第六話 隠し部屋

一方、こちらは理事長室に隣接する隠し部屋である。


麦彦は困惑していた。—―唐突に部屋が真っ暗になったのだ。


九つの液晶画面が壁にはある。そこには、キャミソールが隠されていることに困惑する一冴や、女子寮や学院の様々な風景が映っていたはずだった。


しかし、部屋のドアが開きかけたところで画面は暗くなってしまった。


暗闇の中、山吹へ声をかける。


「何じゃ――停電か?」


「そのようにございますね。」


そういえば雷が鳴っていたか――近くにも落ちたようだ。


これでは、一冴がどうなったのか分からない。


「ええい! 山吹! 早く予備電源に切り替えてこい!」


「はっ。」


一礼すると、山吹は部屋から出ていった。


しかし、麦彦は考え込む。あまりにもタイミングがよくはないか――せっかくのところで雷が落ちて来て停電になるなど。


麦彦の中には、今朝の夢に現れた先祖の姿があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る