101回目の救世主~最強魔導剣士は学園で臨時講師を務めてフリーダムすぎる教え子たちと姫騎士を鍛えながらバトルライフを楽しむ!

秋月一歩@埼玉大好き埼玉県民作家

【第一章「自由すぎる学園生活と型破りな指導方法」】

第1話「滅びの最前線と危機的状況の魔法学園生徒たち」


 最強の俺にとって、世界を救うことは容易い。

 これまでに、滅亡寸前の世界を百回ほど救ってきた。


 世界を救ったら、さっさと転生。それと同時に急速成長の魔法で、十五歳まで成長して再び最高のコンディションで魔王征伐をする。で、魔王を倒して世界を救い終わったら、また次の世界へ転生する――ということを繰り返してきた。

 言わば、世界を救うのが趣味みたいなものだ。


「やはり、圧倒的劣勢から戦うことほど楽しいことはないよな」


 終末を迎えた国に颯爽と現れては挽回する。

 腹が減ってちゃ戦えないので、メシぐらい奢ってもらうが。

 あとは、ひたすらバトル。


 磨いてきた剣技と、研ぎ澄ました魔法。両方を組み合わせたオリジナルの魔導剣術。それで、存分に暴れてやるのだ。


「さて、今回はどんな危機的状況に陥っているか」


 今いる場所は、森。

 転生場所は、もちろん周りにモンスターのいない場所を選ぶ。


 仮に、モンスターが不意に出現したとしても転生直後の俺は卵のような魔法膜に包まれており、並の魔族では打ち破ることはできない。


 そんな状態で三分ほど経てば、俺は急速成長をして十五歳の体格になるのだ。


 転生なので顔や体は毎回違うのだが、以前覚えた魔法や剣術はコンティニュー。

 記憶も引き継いでいる。


 だから、戦うほどに俺は強くなっていく。そして、老いることがなく常に十五歳の若々しい肉体で戦えるので最強の力を発揮できるのだ。


「待ってろよ。必ず救ってやる。俺が来たからには、誰ひとり死なせやしない」


 まずは、探知魔法を発動。

 ここからそう遠くない位置に人間の反応。

 300。そして、魔物の反応3000。


「いきなり全滅の危機か。だが、間に合ったな!」


 こういうパターンは珍しくない。3000程度の魔物なら、いい慣らし運動になるだろう。俺は加速魔法で、一気に戦場の真っ只中に踊り出た。


 戦場の最前線には、屈強そうな剣を持ったおっさん兵士がいた。

 俺を見て、目を丸くする。


「なっ!? なんで普通の子どもが!? 危険だ! 下がるんだ!」


 屈強なおっさん兵士(この中では一番強いが最前線で戦っていたのかところどころ傷ついている)が、俺に声をかけてくる。


 そして、おっさんから少し離れたところに魔法学園の生徒らしい黒ローブを纏った少年少女たちがいた。それを守るような形で兵士たちも展開している。そちらもダメージを負っている者が多い。


 戦況が悪化して、魔法学園の生徒たちまで前線に出るような状況というわけだ。

 これも、滅亡前の世界では当たり前のことだ。

 だが、おっさん兵士は俺に向かって再び怒鳴ってくる。


「さっさと逃げろ! 危険だぞ!」

「……あー、言っておくけど、俺は普通の子どもじゃないから。……そうだな。言うならば――救世主ってやつかな」


 そう言いながら、右手を天に向かって伸ばす。

 そして、魔力を集中させて愛用の魔剣を具現化させた。


 紫の柄に、赤い刀身。見るからに、凶悪で格好いい。


 なお、この動作は格好いいから取り入れているだけだ。隙だらけになるが、テンションを上げるためには必要な儀式だった。


 当然、最前線なので魔物の群れがジリジリと俺にも迫ってきている。

 獣っぽいのからゾンビっぽいのから甲冑っぽいのから、多種多様だが――。


「ま、一言で表せば烏合の衆。雑魚ってところだな」


 俺は、まず背後のおっさん兵士たちと魔法学園の生徒たちに広範囲回復魔法をかけて全回復させてやる。怪我したままじゃ、かわいそうだからな。


「えっ、えっ、魔法っ!? すごい! 怪我が治ってMPも回復してる!?」


 後ろにいる中で、最も魔力がある少女が驚きの声を上げている。

 なお、ローブはボロボロで、さっきまで少なくない傷があった。

 年齢は俺と同じ、十五歳くらいだろう。


「ああ、俺は魔法も天才だからな」


 その栗色の髪をしたボブカットの少女に、俺は応えてやる。


「あ、危ないよっ! 魔物来る!」


 少女は、俺に危機を知らせてくれる。

 もちろん、俺にもわかっている。こんなもの危機でもなんでもない。


 だが、その気持ちはありがたい。さっきまで、この少女はそこそこ重傷だったのだ。そんな状況でもこちらのことを気づかえるというのは、素直に賞賛に値する。


「んじゃ、始めるか。ソード・ウェーブ!」


 魔物のほうを向いて、魔剣を横薙ぎに一閃。


 魔力をこめた斬撃は――極大の光り輝く衝撃波となって百対以上の魔物の命を一気に刈り取った。さらには、


「ソード・アロー・二式」


 新たな魔法を発動。

 俺の背中から、青白く輝く二百二十二のマナ・ソードが射出される。


 ちなみに、一式が単体攻撃用。二式が広範囲攻撃用だ。

 これらは、勝手に敵を追尾して掃討してくれる。

 

「さっさと片づけるか」


 だが、ソード・アローが敵を倒すのを待っているのも暇だ。

 なので、物理攻撃(魔剣)でも戦闘を楽しませてもらう。


 地を蹴り、風になる。

 ソード・アローが荒れ狂う中に俺自身も突っ込み、一緒に踊る。


「ずあああああああ!」


 斬って、斬って、斬りまくる。

 己の全力を解放するときの爽快感は、いつ味わっても最高だ。


 俺よりも強い奴がいないのなら、そのぶん数をこなせばいい。

 だから、敵の数が多ければ多いほど、ゴキゲンだ。

 しかし、楽しい時間はあっという間だった。


「終わりか」


 魔物たちは絶命するとともに、黒い光の粒子を放ちながら霧消する。

 3000いても手ごたえのある奴はいなかった。


「えっ……うそ? あれだけモンスターがいたのに……」


 俺を援護しようとでも思ったのか、杖を構えていたさっきの少女が呆気にとられたように声を上げる。


「数を頼みに押し寄せてくるような奴に負けてるようじゃ、格好悪いだろ?」


 俺は魔剣を消すと、振り向いて少女に応えてやった。

 そこへ、今度は新たな気配。


 これは――馬が駆ける音。それと、鎧が揺れる音。

 探知魔法で調べると、武装した騎馬隊その数二百。種族は、人間だ。


「皆さん、よく持ちこたえてくれました! わたくしたちが来たからには、もう安心です!」


 先頭を切ってやってきたのは、白馬に跨った白銀のプレートメイルに身を包んだ金髪碧眼の美少女。ティアラ型の防具はつけているが、兜はつけてないので端正な顔立ちがよくわかった。


 その高貴なオーラから、おそらく姫騎士といった感じだ。

 年齢は、十七くらいだろうか? まだ若い。

 といっても、今の俺の年齢よりは二歳上だが。


「えっ、姫さまっ……!」


 先ほどの少女が、驚いた声を上げる。

 おっさん兵士や少年少女たちも、同じように驚いているようだ。

 やはり、姫騎士だったらしい。


「敵は……? おかしいですね、先ほどあった気配が、なくなっているなんて」


 その姫騎士は、キョロキョロと辺りを見回して不思議そうな表情をした。

 そして、俺と目が合った。


「あら、あなたは……?」

「俺は、ナサト。救世の魔導騎士だ。どうやら世界が滅びかけているらしいので暇つぶしにやってきた。俺が来たからには安心してくれ」

「え、えっ……? それでは、あなたが危機に瀕していた皆さんを救ってくださったのですか?」

「結果として、そうなるな」

 

 この姫騎士がそれなりに鍛えていることはすぐにわかった。

 一流の剣士である俺は探知能力を使わなくても、相手の力量を把握できるのだ。


「姫様、その少年の言う通りです。この少年が、魔物の大群をあっという間に倒してくれたのです。我らはかなり数が傷を負ってましたが、その少年の魔法によって瞬く間に回復していただきまして……未だに、信じられないのですが……」


 おっさん兵士が事情を説明する。

 信じられないのは、当然といえばそうだろう。


 俺の魔法技術も剣の腕も世界最高レベル――というよりっも次元が違う。

 この世界の人間が到達できる限界を、遥かに超えている。だてに百回経験値を持ちこんでいるわけではないのだ。


「とにかく、皆さんを救っていただいて、ありがとうございます! わたしはミヤーオ国の姫であるトヨハと申します! ぜひ、お礼をさせてください!」

「ああ、礼とかはいいから。俺は戦うのがなによりの趣味なんだ。とりあえず、寝る場所と最低限の食料と水だけくれ。俺が来たからには、もう安心していいぞ」


 戦うのは好きだが、しっかり睡眠と食事はとるタイプなのだ。

 やろうと思えば不眠不休でも戦える魔法もあるのだが、楽しみは長く味わいたい。


「かしこまりました。あなたのような英雄に来ていただけるなんて……本当に助かりました。3000ものモンスターが攻めてきたと聞いたときは、もうわたしの国も終わりかと思ったのですが……」


 ホッとしような表情になる。

 あともう少し転生が遅れていたら、この場にいるほとんどが全滅していただろう。

 これで、あとは俺がひたすら無双するだけで世界平和が訪れる。


 しかし、そこで俺は思った。

 俺がいなくなったあと、また魔王が現れたら問題だ。


 過去に、平和を取り戻したあとに、再び魔王が復活したこともあった。

 しかも、三つの世界が同時に危機に瀕したために、三つめの世界を救う頃には少なくない被害が出ていた。


「ああ、そうだ。せっかくだから魔物を殲滅するのと同時に、ここにいるみんなを鍛えようと思うが、どうだ? 俺は魔法も剣も使えるので、どちらも対応できるぞ?」


 この姫も、見た感じ信頼できそうな感じだ。

 なら、色々と教えてやってもいいと思える。


「本当ですか!? ぜひ、よろしくお願いいたします! 実は、わたくしの国は魔族だけでなく隣国からも圧迫を受けていて、苦労していたのです」

「なんだ、世界が危機に瀕しているのに国同士争ってたのか? まぁ、世界が滅ぶときなんて、そんなもんだよな。人間同士で争って、食料の略奪とか平気でやるようになるもんな」


 危機に陥ったときほど、国も人も本性が出る。

 結束すればいいのに、自国の利益だけを追い求め始めるのだ。

 自分だけ生き残ればいいというエゴが丸出しになる。

 いつ見ても、嫌なものだ。


「ま、そんな魔族が攻め寄せてきてるときに人間同士争おうとしてるアホは、俺がとっちめてやるから安心しろ」


 人間を殺す趣味はないので、命までは獲らないでおくが。

 これでますます、ミヤーオ国の魔法使いや剣士を鍛えてみたくなった。

 この姫からしても善良そうだ。さっきの少女も含めて。


「それでは、まずは防御拠点であり学舎(まなび)であるクラギ学園に参りましょう。学園の皆さん、兵士の皆さん、よく耐え抜いてくれました。ありがとうございます」


 トヨハは、少年少女や兵士たちにも頭を下げていた。

 姫なのに偉ぶったところがないのは、好感が持てる。

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