ヒロユキを探し出せっ! 編
第11話 ドーンと四十肩
翌朝、目が覚めたらドカンと肩が痛かった。四十肩復活!!
「いっててて」
すでに支度を済ませていたジョージが、おれの異変にかけよっててくる。
「おはよう、マローン。えっと、たしか四十肩だったっけ? ミミーを呼んでこようか?」
「すまんが、たのむ」
「たのまれたし」
ジョージは本当に素直であかるい青年だ。こういう快活な若者にはしばらく会えてなかったから、少しだまされているような気持ちになる。くらべる相手はヒロユキしかいないのだけどな。
でもあいつ、なんで首を斬るほどおれをうらんでいるんだろう? 前世でおれとなにかがあったらしいんだが、まるでおぼえてないや。あんなやついたっけ?
はっ。まさか、元妻の不倫相手だったとかっ!?
いや、だとしたら、おれがうらむ側だとしても、うらまれるいわれはない。
じゃあなんだ?
それにミミーだ。なんだかみんなして、ミミーのことをもしやとかなんとか言っている。ミミーって本当は有名人なのだろうか?
「おはよー、マローン」
まだベッドから身を起こすこともできないおれへと、ミミーが顔を赤くして近づいて来る。
「おはよー、ミミー。悪いね、朝から」
「全然平気よ? それより、首の方はどう?」
「首は絶好調だっ!! だが、四十肩がな」
サムズアップしてすぐに顔をしかめるおれを見て、うふふと上品に笑うミミー。やさしい聖母様のような微笑みに、くらっとしてしまう。
「じゃあ、いくよ。ヒール!!」
すぐに肩の痛みがすぅーっと消えてゆく。
「うおっ。なおった。ありがとう、ミミー。それでさぁ、みんながミミーのことを知っている風なんだが、おれわかんなくてさぁ。おれ、なにか失礼なことをしてないかなぁ?」
「それはっ。猫耳がめずらしいだけなんじゃないのかな?」
うん? なぜかごまかした風だが、どう取るべきだ? だが、ごまかすということは、ふれられたくないということだろうから、ここは潔く話をあわせておこう。
「なるほど。そうかもしれんな」
「じゃああたし、みんなと食堂で待ってるから」
「ん? おう。ありがとうな」
なんだかあわてて出て行ったミミーに違和感をおぼえた。猫耳の話はタブーだったか? それとも、寝起きのおっさんの臭いにたえられなかったのかもしれない。だとすれば、着替えてからたのむべきだったなと反省しつつ、ようやく着替える。
「おれ、手伝おうか?」
すべてをにこにこと笑顔で見守っていたジョージがさわやかに笑う。ジョージは、ミミーが何者かをわかっているのだろうか? それとも、彼女であるマリン以外には興味がないのかな? まだまだわからないことだらけだな。
「いや、首も肩もなおしてもらったから、自分でできるよ。でも、その気持ちだけでもありがとうな。そうだ、ジョージはミミーのこと、なにか知っているか?」
なにげなく話のついでとばかりにさぐりを入れてみるも、ジョージは一瞬、きょとんとなった。
「猫耳って、めずらしいよね?」
さわやかに歯を見せて笑うジョージを前にすると、エルフだとか猫耳だとか、細かいことにこだわっている自分がちっぽけに感じた。そんなわけで、今は猫耳がめずらしいっていうことだけでいいや。
つづく
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