第8話 禁断の扉



羽奈は白いレースの可愛らしい

ブラウスとデニムのミニスカートを

履いてトートバックを下げていた。


彼は羽奈の顎を四本の指で抱えて

親指で頬を繰り返し撫でた。


「羽奈、相変わらず可愛らしいな。

お前が好きなんだ、

気持は変わらない。

羽奈愛してる。」


羽奈はじっとしていた、彼の目が

澄み切っていて美しかったから。


彼は羽奈の首についてる

クリスマスローズのネックレスを

撫でて

「よく似合ってる!!」と呟いた。


彼は奏を振り返りクチパクで言った。

『奏、頼む!お前はオレなんだから。』


羽奈にはちゃんと聞こえた。

彼の、心の声が。

彼はそのままスッと居なくなった。


羽奈は奏の所へ行き

「知り合い?」と聞いた。


奏は、羽奈の首を彩るネックレスを

確認すると


「知らない奴だょ。」


と言いつつ

お絞りで羽奈の頬を拭こうとしたが

間一髪で逃げられた。


「知らない奴にさわらせんなよ。」


不機嫌な奏に、グリーンの箱に

赤いリボンのついたプレゼントを

ニンマリしながら差し出した。


「お誕生日おめでとう。安いかも

だけど‥気に入ってくれたら

いいなぁ!!」


箱を見ただけで指輪と分かった奏は

機嫌も良くなり直ぐ開けていた。


「おっスゲー、

カッコイイな!!似合う か?」

 奏は嬉しそうに手をかざしていた。


「でしょう。一目惚れしたの、

じ•つ•は•コレ 

パッ ««じゃん!!ペアリン グ»»」



凄い。

奏は喜びMAXで、恥ずかしいくらい

喜んでくれた。まさに回りには立派なバカップルに、見えた事だろう。


奏は、さっきの男の言葉を

思い出していた。


俺が浮気?あり得ないだろ

からかわれたんだ。

愛らしい羽奈の

手を引きながら否定していた。

どこの“回し者だよ。腹立っ!!”


奏は此処で待っててと言って

何処かに行った。


羽奈はさっきの男の人の事を

考えていた。

(だってあの仕草はあの指の動きは‥)


しばらくすると奏は、黒塗りの

ピカリーンと光る、高級車に

乗って現れた。


奏を見て女の子達が立ち止まり

キャーキャー言い出した。


「早く乗って。」

羽奈がシートベルトを絞めると

奏は4本の指で、顎を支え親指で

羽奈の頬をなでた。


(ほら!やっぱり、今奏がやってる

仕草と同 じじゃない。)


羽奈を、乗せて車は走り出した。

奏が免許取ったのは知ってたけど‥

「この車、お高そう。」


   「会社の幹部用だよ。」


そうニッコリ笑う奏は凄く


「カッコイイ。」


     「今更かよ。」

フッとわらいながら羽奈を見る。


しばらく暑い日差しの街中を走ると

木に囲まれたレストランに入った。



街中を少し抜けた所にある

レストランはちょっと

高級感アリアリだった。


奏は、車から降りてドアを開けて

くれた。


奏のゴッゴツした男らしい手に

引かれながらレンガ風の階段を

あがる。


大きなドアが開くと一斉に

「いらっしゃいませー。」

と声があがる。


中は丸いテーブルが並んでいて

白いカサブランカが、甘い匂いを

放ち奥には向日葵の黄色い花が

豪快に生けてあった。   


「凄い!! 」


つい口を突いて出た。

奏は満足そうに


「‥だろう!!気にいった?」


と呟いた。


席に案内されてテーブルにつき

メニューを見る。結構高い。


(んー!!、2万しか持って来てないし、

足りるかなぁ!!誕生日だから

ご馳走するつもりでいたんだけど…)


「奏私まだお腹すいてないから

 奏好きなの食べてよ。私デザート

だけでいいから。」


奏はポカーンとして、

「何で、食べようよ。

美味しいから。」


 そう言うと料理を注文し出した。


う««ん!!


「此処俺の店‥」


    「※※※※※?」


「親父にやってみろと言われたんだ!

 全部羽奈をイメージして、

作った。」


「エエーッ、店長さん!?」


「違う。オーナー、オーナー!!」

奏はスーツをととのえながら胸をはる


 「スゴーイ、雇って!! 」


「オ馬鹿か?女の子をターゲット

にした店にするからイケメンしか

駄目!」


    「まじ…残念!」


成る程、言われてみれば

男の人ばかりだった。

イケメンと言われれば、納得する

みんななかなか、モテモテな甘い

顔とゴッチリ、男らしいキリリと

した顔ぶれだ。



しかし、この人達にはイケメンを

揃えた事は話していないらしい

ただの面接で撰ばれたと思って

いる様だ。


支払いは奏がカードで払ってくれた。

奏の店でもありながら

ケジメはちゃんとつける。

それから、

二人で映画を見て、家で羽奈の

作ったバースデイ🎂を

たべて、抱き合って眠った。


俺は直ぐ端暮と幸寿郎に指輪を

見せて自慢した。


「どうよ、いい指輪だろ~羽、

(あっヤバ)

 彼女からのプレゼントだーっ」


二人は気のないそぶりでハイハイ。

「しかも、コレ♪ペアリングー。」


またもやハイハイ

「聞いてんのかよ。」


呆れ様に幸寿郎が

「これ!私の男、

手を出さないでってか?

 ナイワ。お前いくっ?」


「 二十歳 し•か•も•ホヤホヤ!!」 


はぁ

「おまえらさぁ16から付き合って

んだろ‼しかも何にも ナシ!

ありえーん!!家族?ママ、ねーちゃん、 いやお前兄ちゃんか?

アッチ 妹?。」


「な、な、カレ、カノじゃ

無いでしょ。」



「ママ、ママ、彼女ママか?」



端暮と幸寿郎がちゃかしてきた。


    「ピコーン」


奏の携帯がなる。

「ねえ!今日中華にしょうかなぁ

 野菜いっぱい入れて、

 あとスープはワンタンなんかどう?

 お酒は飲む?」


   「ビールを一本だけな。」


「じゃあ、軽くつまみも作るね…」


俺らのやり取りを見ていたふたりは

「ねーちゃん、妹ゃないな」


「ン?~ママか?」


ふたりは声を揃え俺を見て、笑い、

指さした。


「これで何時に帰るなんて来たら最高じゃね。」


今度こそ期待する。


ふたりは気を持ちじっと待った。

    「ピコーン」

  《キター》

  「アイス買ってきてね!!」

3人はガックリ。


「またかーい、此処は気を使って

何時に帰 るのと聞いてくれよ~」

とズッコケタ!!。



「なぁ奏、俺らに彼女合わせてみろ。

 男はなんたるかを説教してやるよ。

男も 男の事情があるんだよ。

お前可哀相過ぎ。」


やっらに同情されっっも納得した。


だけどなぁ!!

「オオカミに、あかずきんちゃんを

合わせる馬鹿はいね一や、ばーか」

と断った。



夏休みに入ると本社に呼ばれ父親と

秘書の山本さんがいた。

彼は凄腕の秘書で俺の

秘書になることが、決まっている。


40位のイケメン、大人の魅力が、

プンプンする!モテると思うが彼は

奥さん一途らしい…!


勿体ない。その感情は端暮と

幸寿郎が俺にいだいているものと

同じかもしれない。


夏休みに入ったら山本さんと父親

に付いて仕事を覚えること、

スーツも10着程オーダした。



卒業したらスムーズに副社長として

働けるように今から下積生活をする。




帰り道、大学の先輩から

集合がかかった。


この先輩は面倒見が良くて色々

世話になっているが、彼女が出来なくて、俺ら3人を餌に合コンを繰り

広げていた。


叉か?


無視していたら幸寿郎と端暮からも

誘いのメールが来た。


仕方なくマンションに向いていた

足をU ターンさせ羽奈に連絡した。



「羽奈、今帰ってたんだけど

先輩から連絡来て、呼び出された!

もう夕飯作った?」


「ああ大丈夫、今から

作ろうと思ってたの‼」


「そう、ゴメン多分遅くなる

あの小山田先輩ダヨ

マジで勘弁って感じで断ったら

端暮と幸寿郎からも

誘われて、断れなくてサ」


「クスツああ、あの人有名人

だもんね。

小山田先輩、面白い人だってね、

良いよ!

楽しんで飲んでおいでよ。」


羽奈の許しも出て少しホッ

先輩の待つ居酒屋へ向かう。


居酒屋へ付くと丁度幸寿郎と

端暮の姿を見つけた。

2人と合流して、中へ入る。


みんなもう出来上がっていたが

3人とも空いた席に押し込まれた。



先輩が

「おまえらさぁ早くえらべ

へ?選べ?」

先輩に急かされながら俺は

ひとりの女の子を選んだ。


おとなしそうで、わりと

綺麗な孑だ。


ショートカットが、よく似合って

笑顔が、気に入った。

彼女と2人で話し込み気が合った

数合わせに呼ばれた事、

お互いパートナーがいる事。



彼氏さんは、海外出張で半年は

帰れない事、俺も彼女にはお預け

食らってる事を2人

面白、可笑しく話して盛り上がった。


彼女とは、うまがあって、

楽しかった。

久しぶりのストレス解消したかの

ような満足感に浸っていた。


羽奈は男の喜ばせ方を知らないが、

この一花は話してると楽しく

させてくれる。


俺はこの時あのカフェで合った男の

忠告などスッカリ忘れてしまっていた。

思い出すのは、ずっと後の事だ。



それはもう二度と取り返しのつかない

最悪な扉を開けた瞬間だった。

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