15.プラインside(1)


プラインは辺境の村で生まれた。

金色の瞳が魔族と同じだからという理由で、忌み嫌われて散々な生活をしていた。

そしてライナス王国の大結界の外に置き去りにされた。


幼かったプラインは絶望して泣き喚いた。

けれど子供の足でライナス王国に戻る事は出来なかった。


たまたま通りかかった魔族に拾われて、魔族の国で育てられた。


ライナス王国に住んでいた頃、魔族は敵だと教えられていたが、魔族は体を叩く事もなく食事も与えてくれた。

何より同じ仲間として受け入れてくれる事が嬉しかった。


魔族達のことが、すぐに好きになった。


大結界のせいで、魔族はライナス王国へは入れない。

それに闇の宝玉を取り戻さなければ、魔族や魔王は力を失ってしまう。

何度もその話を聞かされていくうちにライナス王国の人間が敵に思えた。


だから、危ない任務ではあったが魔族達の為ならばと引き受けたのだ。

自分を育ててくれた魔族達に恩返しをしたかった。


けれど、その長期任務を聞いた時に、心の何処かで思ってしまった。


もしかして自分はこの役割を果たす為に拾われたのではないか…と。

そんな事はないと思いたかった。

疑ってはいけないと言い聞かせた。


けれど、自分以外に人間が居ないのが何よりの証拠のように思えた。


それでも残された道は魔族と生きることだけだった。


魔族達に見送られて、ライナス王国へと足を踏み入れた。


課せられた任務は、闇の宝玉の情報を手に入れて、聖女がいつ召喚されるのかを知らせる事。


そして一番大切な事は、大結界を作り出す聖女を魔王の元へと連れて行く事。

召喚したばかりの何も知らない聖女を仲間が待つ馬車まで連れ出さなければならない。


(………そんな事が本当に出来るのだろうか)


城で下働きを募集しているのを見て、すぐに動いた。


金色の瞳を隠すように、人と目を合わせないように話していた。

同室の子に金色の瞳を気にしている事を伝えると、例え瞳の色が同じでも魔族が大結界の中に入れる訳ないだろうと、笑い飛ばしたのだった。


(……今まで何を悩んでいたんだろう)


城で働く人間達と長く時間を過ごす程に、心苦しさは増していく。

一生懸命働く事で、そんな考えを掻き消していた。

徐々に周囲の信頼を勝ち取っていった。


(何も考えるな…!只、聖女を魔王様の元に連れ去る事だけ考えろ)


魔族の息が掛かっていると知られてしまえば、間違いなく反逆者として殺されるだろう。


付き纏う恐怖、笑顔の裏に迷いを隠しながら日々を過ごしていた。



ーーー聖女を召喚する日



プラインが作った薬を服用した二人の魔族がライナス王国へ入った。


苦痛を伴うが、暫くは魔族が人間に擬態できるものだった。

大結界にも引っかかる事は無い。


本当は自分が魔族になりたくて作った薬だったが、効果が反転すると気づいたのは、間違えて薬を飲んでしまった育ての親が、人間に変化したからだった。


そんな薬を作った自分を魔王は褒めてくれた。

周囲に認められて、嬉しくて堪らなかったのを今でもよく覚えている。


パタパタと去っていく魔王の使い魔から渡されたメモをギュッと握りしめた。


タイムリミットは半日。

緊張で眠れずにフラフラする足で召喚の間へと向かった。


けれど、呼び出された聖女は力が無かった。


(聖女が鈍色…!?代々、呼び出される聖女は純白じゃないのか?)


余りの人の多さにどうすればいいのか分からずに戸惑っていた。


暫く様子を見ていると、一人の聖女は王子や国王や侍女達が群がっていたけれど、もう一人の聖女はポツンとその場に取り残されていた。


(チャンスだ…!)


そう思い、聖女サラに近づいた。

異世界人といっても、サラは普通の少女のように思えた。


(こんな普通の女の子に、国の大結界を張るほどの力があるなんて……)

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