貴方の中でとけさせて

天野建

貴方の中でとけさせて

「おじさん、おばさん! ごめん! 今日、早めに上がる! ありがと!」

「ああ、気を付けてお帰り」

「また明日ね」

「うん!」


 池上亜里珠いけがみありすは元気に返事をしつつ、職場であるパン屋を後にする。

 外に出た瞬間、暑さを和らげる風が、刺繍入りの白いブラウスと臙脂のロングスカートを揺らす。

 パン屋を営む老夫婦は本当に優しい。

 3年前、身元も確かでない自分を雇ってくれ、そればかりかこの世界の事を色々と教えてくれた。

 感謝してもしきれない。

 もちろん紹介者の彼の紹介があったからだろうが、それでも試用期間に見せた、自分の料理の手際の良さとやる気を評価してもらったと思っている。

 慣れない道具を必死で使い、何とか雇ってもらおうとそれは必死だった。

 今では、穏やかに振り返れるが、採用になった時は、料理好きでよかったと号泣したものだ。

 それほど当時は追い詰められていた。


 3年前、まだ二十歳だった亜里珠は、オタク街道を突っ走っていた、少し痛い女の子だった。

 ラノベ大好き、乙女ゲー大好き。2次元大好きな女子で、もちろん、彼氏などもいた試しがなかった。

 その日も大学が早めに引けた為、早々に家へと帰り、大好きな乙女ゲーの続きを目一杯した。

 ああ、今日も一日満ち足りた一日だったと、辛うじて開いている目を頼りに、ベッドへ入った。

 そして現実だけでは飽き足らず、夢の中でも、乙女ゲーの自分の押しキャラと戯れ。


「もうやだ! ラルフ様ってば!」


 と、幸せの声を上げた次の瞬間。

 浮遊感が亜里珠を襲った。


「え」


 一瞬で目が覚め、

 落ちる!と悟った瞬間、目を閉じた。


 次に亜里珠を襲ったのは、衝撃と痛み。

 床は思ったよりも固く、なぜか埃ぽかった。

 いたたっと、亜里珠は二の腕をさすりながら、起き上がった。

 それからもう一度夢の続きを見ようと、手探りでベッドを探すが、なぜか感触がない。

 亜里珠はそこで初めて目を開けた。

 飛び込んで来たのは、見た事ない街並み。

 石畳の道。石造りの家々。


 ラノベ大好きな亜里珠は瞬時に、状況を把握した。

 異世界転移してしまったのだと。そして悲しい事実をも悟ってしまった。

 お城の地下や神殿でもない、ましてや、魔法陣なるものも光らなかった。

 これは完全に望まれて召喚されたのではなく、ミステイク、妖精の気まぐれ、神の気まぐれで、転移してしまったのだと。

 それを更に決定付けたのは、亜里珠が落ちた場所にたまたま通りかかって、座り込んでいる亜里珠に話しかけてきてくれた男の人の言葉が、全くわからなかったからだ。

 やはりアクシデントなのか。ならば、異世界転移特典も全くなしなのか。

 亜里珠は全く見知らぬ場所、世界に来たのはもちろんだが、ラノベ大好きな自分に、欠片かけらほどのラノベ要素がもたらされなかった事に、激しいショックを受けた。


「ううううわあああああああん!」


 更に先々の不安も合わさって、大人げなく、大声をあげて泣いてしまった。

 いきなり泣き出した女子を放っておくことはできなかったのであろう、亜里珠の第一発見者である彼が、当初色々と面倒を見てくれたのだ。更にそれは現在進行形である。


 魔力もなし。特別な力もなし。城や神殿からの迎えも全くなし。

 ないない尽くしの中、一番大変だったのは、言葉の習得である。なにせ辞書も何もない状態でのスタートである。

 必死でヒヤリングして、何とか覚えた。

 とはいえ、完全習得には至らず、今も言い回しがおかしいと笑われる事も、しばしばである。

 そして3年経って身に染みてわかった。おそらく自分は日本へは帰れないと。

 それを認めた時、涙が枯れるまで泣いた。

 一つだけ、この世界の神様が、情けをかけてくれたのかと思ったのは、第一発見者が、彼だったことだ。


 亜里珠は、10日振りに帰って来る命の恩人であり、恋人である彼を迎えるべく、冒険者ギルドへと歩を進めた。



 ここ、ファルシオン国のイグナリオの町の冒険者ギルドは、3階建ての大きな建物だ。

 1階は受付、仕事の依頼掲示板、冒険者たちが仕事の打ち合わせなどをする酒場兼談話スペースがある。

 2階は職員やギルドマスターが使う従業員専用の階。

 3階は不明。おそらくギルドの重要な書籍や武具などがあるのではと聞いた事がある。

 魔力なし、戦闘能力皆無の亜里珠には、1階部分だけを知っていれば十分なのである。

 亜里珠は冒険者ギルドの入り口を入ると、ぐるりと中を見渡した。外側からの見た目通り、中も広々としている。

 もうそろそろ日が傾いてくるがまだ夕方と呼ぶには早い時間、談話兼酒場スペースでは、少なくない人数が酒を飲んでいた。

 その中の一人、入口付近のテーブルに1人で座っていた男が、手を挙げた。


「よう。アリー。ステフはまだ来てないぞ。俺も奴に少し用事があってな、待ってるとこだ。まあ急ぎではないがな」

「カリオ」


 亜里珠は、オレンジの髪に少したれ目の、20代の男に近づいて行く。

 カリオにも、この3年間で随分と世話になっている。少しお調子者であるが、困っていると助けてくれる友人である。

 ちなみにここでは、亜里珠はアリーと名乗っている。


「相変わらず、綺麗な黒髪だな。触り心地もいいし」


 カリオはそう言いつつ、亜里珠の頭を、少し乱暴に撫でる。

 それを避けつつ、亜里珠は文句を付ける。


「髪だけ褒める、良くない」


 そして、顔を指差す。


「はは。可愛い可愛い」

「心こもってない。軽い」


 ぷんとそっぽをむく。とはいえ、亜里珠は自分を知っている。この三年間で背中の真ん中辺りまで伸びた髪はともかく、顔はいたって平凡である。

 ただ、この世界の人間は皆、彫が深く、背が高い為、日本人女子の平均身長である亜里珠は、幼くみられ、ギリギリで可愛い部類に分類されている。


「カリオ、ちょうどよかった。会いたかった」

「あん? 俺にか?」

「うん」

「おいおい! ステフの前で、言うなよ! 殺されちまう」


 冗談をいうカリオをよそに、亜里珠はお気に入りの蜜柑色の肩掛け鞄から、包みを一つ取り出すと、差し出した。


「あげる」

「ああ?」

「心を込めて作った。食べて」

「おい!」


 今日は、この国の暦である2の月の14日。

 この国では、特に何でもない平凡な日である。

 けれど、亜里珠が住んでいた日本では、言わずと知れたバレンタインデー。

 元は好きな人にチョコをあげ、告白する日だったのが、派生して友達や会社の同僚などへの義理チョコ、果ては自分へのご褒美チョコと、2月14日はチョコを食べる日になった。

 去年までは、こちらの世界に慣れるのに必死で、バレンタインのイベントどころではなかった。

 けれど今年やっと、こちらの世界に慣れ、日にちを気にする余裕もできて。

 彼氏もできたとなると、バレンタインデーをスルーする気になれなくて。

 彼氏はもちろんの事、こちらでお世話になった方々にも感謝をこめて、何か贈ろうと企てたのだ。


「食べて、美味しい」


 亜里珠は、首を少し傾け、カリオにお願いする。


「おい! これ、告白じゃないよな? な? じゃなきゃ俺が、お前の後ろにいるヤツに首を刎ねられちまうよ!」

「後ろ?」


 カリオの言葉に、亜里珠は振り返った。


「あ」


 亜里珠の顔が全開に緩む。


「ステフ!」


 迷わず、彼の胸に飛び込んだ。

 ステファン=レイヤード。26歳。

 栗色の髪。新緑の瞳。すらりとしたしなやかな身体つき。白いシャツに黒いズボン。その上に瞳に合わせた緑の長衣をまとい、太いベルトで絞めている。

 腕利きの冒険者。その甘やかな笑顔が、亜里珠を見下ろしている。


「アリー、迎えに来てくれたのかい?」

「うん!」

「そう、それは嬉しいね。じゃ、カリオに何をあげてたのかな?」

「お菓子! カリオにお世話になってるから! 心を込めて作ったの!」

「そう。心を込めてね。‥‥‥カリオ、どういう事だ?」

「ひいい! 俺は特別な事をしてない! してないぞ! 誤解だ!」

「無意識にアリーを口説いたのか。死にたいらしいな」

「違う!」


 自分の頭上で、男2人が早口で話しているが、よく聞き取れない。

 久しぶりの友人との再会だ。積もる話もあるのかもしれない。


「ステフ、少し待ってて。私、ちょっと用事、すます。すぐ戻る。そしたら帰ろう」

「わかった。俺もすぐ帰ろうと思ったが、一仕事できたようだ。ここで待ってるから、早く用事を済ませておいで」

「わかった」

「おいまて! アリーちゃん!ちゃんとこいつに説明を、ひいいいい!」


 カリオが何か叫んでいたが、亜里珠は気にせず、鞄から小さい包みを取り出しながら、次々に知人に配っていった。

 受付のお姉さんやお兄さん、ちょうど1階に降りて来ていたギルドマスター。

 皆がハテな頭に浮かべ、亜里珠を見つめる。

 亜里珠はそんなみんなを見回して、声を張った。


「今日は、アリーの故郷では、お世話になった皆にお菓子をあげて、感謝する大切な日なの!私、頑張って作った! どうか食べて! みんないつもありがとう! 真ん中のテーブルに、お菓子置いておく! ここにいるみんなも食べて! ハッピーバレンタイン!」


 そこで亜里珠は、大きく頭を下げた。

 亜里珠の言葉に、皆が笑顔になる。

 ただ一人を除いて。


「ほら! そういう事だってよ! ハッピーバレンタインって日なんだと! 俺にだけじゃないんだよ! だから剣をしまってくれぇ! ステフ!」


 キンと剣がぶつかり合う音が、ギルド内に響いた。


「さあ、どうぞ」

「ありがとう」


 冒険者ギルドで、バレンタインにかこつけて、皆にお礼のお菓子をあげた後、亜里珠は、ステフと2人で住んでいる家へと帰って来た。

 3年前、亜里珠を拾ったステフは宿暮らしをやめ、すぐに中心部から少し離れた静かなところに家を借りて、そこに亜里珠を居候させてくれた。

 それが今ではステフのまさかの告白を機に、居候暮らしから同棲に格上げになった。

 本当今でも不思議である。

 ステフみたいな素敵な男性が、自分を好きになってくれたなんて信じられない。

 こちらの世界のイケメンの基準が違い、もしかしてステフがモテないからかと思いきや、そんなこともなく。

 背が高く、さわやかな雰囲気、そして冒険者の上位ランク、つまりは強くて。

 こちらでできた女友達に聞いても、やはりステフはモテるようである。

 亜里珠の前にも、女性の影はちらほらあったらしい。

 それについては、少しもやもやするが、今は私一筋だとの友達の言を、全面的に信じる事にする。

 自分に自信はない。けれど、ステフは誠実な人だ。

 そんな人が告白してくれたのだ。自分よりもステフを信じるべきだ。

 それにきっと気持ちが冷めてきたら、正直に言ってくれる。

 だから、それまでは彼との生活を楽しもうと思っている。

 そう思えるようになったのは、この世界に落っこちて来てからだ。


 人生何が起きるかわからない。

 後悔しないように精いっぱい生きよう。

 そう思って一日一日を生きている。


 だから、今直面している問題にも立ち向かおう。

 現在直面している問題。

 それはステフのご機嫌斜めの原因を突き止める事である。


 家に帰ってくる道すがら、そして家に入った後も、にこやかなのに、どこか怖い。

 自分が何かしてしまったのだろうか。

 折角のバレンタインで、これから渡したいものもある。

 できるだけ早く渡したい。

 だから思い切って聞くしかない。


「あの」

「ん?」

「ステフ、何か怒ってる?」

「どうして、そう思うんだい? カリオに手作りお菓子を渡したからかい?」


 どうやらカリオにお菓子を渡したのが、いけなかったらしい。


「ダメだった? さっき話した通り、お礼のつもりであげた。愛からじゃないよ?」


 途端、ステフの右の小指がぴくりと動いた。


「ふふ。愛からだったら、今頃君は、ベッドでお仕置きを受けているよ」

「ええっ!?」

「冗談、だよ」


 語尾が低い。底辺である。

 怖い。


「でもね、君がお礼のつもりでも、渡す相手が誤解する可能性が高い。今後俺以外の男に、プレゼント、いやプレゼントなんてもう渡させない、物を渡す時には、事前に俺に相談すること」

「え」

「いいね?」

「はい」

「だいたい君は無防備すぎる。お菓子を渡すのに、君は何て恰好をしているんだい?」

「いつもと同じ服、だよ?」

「服は同じでも、インナーが違うだろ?」

「!」


 なんと! バレていた。

 亜里珠は胸が大きい。

 こちらの下着だけでは、揺れるから、さらしで締めたりしていたのだが、窮屈だ。

 その為、服屋の友達に頼んで、日本のブラを、こちら仕様で再現してもらったのだ。

 全く同じとはいかなかったが、スポーツブラにワイヤーをいれた感じのブラが出来上がった。こちらではゴムがない為、布に魔法付与をして、付けた者の身体に併せて布がぴったり付くようにしてもらった。

 下着としてはかなり高くなったが、友達がこれは貴族や、お金持ちのご婦人に売れるとみて、開発者として、亜里珠には、今後安く融通してもらえるようになった。ウインウインである。

 そして本日、初めて身に着けての外出である

 自分としては付け心地抜群で、服のシルエットも不自然じゃなく、自然なカーブを描いてよいとご機嫌だったのだが。

 亜里珠は玄関横にある、全身鏡に向かい、前後ろと確認し、最後に横向きになって、胸を張った状態で、ステフを見上げた。


「別に不自然じゃないよね?」


 ステフは額に拳を当て、亜里珠を見下ろしている。


「……まさか、他の男の前で、そんなポーズしてないよね」

「そんなポーズ?」

「胸を突き出すポーズ」


 言われた瞬間、亜里珠の顔にぶわりと熱が集まった。


「してない!」


 ステフは恋人だから、警戒なくしてしまったが、こんなポーズ外では絶対しない。


「本当に?」


 ステフが疑わし気に尋ねる。


「本当! ステフの前でだけ! ステフは私の特別だから!」


 瞬間、ステフが両手で顔を覆い、しゃがみ込んだ。


「ステフ?」

「この無意識小悪魔娘」


 ぼそりとステフが呟いたが、よく聞こえない。


「ステフ、大丈夫?突然、しゃがんで、どうした?」


 亜里珠は心配になり、両手を膝につき、前かがみになってステフの顔を覗き込む。


「!」


 ステフは応えようと顔上げた瞬間、眼前に迫った彼女の胸の谷間にごくりと唾を飲み込んだ。


「そのインナー使用禁止」

「ええ!? いやだよ!」

「禁止!」

「いやだ! 何で?!」

「自分を見下ろしてごらん。胸の谷間がくっきり見えてる」

「っ! スケベ!」


 亜里珠は胸を隠すように腕を組んで、叫んだ。

 そうだった。今日は新しいブラもあるし、暑いから胸の少し開いた服を着ていたのだ。


「君が悪い。そんなオープンな服を着るから」

「気にするの! ステフだけ! みんな私の、私の、ここ見ない!」

「見るとも。それがわからないから、無防備すぎると言っている」

「違う!」

「ああ、もうこの小悪魔、この家に閉じ込めてしまおうか」

「うそ!」

「うそじゃないよ。そうすれば、俺の心労もなくなる」


 いつの間にか、ステフの両手が亜里珠の両手を、彼女の顔の両脇でがっちり掴んでいた。

 見上げた先の、ステフの目がマジで怖い。

 瞳孔が少し開いてる。

 怖いと思う反面、そこまで思ってもらえるのが、亜里珠は嬉しい。

 監禁なんてきっと冗談だろうが。

 叱られている筈なのに、反省よりも嬉しさが先に立ってしまった。

 亜里珠は思わず、爪先立って、彼の唇に唇を寄せた。


「なに?」

「ステフ、大好き」


 チュ。亜里珠は軽く唇を合わせる。


「はあ。アリーはどこまで、俺を振り回せば気がすむのかな」

「振り回す? ステフ大きくて、振り回せないよ?」

「ああ、そうだね。これがアリーだものね」


 ステフのとげとげしていた雰囲気が消えた。

 どうしてかわからないが、お怒りは消えたらしい。

 今がチョコを渡すチャンスかもしれない。

 亜里珠はステフからそっと手を抜き取ると、鞄から最後に残った包みを取り出して、ステフに差し出した。


「ステフ! いつもありがとう! バレンタイン! 受け取って!」

「ああ、ありがとう。俺にもあるんだね」

「もちろん! あけてあけて!」


 ステフは亜里珠の言葉に従い、包装紙を開封する。

 ステフのだけは、もちろん別格である。ちゃんと素材や包装用紙も厳選して、綺麗に包んだのだ。

 そして、中身ももちろん特別。


「これはチョコかい?」

「そうチョコレート! チョコはステフだけ! みんなにはクッキー!」

「形も変わってるね。見たことない形だ」

「これハート。私の世界では、自分の心を、愛を表現する形。私の気持ち!」

「ありがとう。食べるのがもったいないな」


 ステフの目じりが下がる。

 喜んでくれてる。

 亜里珠は嬉しくなって、つい、調子にのった。


「ステフ好き!」


 そこで爪先立って、ステフの耳元に囁いた。


「食べて。私の愛、貴方の中で蕩けさせて」

「!」


 瞬間、ステフが固まった。大きく目を見開いたまま。


 やった。亜里珠はニンマリ笑った。

 この手のやり取りでは、いつもステフに負ける。

 経験の差だ。

 しかし今回は、バレンタインの力が上乗せされたのかもしれない。

 ステフの表情に余裕はない。

 余裕がないどころか、切羽詰まったような思いつめた表情だ。

 気持ち、ステフの呼吸が荒い。

 なぜだ。

 また間違ったのか。

 思わず後退ろうとしたところで、手をぐいっと引っ張られ、亜里珠は一瞬のうちにお姫様抱っこされていた。


「ス、ステフ?」

「黙って」


 そう告げるステフの足は、リビングを出て、寝室へと真っ直ぐ向かう。


「ステフ!?」

「もう一言でも言ったら、ここで襲う」


 私はぴたりと口をつぐんで、だらだらと冷や汗を流した。

 どうやらやりすぎてしまったらしい。後悔しても、もう後の祭りである。


 翌日。ご機嫌なステフをベッドで見送り、亜里珠は午前中仕事を休む羽目になった。


「バレンタインのチョコを食べて欲しかっただけなのに!」


 どこでこんな展開になってしまったのか。


「ふみぁ」


 亜里珠は腰を押えて、撃沈した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貴方の中でとけさせて 天野建 @ama-ama-fie

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ