、あぁっ……」
これはアカン。真性だ。トヨハは瞳を潤ませ、頬を赤らめ、だらしなく開いた唇からせつなげな息を吐いている。ますます全身が汗ばみ、甘い匂いが強くなる。
「……お、お願いいたします、ナサトさまっ……! ど、どうかわたくしをさらなる高みへと導いてくださいませっ!」
いや、それ『高み』というよりどちらかというと『低み』だからね?
まぁ、ある意味でレベルが高いというか超上級者向けかもしれないが……。
「……ふ、ふんっ。すぐにそうやって安易な方向へ流れようとするのは修業が足りない証だぞ。破滅願望でもあるのか? ともかく、お預けだ」
常に民からの視線にさらされる姫騎士って、色々とこじらせてしまうものなのかもしれないな……。闇が深い。
「も、申し訳ございませんっ、ナサトさま……! わたくしったら、浅ましいメス犬のようなマネを……」
言葉のチョイスが、いちいちアレすぎる……。
「……ま、まぁいいや。ともかく今は温泉に入ろうか。そんな姿でずっといたら風邪をひいてしまうからな」
「あ、ありがとうございますっ! わたくしのような駄犬の健康にお気づかいをいただくなんて……」
いや、ユーは姫だからね?
ちょっと、トヨハの変なスイッチを入れてしまったかもしれない……。
俺は、後悔し始めていた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます